24/07/18
平均年収458万円の人がもらえる年金額はいくら?
2024年に入り「高水準の賃上げ」「初任給がアップ」などとニュースでは報じていますが、まじめに頑張ってもなかなか給料が上がらないと悩む方は多いでしょう。将来の不安の中でも、とくに気にかけている人が多いのが「老後のお金」の問題です。今回は、平均年収458万円の人が受け取れる年金受給額と老後の年金不足を補うために今からできる3つのアクションについて紹介します。
一般的な会社員が受け取る平均給与の推移
国税庁の民間給与実態統計調査(2023年度)によると、2022年の日本人の平均年収は 458万円という結果でした。2014年以降の平均給与の推移を見ると、ここ数年間は右肩上がりに増加しています。少し落ち込んでいる2019年と2020年はコロナウィルスの世界的な蔓延で、経済状況が大きく落ち込んだという背景がありましたが、2021年には反転し、2022年は物価高や円安株高の影響で、企業が賃上げする機運も高まり、ようやく平均年収450万円台を上回る水準まで上昇しています。
<会社員の平均年収推移(2014年~2022年)>
国税庁「民間給与実態統計調査(令和4年分)」より筆者作成
ただし、ここ数年間でも、消費税率は上がり、物価も高くなり、介護保険料などの社会保険料の負担が増加していることを考えると、実際に使えるお金(手取り)はむしろ減ってしまっており、給与上昇の恩恵を感じられないという方も多いのではないでしょうか。
日本人の平均年収である458万円を稼ぐ場合、約108万円は社会保険料・税金等が控除され、実際手元に残るのは約350万円と言われています。
なお、同調査によると、2022年の男性の平均年収は563万円、女性の平均年収は314万円、女性の平均年収は全体の平均年収より約150万円も少ないことが分かりました。
女性の年収が男性より低い原因として、女性は非正規の割合が高いことが挙げられます。また、男性より、結婚や育児といったライフステージの変化に左右されやすいといった要因もあるでしょう。
平均年収458万円の人が受け取れる年金額は?
仮に平均年収458万円で会社員として40年間勤務していた場合、65歳から受給できる年金額(月額)は 約15.2万円※となります。この金額は、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」を合算した年金額です。
※以下の簡易的な計算式で算出(参考値)
前提条件:厚生年金に40年間加入していた場合の老齢厚生年金は、月額約8.4万円
(458万円÷12)×0.005481×40年
老齢基礎年金(満額)の6.8万円(2024年度)を合算して、 約15.2万円
また、同様に前述の男性:563万円・女性:314万円の年金額は、 男性:約17.1万円(月額) 女性:約12.5万円(月額)となり、男女差で受給できる年金受給額は大きく異なる結果となります。
しかも、この試算金額は、男女ともに前提条件が「厚生年金に40年間加入していた場合」ですので、これに当てはまらない方は多いと思います。今では共働きが当たり前となったとはいえ、一時的に出産・子育てのために離職したり、転職や独立のため厚生年金に加入しなかったりする期間があれば、その分年金受給額は減ってしまうことになります。そのうえ、これらの年金受給額からは、税金や社会保険料も引かれてしまいます。
公的年金のみで暮らしていくのはやはり厳しい
公益財団法人生命保険文化センターが行った「生活保障に関する調査」(2022年度)によると、夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考える最低日常生活費は月額で平均23.2万円となっています。
そのため、夫が会社員で妻が専業主婦の一般的なモデル世帯の年金受給額約23万円(2024年度/夫:約16.2万円+妻:約6.8万円)では、年金のみで暮らしていくのはやはり厳しいでしょう。
さらにゆとりのある生活に必要な生活費は、37.9万円(夫婦での生活費)と言われています。夫婦共働きの場合であっても、夫婦で受け取る年金額は合わせて約29.6万円(夫:約17.1万円+妻:約12.5万円)ですので、この金額を公的年金だけでどうにかしようとすると一般的な会社員の場合、非常に厳しいのではないかと考えます。
老後の年金不足を補うために今からできる3つのアクション
このように多くの方の場合、年金収入だけでは老後の生活費が不足する可能性があります。特に定年退職して無職になると勤労収入が得られないため、年金への依存度がより高くなりがちです。気力、体力ともに衰えがちな65歳以降は、必ずしも働ける保証はないため、今から少しでも対策を講じておくことが何よりも重要です。
以下、具体的な老後の年金不足を補うために今からできる3つのアクションをご紹介します。
●老後の年金不足を補うアクション①:必要な資金を試算して老後までのライフプランを作成する
老後の生活費、医療費、趣味や旅行などの支出を考慮し、必要な資金を具体的に試算します。その上で、現在の資産状況や将来の収入を踏まえた老後までのライフプランを作成します。試算を行い「具体的にいくら用意する必要があるのか」を把握しないと、貯蓄目標のイメージが持てないためです。
「何歳まで働く予定なのか」「受け取れる公的年金はいくらなのか」「住宅費はいつまでかかるのか」など、さまざまな情報を具体的に可視化していくことにより、早い段階で必要な対策を講じることができ、安心して老後を迎えるための準備をすることができます。
●老後の年金不足を補うアクション②:支出を減らして生活費のコストを削減する
老後の生活で経済的な不安を軽減するために、なるべく今から生活にかかる支出を減らしておくのも効果的です。一度、生活水準を上げてしまうと、下げることが困難になるためです。
まずは、毎月の固定費(家賃、保険、光熱費など)や変動費(食費、娯楽費など)を見直し、節約できる部分を探します。また、不必要なサービスの解約や、より安価な代替品への切り替えを検討します。例えば、余計な生命保険を解約したり、小さなマンションやアパートに移住したりすることで、固定費を削減できます。食費や交際費などの変動費に関しても、無駄と思われる支出があれば見直すことが大切です。毎月の生活費のコストを削減することで、貯蓄の取り崩しも少なくて済みますので、将来的な資金不足を補うことが可能です。
●老後の年金不足を補うアクションその③:NISAやiDeCoなどの有利な積立投資を活用する
毎月の支出を削減できたら、このお金を定期的に一定額ずつ投資信託や株式に積み立てることで、長期的に資産を増やすことができます。積立投資は、ドルコスト平均法により、価格変動のリスクを分散させる効果があります。毎月少額ずつの投資でも、長期間にわたって続けることで、大きな資産を築くことができ、老後の資金不足を補う助けになります。資産運用の経験がない方には、リスクを抑えながら取り組める積立投資をおすすめします。
以下に、具体的に活用すべき制度を紹介します。
【NISA(ニーサ)】
NISAは「少額投資非課税制度」の略称です。2024年から制度が変わり「新NISA」となったことで話題になっています。通常、投資で得られた利益には20.315%の税金が課されます。しかし、新NISAを利用すれば年間360万円まで、1人あたり1,800万円を上限に非課税で投資できます。非課税で投資できることで、資産運用のパフォーマンスを高める効果が期待できるでしょう。資産運用を始める際には、有効活用すべき制度です。
【iDeCo(イデコ)】
iDeCoは「個人型確定拠出年金」の略称です。公的年金の上乗せとなる私的年金の一つで、現役のときに掛金を拠出する仕組みとなっています。加入者自身が金融商品を選択して、自分の責任において運用を行います。
拠出した掛金は原則として60歳まで引き出せないため、まさに老後資金作りに特化している制度です。そのうえ、月々の掛金は小規模企業共済等掛金控除の対象となるため、現役時代の税金を軽減できる点もメリットです。「公的年金だけでは老後の生活資金をカバーできるか不安」という方は、活用を検討すると良いでしょう。
自分の老後の生活費を把握して資産形成しよう
老後の生活費がいくらになるかは、個人差があるため一概には言えません。そのため、今のうちから「自分の生活費は、いくらくらいかかるのか」「年金で足りない生活費はいくらなのか」を自分なりに把握し、今のうちから資産運用を開始していくことが重要です。まず、自分の現状を知ることから始め、そこから、一歩一歩着実に資産形成を考えていきましょう。
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KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。
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