24/08/05
暴落や下落相場に負けない「新NISA×高配当株投資」を続けるテクニック
8月2日と5日、日経平均株価が大暴落しました。7月31日の終値は3万9101円。8月5日の終値は3万533円2216円と8568円安となっています。日銀の追加利上げに伴う円高加速に加えて、米国景気が後退する可能性が懸念され、一気に投資家心理が冷え込んでいます。ドル円は7月31日時点の1ドル149.98円から、8月5日15時半時点で142.6円まで7円の円高です。
暴落時には、どんな銘柄であっても、一時的に株価が下落してしまいます。資産が減るのが怖いからと売却したくなってしまうかもしれませんが、値下がりしている時に売却すると、お金を大きく減らしてしまいかねません。
今回は、暴落や下落相場が起きたときでも「新NISA高配当株投資」を続けるにはどうすればいいか、その考え方を紹介します。
「市場はときどき暴落する」ことを心に留める
2024年に入り、株価は堅調に推移しています。
日本株の株価指数「日経平均株価」は34年ぶりに史上最高値を更新。2024年3月にははじめて4万円台の大台を突破しました。また、米国株の株価指数「ダウ平均株価」「S&P500」なども同じく史上最高値を更新しています。
ただ、市場はときに暴落します。日経平均株価の長期の推移は次のようになっています。
<日経平均株価の推移(1980年1月〜2024年4月)>
(株)Money&You作成
日経平均株価はバブル崩壊以後大きく下落しました。また、途中でリーマンショック、コロナショックなどによって暴落相場もあり、一時的に大きく下落しています。しかし、それらを乗り越えて回復してきたこともわかりますね。
<S&P500の推移(1980年1月〜2024年4月)>
(株)Money&You作成
米国を代表する株価指数、S&P500も同様です。日経平均株価とは違いおおむね右肩上がりのグラフになっています。ITバブルの崩壊や米同時多発テロ、リーマンショック、ロシアのウクライナ侵攻などの影響をうけて一時的に下落しているものの、やはりそれらを乗り越えて大きく上昇しています。
今後もこれまでと同様、大きな暴落があったり、下落相場が来たりすることがあるでしょう。そんなとき、もし新NISAで高配当株に投資をしている場合は、どう乗り越えていけばよいのでしょうか。
【新NISA×高配当株投資】資産形成をしているタイミングで暴落があったら?
資産形成をしているタイミングで保有銘柄の株価が下がったとします。このとき、保有している銘柄がもしも好業績銘柄や増配銘柄であれば保有を続けるべきですし、何なら買い増しを検討してもいいでしょう。
その理由は、
①配当を多く受け取ることができる
②株価が戻ったときにはキャピタルゲインも得られる
の2つです。
好業績銘柄や増配銘柄を安いうちに多く買っておけば、配当を多く受け取ることができるようになります。また、株価が戻った場合には値上がり益(キャピタルゲイン)も期待できます。
株価のチャートは売却のタイミングを図るためではなく、買い増しの指標として活用しましょう。一定期間の価格の平均値を表した移動平均線や、近づくと買いが増えるサポートラインなどが有用です。
過去どのような暴落があってどのように回復してきたのかを知っておくと、相場が下落しても冷静に対処できます。
<米国株(S&P500)の暴落から回復するまでの期間>
著書「マンガと図解 50歳からの「新NISA×高配当株投資」」(KADOKAWA)より
いずれも世界的に話題になった暴落ですが、回復までの期間を見るとおよそ1〜3年、長くても5〜6年で回復していることがわかります。最近は暴落から回復までの期間が短くなっている点にも注目です。もちろん、必ず半年・1年で回復すると決まっているわけではありませんが、回復には3〜5年くらいかかることを押さえておきましょう。
また、暴落をチャンスに変えるという目線も重要です。
積立投資は続けるようにしましょう。株価が暴落したとしても、定期的に一定額ずつ株を購入していれば安く購入するチャンスです。また、株価が下がると配当利回り(株価に占める配当金の割合)が高くなることにつながります。配当も再投資することで、値上がりしたときの配当を多くできます。
ただ、株価の暴落が市場全体で起きているのではなく、企業の個別要因で起こっているならば、理由を見定める必要があります。一時的な要因で下落しているのであれば様子見で、売却は保留したほうがいいでしょう。しかし、業績不振・増配停止・減配(配当の金額を減らすこと)などを発表した企業の場合は、見切りをつけて売り、乗り換えていいでしょう。
【新NISA×高配当株投資】定年後に暴落があったらどうする?
「心の安定」は「お金の安定」という背景によって成立します。ですから、あらかじめ預貯金や変動10年国債といった安全資産を1,000万円〜2,000万円持っておくのがいいでしょう。運用資産は暴落する可能性がありますが、安全資産は暴落しないからです。心に余裕を持つためには、安全資産が必須です。
また、暴落しているときには高配当株資産を売却しないでください。大きく損する可能性がありますし、将来もらえるはずの配当を減らすことになってしまいます。
したがって、
①年金だけで生活できるならそれで乗り切る
②配当収入を生活費にあてる
③安全資産を取り崩す
の3つの施策でできるだけ乗り切りましょう。
暴落はありますが、紹介したとおり長くは続きません。高配当株資産はできるだけ売却しないようにして、暴落中の1年〜3年程度を乗り越えるようにしましょう。
【新NISA×高配当株投資】投資資産を現金化する売却のタイミングは?
投資資産を現金化する売却のタイミングには、ライフイベントや老後に関わるものがあります。
<投資資産を売却するタイミング>
著書「マンガと図解 50歳からの「新NISA×高配当株投資」」(KADOKAWA)より
投資は、あくまで生活を豊かにするためのものですので、ライフイベントでまとまったお金が必要になったときには、運用資産を現金化して使ってももんだいありません。また、老後資金として使う場合は、50代までが資産を築く段階だとすると、60代は資産を築きつつ使い、70代以降は積極的に使う段階です。自分の人生を豊かにするために必要な金額だけ売却して使うことも意識していきましょう。
【新NISA×高配当株投資】保有株の売却を考える3つのタイミング
保有株の売却を考える3つのタイミングは、次のとおりです。
●①企業の成長鈍化・停滞
業界全体が縮小するなどして、企業の成長が伸び悩んでいるときは、売却を考えるタイミングです。取り扱う商品のニーズが低下しているにも関わらず方向転換できていないような企業の場合は注意が必要です。
●②不正発覚・コンプライアンス違反
会社の信用を大きく損ねる不正が発覚すると、信用回復までに時間がかかります。また、粉飾決算などが行われていた場合は上場廃止となる可能性があります。現代の世間の目は厳しく、SNSなどでの拡散速度も早くなっています。ひとたび評判が悪化すると株価に大きく影響するので、売却するときはなるべく早く売却しましょう。
●③経営陣の交代
カリスマ経営者の退陣といった、トップの交代は企業のその後の成長戦略に大きく関わります。もちろん、好転する可能性もありますが、交代後の決算がどうなるかをよく確認したほうがよいでしょう。
業績が悪化するということは、配当を出すための純利益が減少することにつながります。純利益が減少すると減配になったり、株主優待の内容が改悪されたりする恐れがあります。こうなると、株価下落も呼び込んでしまうので、長期投資には適さなくなってしまいます。売却を検討したほうがいいでしょう。
新NISAで高配当株投資をすれば、運用益はもちろん、配当金も非課税で受け取れます。しかし、今後市場が暴落したり、下落相場になったりすることもあるでしょう。
そんなとき、慌てて売却するのではなく、今回ご紹介したことを踏まえて、新NISA高配当株投資を続けていただければと考えます。
今回の内容は動画でも紹介しています。ぜひご覧ください。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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