23/03/15
50歳から年金を増やすためにできる6つのこと
50歳になると、住宅ローンの返済や教育費の支払いが一段落し、老後について落ち着いて考え始める方も多いかと思います。65歳以降の暮らしを考えるときに、欠かせないことの1つに年金があります。どんな生活を送れるかは、もらえる年金額に影響されます。そこで、今回は老後にもらえる年金額を確認する方法と、これからできる増やし方を紹介します。
もらえる年金額を確認する方法は?
日本の公的年金には2種類あります。20歳以上60歳未満の人が加入する「国民年金」と、会社員や公務員の方が国民年金に上乗せして加入する「厚生年金」です。
●国民年金と厚生年金
筆者作成
公的年金の保険料を支払うことで「老齢年金」以外にも条件に当てはまれば「遺族年金」や「障害年金」がもらえます。今回はその中で老齢年金にスポットを当てて考えていきます。
●毎年、誕生月に届く「ねんきん定期便」をチェック
毎年はがきで届くねんきん定期便。50歳になると内容が変わり、「老齢年金の見込額」が記載されます。老齢年金の見込額は、現在の加入条件が60歳まで続くと仮定して65歳からもらえる年金額の目安を表しています。
・50歳以上のねんきん定期便(表)
日本年金機構「「ねんきん定期便」の様式(サンプル)と見方ガイド(令和4年度送付分)」より
また、裏面の「3.老齢年金の種類と見込額(年額)の「老齢基礎年金」」の見込額が満額(2022年時点で 777,800円)ではない場合、「未納月数」があることになります。具体的な未納月数は後述するねんきんネットで確認できます。
・50歳以上のねんきん定期便(裏)
日本年金機構「「ねんきん定期便」の様式(サンプル)と見方ガイド(令和4年度送付分)」より
ねんきん定期便での年金の情報の確認は年に1回となりますが、ねんきんネットに登録をするとPCやスマホでいつでも年金の情報の確認ができます。ねんきん定期便の「お客様のアクセスキー」を利用すると登録がスムーズです。また、スマートフォンもしくはICカードリーダーをお持ちの方はねんきんネットの登録がなくてもマイナポータルからマイナンバーカードを利用してねんきんネットを利用できます。
年金を増やすためにできる6つのこと
ねんきん定期便やねんきんネットで年金の見込額を確認してみて、想像よりも多かったという方もいらっしゃれば、もう少し年金を増やしたいと思われた方もいらっしゃると思います。ここでは年金を増やすためにできる6つのことをご紹介します。
●年金を増やすためにできること1:国民年金の未納をなくす
「学生特例納付制度」や「免除」「納付猶予」の制度を過去に利用し未納分がある場合、国民年金の「追納」が行えます。追納は制度利用から10年以内ならば可能です。働きながら追納をすると、追納分も収入から「社会保険料控除」を受けられ、支払う所得税・住民税が下がる可能性が高くなります。
●年金を増やすためにできること2:国民年金に60歳以降も「任意加入」をする
もし追納が間に合わない場合、60歳から65歳になるまでの間、国民年金に任意加入をすることで、加入期間を40年(480カ月)に近づけられます。なお、60歳以降も厚生年金に加入している場合、任意加入は行えませんが、加入期間により増える金額と同等の額を「経過的加算」として老齢厚生年金としてもらえます。
●年金を増やすためにできること3:60歳以降も働く
60歳以降も再雇用制度などを利用して勤続すると、厚生年金に加入し続けられます。経過的加算が受けられる他に、老齢厚生年金の受給額を標準報酬月額に応じて増やせます。
厚生年金には、原則70歳まで加入可能で、国民年金と異なり、40年(480カ月)以上加入できます。65歳以降も働く場合は、厚生年金保険料を支払いながら、老齢厚生年金と老齢基礎年金をもらえます。また、2022年4月から開始した「在職定時改定」により、毎年9月1日時点で厚生年金に加入している場合、前月8月までの加入実績を10月分の年金額に反映して受給できます。
※在職老齢年金制度:受給している年金額(月額)と総報酬月額相当額の合計が47万円(2022年度)を超える場合は、もらえる年金額が報酬額に応じて減額されます。
●年金を増やすためにできること4:繰り下げ受給をする
老齢年金は原則65歳の誕生月からもらえます。ですが、65歳からもらわなくてもいい場合、受給開始時期を最大75歳まで(※)繰り下げできます。繰り下げ受給の最大のメリットは「繰り下げ加算」により年金額が増額することです。増額率は老齢基礎年金・老齢厚生年金ともに、1カ月繰り下げることに0.7%増えます。
ねんきん定期便の表面にも記載がある通り、例えば70歳から受給開始すると、65歳からもらう金額よりも42%増額され、最大の75歳まで繰り下げると84%増額されます。この繰り下げは、老齢基礎年金は65歳から受給し、老齢厚生年金は70歳から繰り下げて受給するというようにそれぞれ異なった時期で決められますので、自分にあった繰り下げ方法を考えていきましょう。また、60歳以降も働きながら繰り下げを行う場合は、在職老齢年金制度によって減額されるはずの金額は繰り下げ制度の対象外となります。
(※)2019年3月31日以前に老齢年金をもらう権利が発生している場合は、70歳まで繰り下げが可能です。
●年金を増やすためにできること5:iDeCoを活用する
家計にゆとりがあると感じている方は、iDeCo(個人型確定拠出年金)を利用して年金を自分で作っていくことも視野にいれていきましょう。iDeCoのメリットは、投資益に税金がかからないこと、収入から全額控除されるため所得税・住民税が減額になることの2つです。
iDeCoの運用先は投資信託・定期預金・生命保険があります。投資の知識がなく運用は苦手という方もiDeCoの商品の中から定期預金や生命保険など元本保証のサービスを選んで始められます。
iDeCoは50歳から加入した場合、60歳から引き出せます(※)。iDeCoの資産の受け取り方法には、一括でもらう「一時金」と、分割でもらう「年金)の2通りあります。この2つを併用することも可能です。いつでも引き出せないことに注意が必要ですが、この引き出せない強制力を使って、老後の楽しみをこつこつ積み上げていくといいでしょう。
(※)加入期間が60歳時点で10年未満の場合、受け取り可能時期が段階的に遅くなります。
●年金を増やすためにできること6:付加年金に加入する(自営業の方など、厚生年金に加入していない方限定)
自営業で働くなど、第1号被保険者の方は付加年金に加入できます。毎月400円保険料を支払うと、老齢年金の受け取りの際には、毎年200円×支払った月数分もらえます。つまり、2年以上老齢年金をもらうと元が取れる計算になります。
例えば50歳から10年加入した場合、総額4.8万円支払うことで、65歳から老齢基礎年金に追加して毎年2.4万円の付加年金をもらえます。また、付加年金は繰り下げ受給の対象なので、年金をもらう時期を遅らせることで増やせます。
まとめ
年金額の確認方法と増やし方を紹介しました。老後の資金にばかり目がいくと、今を楽しむのを忘れてしまいがちです。今と未来のバランスや、現在の資産状況などをもとに、老後の資金計画を考えてみてくださいね。
なお、年金額が増えると所得税・住民税が増える可能性が出てきます。その場合はふるさと納税を活用したり、医療費が多くかかった年は確定申告を行ったりして、使えるお金を最大限残す工夫をしていくといいでしょう。
【関連記事もチェック】
・【米国ETF】高配当株ETFのVYM・SPYD・HDV・DVY、増配株ETFのVIG・SDYを徹底比較!プロが選ぶ正解はコレだ【Money&YouTV】
・「64歳で退職するとお得」は本当?失業給付は65歳退職といくら違うのか
・令和でも「昭和生まれの親」のお金の常識にとらわれる人の残念な末路
・老後破綻の原因は「たった一つの悪習慣」 老後破綻を避けるには
・「住民税非課税世帯」の年代別割合は?年金生活者に多いのは本当なのか
金子圭都 ファイナンシャルプランナー(CFP︎®︎)
学生の頃、親族の死をきっかけにお金について学び、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。お金の勉強をする女性コミュニティでイベントの企画・運営に3年間携わり、のべ200人以上のお金の悩みに寄り添う。その後独立し、お金の不安を安心に変えるマネー相談を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう