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25/01/31

相続・税金・年金

年金はいつからもらえる?65歳より前にもらえる年金も意外とある

年金はいつからもらえる?65歳より前にもらえる年金もある

年金は何歳からもらえるのか、みなさんの多くが老齢年金の標準的な受給開始年齢である「65歳」を思い浮かべるかもしれません。しかしながら、年金をもっと広く見渡すと、65歳からでなくても年金をもらえる例があることを知っていますか。今回は、2025年さらに注目が集まるiDeCo(個人型確定拠出年金)も含めて、年金ともらえる可能性のある年齢の関係をまとめて紹介します。

【18歳未満】子どもが受け取れる遺族年金

最も若く年金を受け取るケースとして考えられるのが、支給要件を満たす子どもに支給される遺族年金です。18歳になった年度の3月31日まで、障害年金の障害等級1級または2級の状態にある子どもの場合には20歳を迎えるまで、支給されることになります。なお、直系血族または直系姻族以外の養子となる、あるいは故人と離縁するといったケースでは、その時点で受給権が消滅する点に注意が必要です。

18歳未満の子どもを育てている親の場合、年金の加入期間が短いことも考えられますが、遺族基礎年金の額は被保険者期間の長さにかかわらず定額(満額の老齢基礎年金)。また、故人の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3である遺族厚生年金についても、最低の加入月数300月が保障されています。

【20歳】障害基礎年金は20歳前の病気やケガも対象

障害基礎年金は、公的年金制度に加入する20歳以上の人が、日常生活能力に著しい制限あるいはそれを上回る程度の障害を負って、所得(稼得能力)を失う事態に直面した場合のセーフティーネットです。その支給要件の一つとして、初診日の前日において、国民年金保険料の納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間を合わせた期間が3分の2以上必要であることは覚えておきましょう。初診日が2026年4月1日前で65歳未満であれば、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がなければよいとされていますが、保険料の未納期間を作らないことが何よりも大切です。

障害基礎年金は、20歳を迎える前に初診日がある病気やケガ(20歳前傷病)による障害でも支給されます。しかしながら、支給は早くても20歳を迎えてから。これは、20歳前傷病の場合には「初診日から1年6カ月経過した日」と「20歳に達した日(誕生日前日)」どちらか遅い日を障害認定日として、その翌月分から支給されるためです。なお、20歳前傷病による障害基礎年金は、保険料の納付要件は適用されません。

【40歳】中高齢寡婦加算は夫の死後65歳までのつなぎ

遺族基礎年金を配偶者が受け取れるのは、18歳の年度末を迎えていない子どもや、障害年金の障害等級1級または2級の状態にある20歳未満の子どもがいる場合に限られます。したがって、遺族基礎年金を受け取っていたとしても、これらのタイミングを迎えればその後の支給は行われません。

「中高齢寡婦加算」は、中高齢の妻が就労して十分な所得を得ることは困難であり、かつ遺族厚生年金だけで生活を営むことは困難であることを念頭に設けられた制度です。具体的には、夫が亡くなったときに40歳以上65歳未満でこれらの子どもがいない妻や、子どもが年齢要件に達して遺族基礎年金を受給できなくなった妻を対象に、40歳から65歳になるまでの間、遺族厚生年金に612,000円(2024年度・年額)が加算されます。

【55歳・60歳】夫が遺族厚生年金をもらえるかは年齢次第

遺族厚生年金における男女差をめぐっては、もう一つ大事な年齢を押さえておきましょう。実は、妻を亡くした夫は、(生計維持要件等を満たしていても)妻が亡くなった当時に55歳以上でなければ、遺族厚生年金の受給権を得られません。また、遺族基礎年金の受給権を有する場合を除いて受給開始は60歳からです。それに対して妻は、夫の死亡時に30歳未満で子どもがいない場合は5年間の有期給付ではあるものの、子どもがいるもしくは30歳以上であれば、再婚等をしない限り一生涯支給されることになります。

遺族厚生年金の男女差はその問題点が度々指摘されてきました。2025年に予定されている年金制度改正では、男女差を解消して40歳(20年かけて60歳に引き上げ)未満の子どものいない配偶者を原則5年の有期給付とする案が議論される模様です。先ほど紹介した中高齢寡婦加算もまた、段階的な縮小および将来的な廃止が厚生労働省の審議会で議論されるなど、2025年は遺族年金の見直しに向けた動きから目が話せません。

【60歳】iDeCo(個人型確定拠出年金)は加入期間で受給開始年齢が決定

公的年金の上乗せとして、加入の申込から掛金の拠出、運用方法、受給方法(年金・一時金・年金と一時金の併用)、すべてをみずから決定することができるiDeCo。今回は主に、公的年金の受給に関わるさまざまな年齢を紹介していますが、iDeCoを活用して資産形成に取り組んでいる人は、その出口も気になることでしょう。

iDeCoで積み立てた資産を、老齢給付金として受給を請求する時期は、60歳から75歳になるまでの間で選択可能です。なお、60歳で受給を開始するためには10年以上の加入期間等が求められるなど、それぞれの受給開始年齢に必要な加入期間等が定められています。いつどのような方式で受け取るのが適切かどうかは、60歳以降の就労状況や、公的年金等の額、退職金といった、老後資金全体の枠組みの中で判断することが望ましいでしょう。その際、手取り額ベースで受給計画を立てる点も重要なポイントです。

<iDeCoの受給開始年齢と必要とされる加入期間等>

iDeCo公式サイト「iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等」より

【60代前半】特別支給の老齢厚生年金(男性;1960年度・女性;1965年度 以前生)

詳しくは次の項目で紹介しますが、老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)の標準的な受給開始年齢は65歳です。しかしながら、厚生年金保険への加入歴が1年以上ある、1961年4月1日以前生まれの男性と1966年4月1日以前生まれの女性は、65歳を迎えるより前に「特別支給の老齢厚生年金」がもらえることを知っていましたか。例えば、1960年4月2日生まれの男性は64歳、女性は62歳から報酬比例部分の受給が可能です。

<特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢>

日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」より

特別支給の老齢厚生年金には、繰り下げ制度はありません。そして、受給開始年齢から5年を過ぎても請求をしていない場合、その後1ヶ月分ずつ時効が発生して、本来受け取れるはずだった年金が受け取れなくなってしまいます。受給開始年齢に到達したらすぐに請求を行うとともに、請求手続きを忘れていないかを家族とともに今一度確認しましょう。

【65歳】老齢基礎年金と老齢厚生年金の標準的な受給開始年齢

10年以上の受給資格期間があれば、65歳からもらえる老齢基礎年金。その年金額(2024年度)は、保険料を納付した期間に応じて最大月68,000円(1956年4月1日以前生まれは67,808円)です。会社員や公務員など厚生年金保険の加入期間が1ヶ月でもある人はさらに、現役時代の賃金と厚生年金保険の加入期間に応じて老齢厚生年金が支給されます。なお、2025年度の老齢基礎年金の満額は69,308円(1956年4月1日以前生まれは69,108円)となります。

年金は、受給開始年齢に到達して自動的にもらえるわけではありません。受給には請求手続きが必要ですが、老齢年金の上乗せ給付も見落とさないようにしましょう。例えば、厚生年金保険に20年以上加入していた人は、扶養する65歳未満の配偶者や子どもがいる場合、老齢厚生年金に上乗せして「加給年金」が支給されます。配偶者に係る加給年金の額は、特別加算額の173,300円(2024年4月から)と合わせて年408,100円。請求が漏れていると大変な金額です。

【75歳】老齢年金は繰り下げ受給で最大84%アップ

老齢年金の標準的な受給開始年齢は65歳ですが、60歳から65歳を迎えるまでの間に受給開始を前倒しする繰り上げ受給も含めて、60歳から75歳までの間で自由に選ぶことができます。とりわけ、66歳以後75歳までの間に繰り下げる「繰り下げ受給」では、1ヶ月繰り下げるごとに0.7%ずつ年金額が増額されるメリットに注目です。そして、この増額率は亡くなるまで変わりません。例えば、70歳まで繰り下げた場合の増額率は42.0%(0.7%×60ヶ月)で、75歳だと84.0%(0.7%×120ヶ月)。65歳で180万円もらう予定の年金額を、255.6万円と331.2万円へ、それぞれ大きく増やすことができます。

繰り下げ受給は、受給を開始したいタイミングが来たら請求書を提出するだけです。それまで必要な手続きはありません。繰り下げをしている期間は先ほど紹介した加給年金が受け取れない、年金額が増えることで税金や社会保険料が増加するといったいくつかの留意点はあるものの、繰り下げ受給は老後資金の選択肢を広げることでしょう。老齢基礎年金と老齢厚生年金どちらか一方だけを繰り下げることも可能です。

長い人生を支える「年金」への理解を深めよう

今回は、年金がいつからもらえるのか、受給開始にまつわるさまざまな年齢を一挙に紹介しました。年金は、自分や家族の人生を通じて直面し得るさまざまなリスクをカバーする総合保険のような存在です。受給開始年齢を柔軟に調整できる老齢年金やiDeCoは、長生きによる生活費の増大リスクに対応できる自由度の高い制度といえるでしょう。一方、障害年金や遺族年金は、突然の事態に備える強力な保障として、その重要性を改めて感じさせます。人生を支える心強い味方である「年金」の知識を、これを機にもっと深めてみませんか。

神中 智博 ファイナンシャルプランナー(CFP®)

1992年宮崎県生まれ。関西学院大学会計大学院を修了後、NTTビジネスアソシエ西日本で、NTT西日本グループの財務や内部統制等の業務に従事。2022年10月に兵庫県神戸市で独立系FP事務所ライフホーカーを開業し、現在に至る。家計相談に加えて、公的年金や確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)を活用した資産形成に関するテーマを中心に、執筆・講演活動も展開。「老後不安バスター」として、だれもが老後に向けて自信を持てる社会を目指して奮闘している。CFP®(日本FP協会認定)の他、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、1級DCプランナー、企業年金管理士(確定拠出年金)、一種外務員資格等を保有。
X(旧Twitter)→https://twitter.com/lifehawker

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