23/05/04
「副業で発生する予想外の税金負担」どう回避すればいいのか
最近は、副業をすることで収入を増やしたり、自分自身の成長やキャリアアップを目指したりすることが一般的になってきています。副業という性質上、インターネット上での取引やフリーランスといった比較的気軽な感覚で仕事を行っている人も多いでしょう。
このように、手間や費用をかけずに始められるのが副業の良い点ではありますが、副業で得た収入については、適正な税金の取り扱いが求められることは言うまでもありません。
そこで今回は、副業で得た収入に対する税金の考え方について解説し、「予想外の税金負担」を回避するために必要なことについても一緒に考えていきたいと思います。
副業で得た収入は事業所得か雑所得か
会社員が副業で得た収入は、その性質によって事業所得か雑所得かが区分けされます。事業所得とは、個人が営む事業によって得た収入のこと。雑所得とは、その他の所得のことです。
以下の基準によって、副業収入が事業所得か雑所得かが区分けされます。
①事業の継続性
副業が単発のものであれば、雑所得として扱われます。一方、副業が継続的なものであれば、事業所得として扱われます。
②資産や人件費の投入
副業にある程度の資産や人件費を投入している場合、事業所得として扱われます。
③売上や利益の大小
副業の売上や利益がある程度の規模である場合、事業所得として扱われます。一方、規模が小さい場合は、雑所得として扱われます。
具体的なケースで見てみましょう。例えば、会社員が過去に自分が趣味で集めたコレクション品をオークションに出品することでお金を得たとします。この場合、この会社員は今後オークション取引を繰り返すことはあるかもしれませんが、その取引は事業的なものであるとは見なされず、雑所得に分類される可能性があります。
一方で、ある人が通常の会社員として働きながら、自分で手作りのアクセサリーを大量に作って、オンラインショップで継続的に販売しているとしましょう。この場合、副業としてのアクセサリー販売によって得た収入は、事業所得として計算することができます。
副業で得た収入が事業所得になる場合、課税対象となる金額を算出するのに、収入からさまざまな必要経費を差し引くことができます。必要経費とは、アクセサリーを作るために必要な材料費や電気代、オンラインショップ運営のためのパソコンや通信費、さらには広告宣伝費などです。これらの費用は、アクセサリー販売に必要な経費であるため、収入から差し引くことができます。雑所得でも必要経費の控除はできますが、事業所得の方が必要経費に算入できる範囲が多くなります。
本格的に副業をするなら事業所得が税金面で有利
副業で得た収入が少額である場合には、簡易課税制度を利用することができる雑所得のほうが、手間がかからないという面ではメリットがあります。簡易課税制度は、収入金額によって税率が決まり、必要経費の控除はできませんが、簡単に確定申告ができることが特徴です。
ですが、本格的に副業をして、収入金額が大きくなってくると、事業所得の方が青色申告特別控除や損益通算などの税制優遇措置が適用されるので税金面では非常に有利です。
青色申告特別控除とは、複式簿記を使って帳簿をつけるなど一定の条件を満たすと所得税を軽減することができる制度です。また、損益通算とは、一定の期間内での取引で得た損失と利益を合算し、損益を計算できる方法です。
例えば、副業での事業所得が赤字となった場合に他の給与所得と合算して所得を計算できるため、節税効果があります。これらの特典は事業所得に対してのものであり、雑所得には適用されません。
事業所得は記帳や帳簿書類の保存が必須
雑所得と比べて税金面で有利な事業所得ですが、近年は、税務当局が記帳や帳簿書類の保存について監視を強化していることにも注意が必要です。
2016年には、個人事業者が所得税を払うために、取引の記帳や帳簿書類の保存に不備があると過少申告加算税や無申告加算税が課せられることになっています。
また2022年の改正通達によって、会社員の副業収入が事業所得か雑所得かの基準が区分けされ、記帳や帳簿書類の保存をきちんとしている場合には、収入が少ない場合でも事業所得として扱いが認められるようになりました。
逆に、記帳や帳簿書類がきちんと保存されていない場合には、事業所得として認められず、雑所得として扱われることが明確化されました。
そのうえ、2023年分(令和5年分)からは、売上に関する帳簿を保存していなかったり、内容が不十分だったりする場合には、過少申告加算税や無申告加算税の割合が最大10%上乗せされる措置も行われます。
取引の記帳や帳簿書類の保存に不備があると、必要経費の控除が認められなかったり、青色申告特別控除や損益通算が適用できなかったりする恐れがあります。「こんなはずじゃなかった」と予想外の税金負担を強いられるケースも今後出てくると思われます。
予想外の税金負担を回避するために今からできることは
予想外の税金負担を回避するためには、適切に確定申告を行い、事業所得に分類されるようにしておくことが重要です。具体的には、売り上げや経費を記録する帳簿を作成し、支払いや収入の明細書を5年または7年保管するなど、取引の帳簿をきちんと用意する必要があります。帳簿をつけることで、必要経費を正確に計算することができますし、税務署からの調査や確認に際しても、必要な書類をきちんと提示することができます。
最近では、税金の知識がない人でも、正しく確定申告を行うことができる便利な会計ソフトもあるので、ぜひ活用しましょう。また、自分だけの判断が難しい場合には、税理士や会計士などの専門家に相談すれば、さまざまなトラブルを事前に回避することができます。不安な場合には、早めの対策をしておくことをおすすめします。
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KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。
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