23/11/23
国民年金「65歳延長案」100万円負担増。「払ってる割に見返りがない」は本当か
超少子高齢化の影響により、国民年金保険料の制度が見直しされるかもしれません。
制度の見直しには十分な議論がなされるべきですが、このたび、厚生労働省の部会では、国民年金の保険料の支払いを、現在の「60歳未満」から、「65歳未満」と、5年延長する案が出ています。
保険料支払いを、5年延長するのはなぜなのでしょうか。そして、延長になったら損をしてしまうのでしょうか。
国民年金保険料の支払いを5年延長するわけ
日本の公的年金は2階建てと言われています。1階部分は、すべての人が加入する国民年金(=基礎年金)。2階部分は、会社員などが加入している厚生年金です。
今回、国民年金保険料の支払い延長で話題になっているのは、1階部分の国民年金のことです。
2023年度の国民年金保険料は、月あたり1万6520円。保険料を20歳から60歳になるまでの40年間払ったら、基本的に65歳から老齢年金(老齢基礎年金)を受け取ることができます。
老齢基礎年金の満額は、年額で79万5000円、月あたり6万6250円です(2023年度)。生きている限り一生涯受け取れますので、老後資金の要として大切な収入になります。
ところが、将来の年金受取額については、少子高齢化の影響が懸念されています。なぜなら、少子化により現役世代が支払う保険料が減り、高齢化により高齢者が受け取る年金が増えるからです。年金制度全体で考えた時に、収入が減って支出が増えるわけです。
そのため、保険料(収入)を増やせるように、国民年金保険料の支払いを5年間延長する案が出てきたのです。
国民年金保険料の支払い「5年延長」で保険料負担は約100万円増
仮に国民年金保険料の支払いが5年延長されたとします。2023年度の国民年金保険料が5年間続いたとした場合、5年間の国民年金保険料の総額は99万1200円。約100万円もの支出増になります。
ただし、会社員や公務員などとして働いて、60歳以降も厚生年金に加入している人であれば、追加の保険料負担はありません。給与から厚生年金保険料が差し引かれますが、そこには国民年金の分も含まれているからです。負担が増えるのは、フリーランスや個人事業主、60歳より前に早期退職した国民年金第1号被保険者の人です。
なお、年金の受取り金額の増額がいくらになるのか、結論はまだ先です。国民年金(=基礎年金)の満額は、支払期間の延長した分に合わせて引き上げられる案が複数、同時に出されています。単純に、現行の制度を当てはめて考えれば、5年多く国民年金保険料を納めることで老齢基礎年金は年10万円ほど増える計算です。また、増額は老齢年金だけではなく、障害年金、遺族年金の増額にもなります。そういう意味では、必ずしも「払ってる割に見返りがない」とまではいえないでしょう。
年金を受け取っている人すべてに恩恵のある制度になるとよいですね。
とはいえ、合計100万円もの増額は決して少なくない金額なので、60歳を過ぎてから保険料を支払い続けられるのか、心配になる人もいるかもしれません。
しかし、実際に60代でバリバリ働いている人は年々増えています。
総務省「労働力調査」によれば、2022年時点で65~69歳では男性の61.0%、女性の41.3%が仕事についており、その割合は年々増加傾向です。
もし、保険料の支払いが難しい状況であれば、納付の免除もできます。
60代後半の働き方は、年金の保険料支払いと、将来の受取りのバランスをとって、柔軟に考えるとよさそうです。
老後の備えは公的年金のほか、NISA、iDeCoも活用する
公的年金制度は、今後も持続可能性を高めるためにも、改革は随時なされていくでしょう。
先行きが不確定にならざるを得ないなか、公的年金だけに頼らない老後の備えも必要になります。
老後資金の備えなら、安全確実な金融商品が適していますが、預貯金だけでは効率的な資産づくりはなかなか難しいものです。
そこで、2024年から新しい制度に切り替わるNISA(少額投資非課税制度)や、iDeCo(イデコ、個人型各確定拠出年金)といったおトクな制度も選択肢に加えて検討するとよいでしょう。
NISA、iDeCoは、投資信託などで資金を運用する投資ですから、基本的に元本保証ではありません。とはいえ、リスクを小さくおさえた商品であれば比較的安心して運用できます。
しかも、どちらも運用益に税金がかからないおトクな制度です。
公的年金に加えて、個人でも資金作りをして、豊かな老後に備えていきましょう。
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タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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