19/04/07
通勤中の事故なのに労災にならない…なぜ? 弁護士が解説
会社員のSさんは自動車で通勤していたある日、地面が揺れるような目眩に襲われます。これは急いで帰らねばと思い、会社には休暇の連絡。なんとか自宅に帰ろうとします。ところが体調不良状態での運転は厳しく、事故を起こしてしまいました。
結局救急車で病院に搬送され一命を取り留めたSさん。会社を休職し治療した結果、無事に完治。仕事にも通えるようになりました。
Sさんは事故が通勤途中だったため、労災を申請します。当然認められるものと思っていたのですが、回答は「認められない」というもの。「なぜ通勤中の事故なのに却下されるのか」と怒りを禁じ得ず、「出るところに出てもいい」と怒り心頭になっています。
なぜ認められないのか。法律事務所あすかの冨本和男弁護士に伺いました。
なぜ認められないの?
冨本弁護士:「可哀相で認められてもよさそうなものですが、認められません。通勤災害とは、労働者が通勤により被った負傷や疾病、障害、または死亡のことをいいます(労災保険法7条1項2号)。
「通勤」とは、労働者が就業に関し、住居と就業場所との間を合理的な経路・方法により往復することをいいます(同条2項)。
したがって、通勤災害と認められるには、就業との関連性が認められることが必要であり、往復行為が出勤するために、あるいは仕事をするために行われることが必要です。
出勤途中で気分が悪くなって当日休暇をとることにして帰宅する場合、仕事をするためとは言いにくく、会社に伝えたかどうか、会社の許可を得たかどうかにかかわらず、就業との関連性が失われると解釈されています」
世知辛いような気もしますが、休暇の連絡を入れた時点でその後の移動は就業と関係がないと判断され、労災の対象とはならなくなってしまうようです。ぜひ、覚えておいてください。
取材協力弁護士:冨本和男
法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー
取材・文: 櫻井哲夫
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記事提供:シェアしたくなる法律相談所
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