22/11/13
国民年金保険料「65歳まで納付」になったら年金はいくら増えるのか
先日、驚くニュースが飛び込んできました。どうやら国は国民年金保険料の納付期間を、今の20歳~59歳の40年間から、20歳~64歳の45年間に改正したいと考えているようです。もしこれが決まったら、私たちが将来もらえる年金は増えるのでしょうか?今回は、国民年金保険料の納付期間が5年延長された場合の年金受給額の試算と、私たちの生活への影響をご紹介します。
国民年金保険料の納付期間が5年延長!?
2022年10月15日、気になるニュースが報じられました。その内容は「国は国民年金保険料の納付期間を今の60歳までから65歳までに5年間延長することを検討している」というものです。
日本の年金は賦課方式といって、財源を現役世代が納付する保険料と税金で賄っています。しかし、少子高齢化が進み高齢者人口が増えていく今、このまま行けば年金の財源確保が難しくなるかもしれません。そこで、年金の財源を確保するために、保険料の納付期間を延長する案が出てきているのです。この件はこれから審議を重ね、2024年(令和6年)までに結論を出し、2025年(令和7年)の通常国会へ改正案を提出するのを目指しているとのこと。動向が気になりますね。
現行の国民年金は、20歳から59歳までの40年間保険料を納め、納付期間や免除期間により老齢基礎年金の金額が決まるようになっています。それが、64歳まで保険料を納付しなければいけないことになるかもしれないのです。自営業者やフリーランス、または65歳になるまでに定年を迎えたいと考えている人にとっては、保険料の負担が増すことになります。そう考えると、納付期間が5年延長されるのは心配になります。
国民年金保険料の納付期間5年延長でもらえる年金はいくら増える?
では、国民年金保険料の納付期間が5年延長されると、負担がいくら増えて、年金額はいくら増えるのでしょうか?2022年度の保険料額と、もらえる年金額を使って試算してみましょう。
●5年延長で増える保険料の負担額
2022年度の国民年金保険料は、月額1万6590円です。この保険料額で試算してみます。
◎1万6590円×12カ月×5年=99万5400円
保険料の納付期間が5年延長されると、トータル約100万円の出費が生じることになります。1年間では約20万円の負担増です。
●5年延長で増える年金額
保険料の納付期間が延びるということは、もらえる年金額も増えることになります。では、いくら増える見込みなのか、2022年度の老齢基礎年金の受給額を使って試算してみます。
2022年度の老齢基礎年金は、月額6万4816円・年額77万7800円です。
厚生労働省の「年金制度の仕組みと考え方 第7」に掲載されている資料によると、基礎年金延長部分(5年)の給付は「40年分の基礎年金と同じ1年当たり単価により、5年分を加算して増額」と記載があるので、その通りに試算します。
◎77万7800円÷40年=1万9445円(1年分とする) 1万9445円×5年=9万7225円
77万7800円(40年間加入の満額)+9万7200円(5年延長した場合、1年当たりの年金増額分:100円未満四捨五入)=87万5000円
保険料納付期間45年になる場合の老齢基礎年金の満額は、87万5000円になると試算できました。今(2022年度)の老齢基礎年金額よりも9万7200円増えることになります。
(注意)上記の計算は2022年度の年金額を使った試算であり、決定額ではありません。実際の年金額は変わります。また算出方法も変わるかもしれません。
国民年金保険料の納付期間が5年延長されることで、60歳から64歳までの間に年間約20万円の保険料負担が発生します。しかし、その分もらえる老齢基礎年金は今よりも年間約10万円増えることになります。これが吉と出るか凶と出るかは、将来もらえる年金の受給水準にかかってくるのかもしれませんね。
「65歳まで納付」が決定したら私たちの生活への影響はどうなる?
国民年金保険料の納付期間が5年延長されると聞くと、「負担が増すから困る」と思う人もいるでしょう。けれども、すべての人が負担増になるわけではありません。65歳まで働こうと考えている会社員は退職するまで厚生年金に加入するので、負担が増えるわけではありません。かえって老齢基礎年金の受給額が増えることになるので、悪い話ではないですよね。
注意したいのは、自営業者やフリーランス、そして65歳より前に定年退職しようと考えている人です。これらの人は64歳まで保険料の負担が増えることになるので、家計への影響が出てくるかもしれません。ただ、60歳以降も仕事を続けることで収入を確保できれば、保険料負担の影響を減らすことができます。
そこで今からできることは、「65歳まで納付」が決定したときのことを考えて、ライフプランを見直しておくことです。5年間保険料の負担が増えることで貯蓄残高に影響はないか、どれくらい収入を確保できれば家計を問題なく回せるのかをチェックしておくことをおすすめします。早めに家計状況のチェックをしておけば、保険料の納付期間が延びたとしても対処できるでしょう。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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