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23/03/29

相続・税金・年金

75歳「年金331万円」もらえる予定だが…繰り下げ待期中に亡くなった場合はどうなるのか

75歳「年金331万円」もらえる予定だが…繰り下げ待期中に亡くなった場合はどうなる?

老齢年金は原則65歳からもらいますが、少しでも年金額を増やすため、年金の繰り下げをしようと思っている方も多いのではないでしょうか。実際、年金の繰り下げは、1か月ごとに0.7%ずつ増額するため、お得な制度といえます。しかし、万が一繰り下げ待機中に亡くなってしまった場合、遺族は増額した分も含め、まだもらっていない年金をすべて受け取ることができるのでしょうか。今回は、繰り下げ待機中に亡くなった場合に遺族がもらえる年金の金額がどうなるのかを見ていきます。

年金は繰り下げ受給で84%増やせる

年金(老齢年金)は原則として65歳からもらうことができます。老齢年金には、国民年金からもらえる老齢基礎年金と、厚生年金からもらえる老齢厚生年金があります。
しかし、65歳時点で年金をもらわずに、年金をもらう時期を遅らせる繰り下げをすると、1か月ごとに年金が0.7%ずつ増額します。繰り下げは、最大で75歳まで(10年間)可能です。
もし、1年間、5年間、10年間それぞれ繰り下げをすると、年金は次の分だけ増加します。

・年金を1年間繰り下げると、0.7%×12か月=8.4%
・年金を5年間繰り下げると、0.7%×60か月=42%
・年金を10年間繰り下げると、0.7%×120か月=84%

たとえば、65歳からの年金年額が180万円(老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計額)だった場合、75歳まで繰り下げると「180万円×1.84=約331万円」になります。
65歳から年金をもらうよりも年間で約151万円も増額となります。

繰り下げ待期中に亡くなった場合の年金はどうなる?

日本人の平均寿命は、厚生労働省「令和3年簡易生命表」によると男性は 81.47 歳、女性は87.57歳と長寿です。しかし、これはあくまで平均寿命です。
年金の受給者が、繰り下げ待機中に年金をもらわずに亡くなることは起こりうることで、そうなれば、本人が年金をもらうことはありません。しかし、遺族であれば「未支給年金」として年金をもらうことができます。

未支給年金は、亡くなった方と生計を同じくしていた3親等の親族が受取れます。順位は、次のとおりです。
(1)配偶者
(2)子
(3)父母
(4)孫
(5)祖父母
(6)兄弟姉妹
(7)その他(1)~(6)以外の3親等内の親族

●三親等内の親族

日本年金機構の資料より

SBI証券[旧イー・トレード証券]

未支給年金はいくらもらえる?

未支給年金としてもらえる金額は、65歳から年金を受給していたという前提で計算された最大5年分の年金のみとなります。以下、65歳からの年金年額が180万円(老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計額)だった方が繰り下げ待機中に亡くなった場合の未支給年金額を見てみましょう。

●68歳で年金を受け取らずに亡くなった場合の未支給年金

65歳から68歳までの3年間、老齢年金を繰り下げていた方が年金の繰り下げ受給をすると、増額率が「0.7%×36か月=25.2%」となるため、年金額は「180万円×1.252=約225万円」となります。

ですから、年金をもらわずに亡くなった場合、未支給年金は「(180万円×1.252)×3年=675万円」が支給されるのではと思うかもしれません。

しかし、未支給年金には繰り下げ分の増加率は含まれません。実際の未支給年金は「180万円×3年=540万円」となります。

●73歳で年金を受け取らずに亡くなった場合の未支給年金

65歳から73歳までの8年間、老齢年金を繰り下げしていた方が亡くなったとします。先述の計算で、未支給年金は繰り下げしていても増額されないことを紹介しました。したがって、「180万円×8年=1440万円」が支給されると思うかもしれません。しかし、年金の請求時効は5年となっています。つまり、未支給年金は「180万円×5年=900万円」が支給になり、それ以上は請求できません。

老齢年金の繰り下げは、長生きすれば受け取る金額が大きく増えとてもお得な制度です。しかし、途中で亡くなってしまうと、上記のように、増額率分が上乗せされるわけでもなく、未支給期間すべてが未支給年金としてカウントされるわけでもないことを押さえておきましょう。

●75歳で年金を受け取らずに亡くなったらどうなる?

65歳から75歳まで10年間、年金を繰り下げずにもらった場合の総額は180万円×10年=1800万円です。しかし、75歳まで繰り下げ待機し、年金をもらわずに亡くなった場合の未支給年金は900万円ですから、ちょうど半分になってしまうことになります。
また、65歳から75歳まで老齢年金を繰り下げした場合、増額率は84%です。75歳からは「180万円×1.84=約331万円」の年金が支給されます。この年金を90歳までもらった場合、総年金受給額は「331万円×15年=4965万円」となります。年金は保険であり損得で語るものではありませんが、繰り下げ待機中に亡くなった場合はもらえる年金額が減ってしまうことになります。

まとめ

未支給年金は年金をもらわずに亡くなった方の年金を遺族がもらえる制度ですが、金額は「65歳時点での年金額が最大で5年分」となります。繰り下げをして、老齢年金としての増額率がアップしていても、未支給年金には反映されないことを押さえておきましょう。

舟本美子 ファイナンシャルプランナー

「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー

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