26/04/08
年金手取り額「月20万円」もらえる人の現役時代の年収はいくらなのか

「年金が月20万円もらえる人の現役時代の年収はいくら?」「そもそも、月20万円も年金をもらうことはできるの?」誰しも老後の年金はできるだけ多く欲しいですから、気になるでしょう。
年金額は現役時代の年収によって変わりますし、額面の年金額からは税金・社会保険料も引かれます。今回は、年金を手取りで月20万円もらえる人の現役時代の年収を紹介します。年金額の決まり方や年金を増やす方法も一緒に見ていきましょう。
国民年金と厚生年金では年金の計算方法が違う
日本の公的年金には、国民年金と厚生年金があります。国民年金は、20歳から60歳までの人が加入する年金。厚生年金は、会社員や公務員が勤務先経由で加入する年金です。
会社員や公務員は国民年金の「第2号被保険者」といって、毎月の給与から厚生年金保険料(国民年金保険料を含む)を支払っています。それによって老後、国民年金と厚生年金の両方から「老齢年金」をもらうことができます。なお、国民年金の老齢年金を「老齢基礎年金」、厚生年金の老齢年金を「老齢厚生年金」といいます。
老齢基礎年金と老齢厚生年金では、年金額の計算方法が異なります。
老齢基礎年金は、原則20歳~60歳までの40年間にわたって国民年金保険料を支払えば、満額が受け取れるしくみ。2026年度の老齢基礎年金の満額は年84万7300円(1956年(昭和 31 年)4月1日以前生まれの場合は年84万4900円)となっています。なお、国民年金保険料の払込期間が40年に満たない場合は、その分年金が減額されます。
老齢厚生年金は、「平均年収÷12×0.005481×加入月数」という式で大まかに計算できます。つまり、平均年収が高く、加入月数が多いほどもらえる年金額が増えます。
厳密には「平均年収÷12」ではなく、毎年4月~6月の給与を下の表に当てはめることでわかる「標準報酬月額」から算出する「平均標準報酬月額」(2003年4月以降はこれに賞与を含めた「平均標準報酬額」)をもとに計算されます。
標準報酬月額は、表のように全部で32等級に分かれています。
<標準報酬月額の一覧表>

日本年金機構のウェブサイトより
また、賞与がある場合は1回150万円上限、年3回まで(=合計450万円)の賞与から厚生年金保険料を納めます(年4回以上の賞与は標準報酬月額の対象となる報酬とみなされます)。
もっとも、年金の計算は複雑ですし、自分でできるようになる必要はありません。ご自分の年金額は日本年金機構の「ねんきん定期便」「ねんきんネット」などで確認してください。
年金を手取りで「月20万円」もらえる人の現役時代の年収は?
年金を手取りで「月20万円」もらえる人の現役時代の年収を知るためには、年金の額面金額がわからなければなりません。今回は、話を簡単にするために、以下の条件で計算します。
【条件】
・国民年金に40年加入
・厚生年金には22歳から60歳までの38年間(456月)加入
・厚生年金の加入期間はすべて2003年4月以降
・税金・社会保険料は年金の額面の10%として計算
税金・社会保険料を年金の額面の10%として計算する場合、年金を手取りで月20万円もらうためには、額面の年金額がおおよそ月22万2300円必要です。
22万2300円×10%=2万2230円
22万2300円-2万2230円=20万70円
額面の年金額が月22万2300円の場合、そこから税金・社会保険料の10%分を引いた手取りの年金額は月20万70円ですから、年金の手取りがおよそ月20万円になります。
それでは、額面の年金額が月22万2300円(年266万7600円)になる年収を考えてみましょう。
2026年度の国民年金の満額は月7万608円(年84万7300円)ですので、額面の金額を22万2300円にするために必要な厚生年金の月額は、
22万2300円-7万608円=15万1692円
とわかります。
つまり、厚生年金が月15万1692円(年182万304円)もらえれば、年金の手取り額が月20万円になります。
上で紹介した厚生年金の計算式より、この年金額をもらうために必要な標準報酬月額は、
◯万円(標準報酬月額)×0.005481×456か月=182万304円
◯万円(標準報酬月額)=約72万8000円
となり、標準報酬月額は約72万8000円必要だとわかります。
しかし、上で紹介した表のとおり、標準報酬月額の上限は32等級で65万円です。報酬月額63万5000円(=年収762万円)以上の方はみな標準報酬月額が65万円となります。
標準報酬月額が65万円の場合、厚生年金の金額(年額)は、
65万円×0.005481×456か月=約162万5000円
です。したがって、
額面の年金額-国民年金-厚生年金=不足する年金額
266万7600円-84万7300円-162万5000円=19万5300円
19万5300円がまだ足りません。
そこでこの分を、賞与からの厚生年金保険料支払いでまかないます。
厚生年金に38年(456か月)加入した人の場合、厚生年金の金額が19万5300円になる賞与の金額は、
標準賞与額÷12×0.005481×456か月=19万5300円
標準賞与額=19万5300円×12÷0.005481÷456か月
標準賞与額=約94万円
約94万円とわかります。
したがって、年間の賞与(1回~3回)の合計が約94万円ならば、厚生年金が22万6600円になるというわけです。
なお、標準賞与額は、賞与にかかる保険料を計算するための金額です。標準報酬月額のように等級があるわけではなく、賞与の支給総額から1000円未満を切り捨てて計算します。
以上より、年金を手取りで月20万円もらえる人の現役時代の年収は
・平均年収762万円
・賞与年94万円
合計856万円
となります。
日本人の平均年収は478万円(国税庁「民間給与実態統計調査」令和6年分)ですから、856万円はかなりの高給取りです。しかも、20代、30代などと、一般に給与が少ない時期も856万円をもらっている必要がある計算なので、「年金を手取りで月20万円」の実現はかなり難しいことがわかります。
なお、標準報酬月額の「32等級」は今後「35等級」まで段階的に引き上げられる予定です。
・2027年9月: 68万円(33等級)が新設
・2028年9月: 71万円(34等級)が新設
・2029年9月: 75万円(35等級)が新設
標準報酬月額が上がることで、厚生年金保険料の負担は増えますが、厚生年金の受給額も増えることになります。
自分の年金額を確認しよう
上の計算例はあくまで計算例です。大切なのは、自分の年金額を知ることです。
50歳以上の方であれば、毎年誕生日ごろに届く「ねんきん定期便」に、今のまま60歳まで加入した場合に65歳からもらえる年金見込額が記載されます。給与が少なくなったり、仕事を辞めたりしなければ、おおよそこの年金額がもらえます。
一方、50歳未満の方のねんきん定期便には、現時点で年金をもらった場合の金額しか記載されていないので、自分の年金額がわかりません。特に20代・30代など、加入期間が短い場合は金額が少なくて驚くかもしれません。
そこで活用したいのが「ねんきんネット」です。ねんきんネットでは、これからの働き方や収入を元に年金額のシミュレーションができます。「かんたん試算」では現在の加入条件が60歳まで続いた場合の年金見込額がすぐにわかります。また「詳細な条件で検索」では詳しく条件を設定したシミュレーションもできます。誕生日を待たずとも、スマホやパソコンでいつでも確認できるので便利です。
<ねんきんネット>

日本年金機構のウェブサイトより
ねんきんネットの利用登録は、マイナンバーカードをお持ちならば、マイナポータル経由で行うのが手軽です。マイナポータルにログインし、「年金記録・見込額を見る(ねんきんネット)」を選択。あとは画面の指示に従って操作するとねんきんネットの情報を確認できます。
マイナンバーカードがない場合は、ねんきん定期便に記載のあるアクセスキーを利用すると、ねんきんネットの利用登録が簡単です。ただし、アクセスキーの有効期限はねんきん定期便到着から3ヶ月(ねんきん定期便のデータ作成日から5ヶ月後の月末)ですので、ねんきん定期便が届いたらすぐに手続きしましょう。なお、ねんきん定期便のアクセスキーがない場合でもねんきんネットに登録することはできます。
ねんきんネットもちょっと面倒という方は、ねんきん定期便に記載されている二次元コードをスマホなどで読み取ると、厚生労働省の「公的年金シミュレーター」が起動します。受給予定の年金額がすぐわかるうえ、「今後の年収」「就労完了年齢」「受給開始年齢」のスライドを左右に動かすだけで老後の年金額をシミュレーションできます。
<公的年金シミュレーター>

厚生労働省のウェブサイトより
もちろん、50歳以上の方であってもねんきんネットは役立ちます。この機会に登録しておくことをおすすめします。
年金・老後資金を増やすためにできる3つのこと
将来にもらえる年金額を見て「これでは足りない」「もっと増やしたい」と思った方は、年金額を増やすことを検討しましょう。ここでは、年金や老後資金を増やすための方法を3つ、ご紹介します。
●(1)長く働く
厚生年金の年金額は、原則として年収が多いほど、加入期間が長いほど増えます。国民年金に加入できるのは原則60歳までですが、厚生年金には70歳まで加入できます。つまり、60歳以降も長く働き続けることで、将来の厚生年金を増やすことができるのです。
今は希望すれば65歳まで働けますし、今後は70歳まで働く環境も整うと考えられます。給与を得ながら厚生年金も増やせるので、お金の不安を減らせます。また、社会とのつながりや仕事のやりがいを得ることで、健康にもいい影響を与えるでしょう。
●(2)年金の繰り下げ受給をする
年金は原則65歳からもらいます。しかし、これを66歳以降に遅らせる「繰り下げ受給」をすることもできます。繰り下げ受給では、1か月遅らせるごとに年金額が0.7%ずつ増え、最大で75歳まで繰り下げることでもらえる年金額が84%増やせます。
<繰り下げ受給による増減率>

(株)Money&You作成
たとえば、月14万円、年168万円の年金をもらえる方が75歳まで年金を繰り下げ受給すると、もらえる年金額は84%増えて月約25.8万円、年約309.1万円に増加します。
この場合、75歳までは年金がもらえないので、その間の生活費が必要にはなりますが、もらう年金額を増やすとても効果的な方法です。年金の繰り下げは、あらかじめ「いつまで繰り下げる」と決める必要もないので、できる範囲で繰り下げるのも有効です。
繰り下げ受給は、老齢厚生年金と老齢基礎年金のどちらか、あるいは両方とも繰り下げることができますので、状況に合わせて選択しましょう。
なお、上の表にもあるとおり、年金を60歳から64歳の間でもらう「繰り上げ受給」も選択できます。しかし、繰り上げ受給は繰り下げ受給とは逆に、1か月早めるごとに年金額が0.4%ずつ減っていくため個人的にはおすすめしません。また、繰り上げ受給は、老齢厚生年金と老齢基礎年金は必ずセットで繰り上げする必要があります。
●(3)iDeCoやNISAを活用する
年金の制度が今後変更になり、将来もらえる金額が減る可能性もあります。それに備えるためには、iDeCoやNISAが役に立ちます。
iDeCoは自分で出した掛金を自分で運用して60歳以降にもらう制度。掛金を出すとき・運用中・もらうときの3つのタイミングで税金を減らしながら、堅実に老後資金を用意できます。2026年12月の制度改正で掛金の上限が引き上げられるため、掛金を出すときのメリット(掛金全額が所得控除)を大きくすることができます。
NISAは投資で得られた利益にかかる税金を生涯にわたって非課税にできる制度。つみたて投資専用の「つみたて投資枠」では金融庁の基準を満たした投資信託やETF(上場投資信託)に投資可能。一括投資もできる「成長投資枠」では株式・投資信託・ETF・REIT(不動産投資信託)に投資ができます。
年金を手取りで「月20万円」もらえる人の現役時代の年収から、標準的な年金額の話、自分の年金額の確認方法、年金や老後資金を増やす方法をご紹介しました。年金の不安は尽きないものですが、不安に思っているだけでは問題は解決しません。まずは自分の年金額をチェックして、少ない・足りないと感じたらそれを増やすための手立てを取って、問題を解決していきましょう。
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高山 一恵 ファイナンシャルプランナー
(株)Money&You取締役。中央大学商学部客員講師。一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学文学部卒業。NHK「日曜討論」「クローズアップ現代」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「マンガと図解 はじめての資産運用」(宝島社)など書籍110冊、累計200万部超。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。DCプランナー1級。住宅ローンアドバイザー。X(旧Twitter)→@takayamakazue
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