20/11/06
親を扶養に入れるといくら節税できるのか。扶養にできる条件と注意点は?
同じ収入であっても、社会制度や税制の使いこなし方で手残りが変わってきます。親を扶養に入れるかどうかもその一つです。すべての人が使えるとは限りませんが、もし扶養に入れる条件を満たすのなら、扶養する側も扶養される親御さんも負担が減って、得をするケースがあります。今回は、「扶養」に注目して節税を考えていきましょう。
親を扶養に入れることで得られるメリット
親を扶養に入れることで得られるメリットは、大きく分けると、所得税・住民税の節税と健康保険料の節約の2点があります。年金生活の親を扶養に入れることで、子どもの所得税や住民税が節税になります。また、親は子どもの加入している健康保険に入ることで、健康保険料の負担がなくなります。
●所得控除で税金の負担を減らす
所得税には、それぞれの家庭の事情を考慮して税額を引くことができる所得控除があります。所得控除には、人に対する控除と物に対する控除があります。
扶養控除は人に対する所得控除の一つです。親を扶養に入れることで、税金の負担を減らすことができます。
・扶養控除の金額
たとえば、親の年齢が70歳以上で同居の場合なら、所得税の控除額は58万円です。ご両親が健在ならば、2人分控除ができます。
どれくらいの節税になるかは、その人の所得金額で税率が変わりますが、たとえば、年収が500万円の方の場合なら親御さん1人で所得税が11.6万円、住民税が4.5万円ほどの節税になります。ただし、自治体で税額の計算には違いがあるため、参考程度とお考えください。
●健康保険料の負担をなくす
親が子の健康保険の扶養に入ると、親は国民健康保険料を支払う必要がなくなります。
ある自治体の計算例では、2人世帯で夫婦の一方が年金を年額150万円もらっていて所得がある場合、年額2万9300円の保険料負担があります。子の健康保険の扶養に入れば、この負担分が減らせることになります。
ただし、健康保険の仕組みでは、75歳以上になると後期高齢者医療制度に加入することになり、別の健康保険制度に移行するため、健康保険料の節約はできなくなります。
扶養に入れる条件とは
扶養に入れる条件は、税法(扶養控除)の扶養と健康保険の扶養で異なります。条件を満たせば、両方とも入ることもできます。
●税法の扶養の加入条件
税法上の扶養家族になるためには親の収入が影響してきます。
「生計を一にする」とは、平たくいうと、同じ財布で生活しているということです。とはいえ、同居していなければいけないわけではありません。たとえば親の入院や入所、仕事の関係で別居していても構いません。
年間合計所得金額については、親が年金を受給しているときには、年金控除を差し引いて計算したものになります。
●健康保険の扶養の加入条件
健康保険での扶養も、生計を一にしていることが条件です。加えて、親の年齢が75歳未満である必要があります。
年収の制限の金額は、税法の扶養よりも多くなっていますが、子と同居している場合は子の収入全額の半分未満、別居している場合は子からの仕送り金額より少ない金額でないと扶養に入ることができません。
なお、親の年齢が60歳未満でも、障害年金をもらっている場合には、年収の上限額が130万円から180万円に上がります。
扶養に入れることの注意点
親が扶養に入ることでデメリットが生じるケースもあります。
たとえば健康保険では、高額療養費制度の自己負担額が高くなることがあります。
健康保険の高額療養費の自己負担限度額は、所得金額によって分けられていますが、扶養に入ると扶養者である子どもの収入が基準になります。高齢になると、病院の受診や入院ということが増えてきます。ですから、持病があって継続的に病院に通院することがある、入院することが頻繁に予想されるという場合には、保険料の負担だけではなく、医療費と保険料をトータルに考えておく必要があります。
年金受給者でも親の所得が多い場合や高額療養費制度を利用している場合を除けば、親を扶養に入れることで負担が減るケースが多くなります。また健康保険組合によっては、加入条件を満たしていても会社の負担が大きくなるので、親を扶養に入れられないというケースもあるようです。
扶養控除は、年末調整・確定申告で申請します。手続きに慌てないように、事前に内容を確認して準備をしておきましょう。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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