21/02/14
「税金で半分持っていかれる」と嘆く人はどのくらい稼いでいるのか
年収が数千万円や1億円以上というニュースを聞くと「あれだけ稼いでも税金で半分ぐらい持っていかれるから、かわいそう」と考える方も多いのではないでしょうか?しかし、年収が高ければ必ず税金の半分を持っていかれる、というわけではありません。所得税や住民税の仕組み、そして「税金で半分持っていかれる」人のおおよその年収を解説します。
所得税と住民税のしくみ
日本の所得税のしくみは累進課税制度と呼ばれています。累進課税制度とは、課税所得(税金の計算のもとになる所得)が多ければ多いほど課される税金が重くなる仕組みです。
以下の表は所得税の税率と控除額を表したものです。
●所得税の税率と控除額
また、住民税は所得に応じて課税される所得割と定額に課税される均等割を合わせたもの。都道府県や市区町村といった自治体に収めています。税率は一部の例外を除いて一律10%です。ただし、実際に納付する金額は所得が増えるほど多くなります。
このうち、1800万円以上の課税所得がある人の所得税は年収の40%、4000万円以上なら年収の45%が所得税ですから、住民税の10%とあわせて、50%以上税金として持っていかれると考えがちですが、正しくありません。実際には、所得のうち195万円までは5%の課税額、195万円〜330万円未満の所得には10%の課税額がかかるというように、段階的に計算します。つまり、1800万円の方の税金が900万円、というわけではないのです。
とはいえ、たとえば4000万円以上の方の所得税額を計算するときに、いちいち「5%の部分は、10%の部分は…」と段階的にしていたら面倒ですよね。そこで、課税所得に税率をかけ、そこから「控除額」を引き算することで税額を計算しています。
たとえば、課税所得が1800万円ある場合の所得税は、
・課税所得金額×税率-控除額=所得税
1800万円×40%-279万6,000円=約440万円
したがって、課税所得が1800万円の場合の所得税は約440万円とわかります。これは、1800万円の24.4%でしかありません。もちろん高額ですが、「半分持っていかれる」わけではないのです。
年収の半分を税金でもっていかれる人の年収は?
では、年収の半分を税金で持っていかれる人の年収は、どのぐらいの金額なのでしょうか?
所得税を計算するときには、まず、1年間の収入(年収)から、給与所得控除(会社員の必要経費のようなもの)を差し引きます。
次に、さまざまな控除を差し引き、課税所得を算出します。
そして、課税所得を上で紹介した表に当てはめて、所得税を計算します。
仮に、
・会社勤めのサラリーマン(独身)
・給与所得控除(195万円・上限)
・社会保険料控除(260万円と仮定)
・その他の控除は一切なし
として大まかに計算すると、年収の半分を税金で持っていかれる人の年収は、約1億2000万円となります。
年収から給与所得控除と社会保険料控除を引いた課税所得は約1億1545万円です。この1億1545万円を、上の表に当てはめて所得税を計算すると、約4715万円となります。ただし、令和19年までは所得税に2.1%の復興特別所得税が課税されるため、合わせると約4814万円になります。さらに住民税は約1155万円です。
よって、所得税と住民税を合わせた金額は約6,000万円となります。年収は約1億2000万円ですから、年収の半分が税金で持っていかれることになります。
年収が1億2000万円ということは、単純計算で月収1000万円。超高給取りですね。
まとめ
今回は試算を簡単にするために、細かい点は省いています。ほかの控除を含めた場合は、もう少し高い金額でなければ年収の半分を税金で持っていかれることはありません。とはいえ、年収が高くても低くても、税金を安くする控除はとても大切です。したがって、年末調整や確定申告をする際に、控除できるものはきちんと含めて申告しましょう。
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小栗健吾 現役のFXトレーダー及びWEBライター
地方の大学を卒業後、会社員を経て、WEBライターとして活動中。FXや仮想通貨の取引経験(FXは8年以上)があり、現役トレーダーの目線で記事を多数執筆している。また、現在はFXだけでなく、「キャッシング」「副業」「節税」などマネー系の記事も多く執筆している。
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