24/06/24
マイナス金利解除後も円安が進む理由は?暴落いつ来る?今すべきことをプロが徹底解説
2024年3月に日銀はマイナス金利の解除を発表。17年ぶりとなる金利上昇は、一般的には円高の要因です。しかし為替レートの円安基調は変わっていません。いったいどうしてなのでしょうか。
今回は、登録者数14万超のYouTubeチャンネル「鳥海翔の騙されない金融学」を運営されている鳥海翔さんをゲストに招いて収録したMoney&YouTVの動画「【図解】なぜ円安は止まらない?暴落いつ来る?今すべきことをプロが徹底解説」の様子をお届けします。
鳥海翔さんは、ファイナンシャルプランナーであり、FP YouTuberとしてトップを走られている方です。番組では「マイナス金利解除したのに円安はなぜ?今後の株価や為替動向はどうなる?」というテーマで気になる市場動向をわかりやすく語っていただきました。
為替・株価の推移はどうなっている?
頼藤:まずは僕の方から説明させていただきます。ドル円の動きと日経平均株価、S&P500の確認をしておきましょう。
<日経平均株価とドル円の推移>
(株)Money&You作成
頼藤:こちらは2021年以降の推移をグラフにしています。イベントも書いておきました。この間、米国のバイデン大統領と日本の岸田総理大臣の就任があったり、ロシアのウクライナへの侵攻があったり、新型コロナウイルスの行動制限が解除されたりと、いろいろありました。イスラエルとパレスチナが衝突したり、直近では日銀がマイナス金利を解除したりといった動きがありました。
鳥海さん、こちらご覧いただいて、どうですか?
鳥海さん:円安がやばいですね。150円超えでもう大騒ぎですね。
頼藤:急に上がっていますよね。100円台ぐらいから160円ぐらいですから。
高山:日経平均株価(緑のグラフ)もすごい勢いで上がっています。
頼藤:新型コロナの行動制限解除が大きいのだと思います。あと、円安は日本のマイナス金利解除ではなく米国の利上げが1つのキーポイントとなっていることも見て取れます。
<S&P500とドル円の推移>
(株)Money&You作成
頼藤:S&P500(ドル建て)とドル円の推移です。吹き出しの部分は一緒ですが、鳥海さん。こちらをみていかがでしょうか。
鳥海さん:今、円安が加速中なので、日本人はS&P500に投資することでめちゃめちゃ儲かっていそうですね。
頼藤:そうですね、S&P500は結構緩やかに右肩上がりになっています。それに対して円安は急加速していますので、儲かっているんじゃないかなという状況です。
ではここからは鳥海さんにバトンタッチしたいと思います。
マイナス金利解除したのに「円安」なのはなぜ?
鳥海さん:まず為替の考え方から整理をしていきましょう。
円高・円安になる理由は、円が世界中で売買されているからです。とてもシンプルにいうと、
・円が世界中で買われると、円高になる。
・円が世界中で売られると、円安になる。
という関係にあります。
頼藤:円が欲しいと思うから価値が高くなり、円がいらないとなると下がっていくということですね。
鳥海さん:そうです。では、どうやったら円が買われて、どうやったら売られるのかというと、金利です。
・円の金利が上がると、円が買われる。
・円の金利が下がると、円が売られる。
という関係です。
頼藤:金利が高い方に預けたほうが増えますからね。
鳥海さん:そうです。
ただ、円は円だけで動いているわけではなくて、ドルとかいろんな通貨とのバランスを取っています。
円だけでなくドルも同じような考え方で、
・ドルの金利が上がると、ドルが買われる。
・ドルの金利が下がると、ドルが売られる。
という関係にあります。
これらの関係を踏まえると、
・ドルが買われると、円が売られる。
・ドルが売られると、円が買われる。
となります。
頼藤:持っている円を売ってドルを買うわけですものね。わかりやすい。
鳥海さん:為替の基本的な考え方をまとめると、次のようになります。
<為替の基本的な考え方>
鳥海翔さんの資料より
鳥海さん:円の金利が上がると円高になり、下がると円安になります。また、ドルの金利が上がると円安になり、下がると円高になります。
このことから考えると、
・日本のマイナス金利解除→円の金利が上がるので円高
・ドルの金利→ドルの金利が下がるのではと言われているので円高
と、本来であれば円高になる要因が揃っているのです。
しかし実際は、なぜか円安に進んでいます。
その理由は、米国の金利の動きにドル円の為替の動きを当てはめるとわかります。
<米国の金利とドル円為替レートの推移>
鳥海翔さんの資料より
赤のグラフが米国の金利、緑のグラフがドル円の為替レートです。
マイナス金利が解除されたあと、ドルの金利が上昇していることがわかります。
頼藤:ドル金利の方が優先されるのですね。
鳥海さん:はい。マイナス金利は解除されたけれども、ドルの金利が上がってしまったから結果的に円安に動いたと。シンプルに言うとそんな感じです。
頼藤:じゃあ、マイナス金利解除は大したことないということですね。
鳥海さん:そうですね。年0.001%が年0.01%になったくらいの、微々たる影響です。
頼藤:だからマイナス金利を解除しても、円安になってしまったということですね。
今後の株価や為替の動向はどうなる?
頼藤:では、今後の株価や為替の動向はどうなるのでしょうか。
鳥海さん:わかりません!(笑)
僕が預言者でもない限りわからないですね。誰にもそんなことはわからないと思います。
ただ、将来のことがわからないなりに大切なことを考えると、「長期の原理原則はずっと続くけど、短期の予想が当たるかどうかは1/2」ということです。
円高になるか円安になるか、株価が上がるのか下がるのかは1/2の確率です。たまたま1/2の確率で当たっても、次当たるかどうかはまた1/2の確率です。1/2を繰り返して当て続けられる確率は、限りなくゼロに近いのです。短期の予想を繰り返しても、負けるようになっています。
それであれば、短期の予想を当てようとするのではなく、長期の原則に従いながらどうなってもいいように対策をしていくと、結果的にお金が増えると。そんな風に思っています。
個人的には
・どちらかというと円安は継続
・株価はいままで通り値上がりし続ける
と思っています。
これが当たるかどうかは、1/2なのでわかりません。
頼藤:でも円安は続きそうなのですね。それはなぜでしょうか。
鳥海さん:為替については、ウェルスアドバイザーの記事に、新NISAの始まった2024年1月から4月の4か月間で投資信託が毎月1兆円、4か月で4兆円買われたことが載っていました。直近の過去10年間でみても、めちゃめちゃ買われています。「国際株式型」の投資信託に9528兆円、「国際株式・北米」に4414億円もの純資金流入がありました(2024年4月)。
頼藤:そうすると、ドルがたくさん買われるということですね。
鳥海さん:そういうことです。実際、ほとんどが国際株式型です。
頼藤:オルカン(eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー))とS&P500の2択で買われていると。
鳥海さん:そうです。
米国株を100万円分購入するということは、100万円をドルに変換して6666ドルにして(※1ドル=150円として計算)、6666ドルで米国株を購入するのです。
米国株を買うというとき、「ドルなんて買っているつもりない」と思っていますが、証券会社の中では僕が払ったお金はドルに変換されて、ドルで株が買われているのです。
頼藤:じゃあ、円がどんどん売られて、ドルが買われているということですね。
鳥海さん:そうです。
現状、毎月5000億円相当の円が売られてドルが買われています。それで、2024年は新NISAも始まったばかりで、まだ投資を始めていない人がこれから始めることもあるでしょう。そうすると、1年後には毎月8000億円ぐらいドルが買われることになるかもしれません。となれば、どんどん円安傾向になるのではないかということです。
高山:納得!わかりやすいですね。
頼藤:では、株価はどうなるでしょう。
鳥海さん:S&P500のチャートを見てわかるのは、一時的に下がる場面はあっても「ずっと下がり続けた」という歴史は今のところない、ということです。
この後どういうトレンドが続くのかを考えると、「ずっと下がり続ける」とはとても思えないですし、上がり続けるのではないでしょうか。
頼藤:確かに、米国は世界最大の国ですし人口も先進国で唯一増大しています。世界経済がこれから拡大していくとなると、米国企業は潤います。だから、一時的に下がることもあるけれども、結果的には上がるのではないかということですね。
鳥海さん:そうですね。そういう見立てをしています。
高山:ありがとうございます。こう見ると、米国強いなと思っちゃいますね。
頼藤:「下がる下がる」と常に言われていますが、下がり続けたことはないのですね。
暴落いつ来る?暴落時の心構え
鳥海さん:暴落はいつ来るか気になりますよね。今じゃないのか、いつなのか、どう心構えを持っておけばいいのかという話を最後にしていきます。
暴落に備えるために重要なのは、テクニックではなく「マインドセット」、気持ちの持ちようです。メンタルです。
そもそも投資とは「増えると思うものに対して資金を投じること」です。減ると思うものに資金を投じてはいけないですよね。長い目で見たときお金が増えることが大切です。そして、投資と投機を間違えてはいけません。
これを踏まえて、自身の投資のスタンスを改めて整理しましょう。
<投資と投機の違い>
鳥海翔さんの資料より
鳥海さん:表は投資と投機は何が違うのかをまとめたものです。
投資は、長い目で見たときに絶対増えると思うものに資金を投じることです。これに対して投機は、安いときに買って高いときに売ること。日本で一般的に投資と言われているものは投機です。
投資はもう早ければ早いほどいずれ大きくなるから良いと考えます。しかし投機はどうなるかわからないから安いときに買って高くなったら売ると考えます。
投資は、原理原則を理解すればOKです。人間だって、赤ちゃんのときから20年くらい経てば大人になることはわかりますよね。そのくらいの原理原則がわかっていればできます。それに対して投機は、テクニックやタイミングが超重要ですので、もうめちゃめちゃ勉強しなくてはいけません。
さらに、投資にはセンスも運も勘も必要ありません。でも投機で稼ごうと思ったら、センスも運も勘も必要になります。
こうしてみると、やるべきことは投機ではなく投資だと分かるはずです。これをまず整理しましょう。
頼藤:将来増える可能性が高いところにお金を投じるということですね。
鳥海さん:そうです。
投資は、たとえば地面があってそこに種をまいて、毎日決まった時間に決まった量の水を あげていれば、多分そこはいずれ草が生えてきてジャングルみたいになるというイメージです。
でも、そこの土地を早くジャングルにしたい場合はどうでしょう。日照時間とかに合わせてこのタイミングでこの量で肥料をやって…といったスーパーテクニックがあったらできるかもしれませんが、場合によってはこういうタイミングでは水をあげない方がいい、ということもあるかもしれません。
もし、「今日は天気が」「今日は気温が」「今日は湿度が」などといって水をあげない日が続いたら、やがては枯れてしまうかもしれないのです。これが投機のイメージです。
テクニックではなく、毎月・毎日決まった時間に水をあげてあとは放置していれば、少しずつ草が生えてきます。
頼藤:何も考えずに淡々とやるってことが重要ですね。
鳥海さん:そうです。
実際S&P 500のチャートを見ながら、暴落したときや値上がりしたときに「今は買いどきじゃないから」などといって投資しない人は結局メリットを得ることができません。
頼藤:買うタイミングや売るタイミングを考えるのは勝てない投資だと。まあ、一部のプロは勝てるかもしれませんけどね、プロしか勝てません。
鳥海さん:S&P500は、過去20年30年で見た時に年利10%ぐらい増えています。しかし、実際にS&P500に投資をして投資家が得られたリターンは年3%ぐらいだと言われています。イメージとしては、30年前から今までずっと持ち続けている人は年利10%です。しかし、30年前に投資して2000年に売ってしまった人は年利3%です。
頼藤:ちょっと上がったら売るということをしてしまうから、年10%のリターンが得られないということですね。
高山:ちょっと下がると怖い、怖いから売っちゃうという人もいるんじゃないですか。
鳥海さん:そうですね。でもそれが良くないということです。
まとめると、今は円安だから、株高だからなどと難しいことを難しくとらえるのではなく、何も考えずにいかに継続するか、ぼーっと毎日水をあげていればたぶん増えるという風に、シンプルにとらえるのが勝つコツだと考えています。
結局は、全世界株式やS&P500あたりをダラダラ積立投資していればOKだと。積立投資が終わって気がついたら、なんか増えているというスタンスが、結果的に一番増えると思っています。
頼藤・高山:わかりやすい解説ありがとうございました!
投資は淡々と続けるべし
頼藤:今回の内容をまとめると
・円安は今後も続く見込み
・為替動向は気にしない
・将来値上がりする資産に投資
・暴落しても淡々と続ける
といったところです。
付け加えておくと、資産や家計状況に応じた投資金額になっているか、自分のリスク許容度に見合った投資先を選んでいるかも重要です。
今回の内容の動画もぜひご覧ください。
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畠山 憲一 Mocha編集長
1979年東京生まれ、埼玉育ち。大学卒業後、経済のことをまったく知らないままマネー本を扱う編集プロダクション・出版社に勤務。そこでゼロから学びつつ十余年にわたり書籍・ムック・雑誌記事などの作成に携わる。その経験を生かし、マネー初心者がわからないところ・つまずきやすいところをやさしく解説することを得意にしている。2018年より現職。ファイナンシャル・プランニング技能士2級。教員免許も保有。趣味はランニング。
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