25/03/23
国民年金保険料「2年で1.1万円増」、安くする方法は意外とある

自営業者やフリーランスなどの国民年金第1号被保険者や、国民年金に任意加入をしている人が毎月納める国民年金保険料。2024年度に大幅な値上がりが話題となったこの国民年金保険料の金額が、2025年度から2026年度にかけてさらに値上がりすることをご存じでしょうか。そこで今回は、国民年金保険料の仕組みを解説するとともに、国民年金保険料をお得に納める方法や、納めることが難しい場合の対処法等を紹介します。
「7年で1.8万円増」となった国民年金保険料
2025年1月24日、2026年度の国民年金保険料が厚生労働省から発表されました。2026年度の保険料は、2025年度から410円増となる17,920円です。
<国民年金保険料の推移(2019年度~2026年度)>

筆者作成
2026年度の国民年金保険料は、月16,980円だった2024年度から月額にして940円増加ですから、年11,280円増えています。また、月16,410円だった2019年度から数えると月1,510円増、年18,120円増という事実に驚かれるかもしれません。
●保険料の額は経済に連動して毎年増減している
実は、国民年金保険料は、17,000円でその水準が固定されています。しかし、これはあくまで2004年度価格であるため、物価や賃金の伸びを反映した「保険料改定率」を乗じて、実際の保険料額が算出されているのです。
【国民年金保険料の算定】
実際の国民年金保険料額=17,000円×保険料改定率(※)
(※)保険料改定率=前年度保険料改定率×名目賃金変動率(物価変動率×実質賃金変動率)
●2026年度の保険料額は2024年の物価に基づいて決定
物価変動率には「前々年の物価変動率」、実質賃金変動率には「5年度前から3年度前までの3年度平均」が用いられます。2026年度の国民年金保険料が2025年1月に決まる理由は、保険料額が発表された同じ日に、2024年平均の全国消費者物価指数(生鮮食品を含む総合指数)が総務省から公表され、2026年度の保険料額算定に必要な経済指標がそろったためです。
2026年度の保険料算出に用いられる保険料改定率は、2025年度の保険料改定率1.03に、「物価変動率:+2.7%(2024年)」および「実質賃金変動率平均:-0.4%(2021~2023年度)」を乗じた1.054。そして、17,000円にこの1.054を乗じて算出された17,920円が、2026年度の国民年金保険料となります。
●国民年金保険料は何年で元が取れるのか?
年金は老齢期の所得を保障する保険とはいえ、「7年で1.8万円増」という保険料の推移を目の当たりにすると、何歳まで長生きすれば元が取れるのか気になりますよね。
2025年度の国民年金保険料17,510円を、20歳から60歳を迎えるまでの40年間納めた場合の支払総額は約840万円。それに対して、2025年度にもらえる基礎年金額は83.2万円(月69,308円)と、約10年で元が取れる計算です。基礎年金の半分は国が負担していること、75歳より長生きするとお得であることを考えると、多くの人にとっては保険料を払うことで将来得られるメリットの方が大きいと言えるでしょう。
国民年金保険料のお得な納付方法をチェックしよう
国民年金保険料の納付は、「納付書払い」のほかに、「口座振替」や「クレジットカード納付」にも対応していることを、みなさんはご存じでしたか。口座振替やクレジットカード納付は、金融機関等に行く手間が省けて、納め忘れが防げる点が大きなメリットです。また、クレジットカード納付の場合、カード会社やカードの種類によっては、納付額に応じたポイントが付与(還元)される点も注目を集めています。
●「口座振替×2年前納」で最大17,010円の割引
国民年金保険料はさらに、前納期間に応じた割引額を確認しましょう。毎月納付は、どの納付方法を選択しても納付額は同じですが、前納額は「納付書払い・クレジットカード納付」と「口座振替」で異なる点に注意してください。口座振替の方が、他の2つの納付方法よりも割引率が高く、2年前納だと約1ヶ月分安くなります。
<国民年金保険料の1回あたり納付額および割引額(2025年度・納付方法別)>

厚生労働省「令和7年度における国民年金保険料の前納額について」より筆者作成
●前納はいつまでに申し込めばいい?
納付書払いの場合には、4月初旬に届く納付書に書かれた納付期限までに、納付を済ませなければなりません。具体的納付期限は、「6ヶ月前納」は4月末日および10月末日、「1年前納」は4月末日です。なお、「2年前納」は、毎年2月1日から原則3月末までの期間に、年金事務所に申出書を提出のうえ、1年前納と同様に4月末日が納付期限となります。
口座振替およびクレジットカード納付による前納(6ヶ月前納、1年前納、2年前納)は、従来、2月末日(6ヶ月前納の場合には2月末または8月末)必着で申し込む必要がありましたが、2024年3月からいつでも申し込めるようになりました。
●2025年1月から新たに追加「2年前納(4月開始)」にも注目
口座振替およびクレジットカード納付については、2025年1月から新たに「2年前納(4月開始)」が追加された点も注目です。
通常の「2年前納」は、手続き後の初回振替時に、当月分から翌年度3月分(13~24ヶ月分)の保険料をまとめて振替が行われます。一方、「2年前納(4月開始)」は、初回振替時から当年度の3月分までは、1ヶ月分ずつ振替(割引なし)を行いながら、初めて迎える4月末にまとめて2年分の振替を行うものです。
<口座振替における初回振替時の振替対象期間>

日本年金機構「口座振替でのお支払い」より筆者作成
通常の「2年前納」は、日本年金機構の事務処理がいつ行われるかで、初回の振替の時期(と前納月数)が決まってしまう問題点が指摘されていました。その意味でも、年金事務所の事務処理に左右されることなく、直近の4月に確実に24ヶ月分の振替が行われる「2年前納(4月開始)」は、計画の立てやすさが大きなメリットと言えるでしょう。
税金の面からも家計の経済的負担を最適化しよう
国民年金保険料は、確定申告や年末調整で、その支払った金額のすべてを所得から控除(社会保険料控除)することができ、税負担の軽減につながります。「2年前納」や「2年前納(4月開始)」は特に、納めた年にその全額を所得から控除できる点も見逃せません(各年に控除するのも可)。
社会保険料控除は、納税者本人の分だけでなく、生計を一にする配偶者やその他親族のために支払った分も、対象に加えることができます。したがって、(第1号被保険者かどうか問わず)高所得の家族がまとめて納付することは、国民年金保険料の負担を実質的に減らすうえで重要な工夫と言えるでしょう。大学生の子どもに係る国民年金保険料を親が代わりに支払って節税を受けるケースもその一つです。
納付が困難な人は免除・猶予・学生納付特例制度を活用しよう
国民年金保険料は、納付対象月の翌月末日までに納めなければなりません。例えば、2025年3月分の国民年金保険料の納付期限は、2025年4月30日(水)が納付期限です。この納付期限から2年を経過すると、時効で支払いができなくなる点に注意してください。
納付が困難な場合には、納付の免除もしくは猶予の手続きを行うことで、その承認を受けている期間も、老齢基礎年金や障害基礎年金、遺族基礎年金を受給するために必要な資格期間に算入してもらえます。これは、申請により在学中の保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」も同じです。老齢基礎年金に満額が反映されるためには10年以内の追納が必要となりますが、もらえない事態は回避できる免除・猶予の手続きは、ご自身や家族の身を守ることにつながります。
<受給資格期間および老齢基礎年金額への反映(納付状況別)>

日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」より筆者作成
出産の予定がある人は「産前産後期間の保険料免除制度」をチェック
国民年金第1号被保険者が出産をする場合、出産予定日または出産日の前月から4ヶ月間(多胎妊娠の場合には3ヶ月前から6ヶ月間)、国民年金保険料の納付が免除されることをご存じですか。
例えば、単胎妊娠で出産予定日が2025年10月4日なら、2025年9月から12月までの4ヶ月分70,040円(17,510円×4ヶ月)の納付が免除されるので、忘れずに手続きを行いましょう。この制度によって免除された期間は、保険料を納付した期間として老齢基礎年金の受給額に反映されるため、追納等は必要ありません。
<産前産後期間の保険料免除制度のイメージ>

筆者作成
この免除制度に係る届け出は、出産予定日の6ヶ月前から可能で、期限が定められていない点が特徴です。したがって、制度適用の対象となる2019年2月1日以降に出産した人で、すでに国民年金保険料を納めた人も、届け出を行えば還付(もしくは未納分への充当)が受けられます。
国民年金保険料の値上がりをチャンスに変えよう
今回は、近年値上がりが続く国民年金保険料について解説をしました。2024年度の国民年金保険料には、2022年の歴史的な物価上昇が反映されたことで、負担感が増したという人も多いかもしれません。そして、2024年度から2026年度はさらに1.2万円増となることが明らかになった今こそ、国民年金保険料の納め方を見直すチャンスです。国民年金や税のルールを上手に活用しながら、家計の最適化を目指しましょう。
【関連記事もチェック】
・厚生年金「夫16万円・妻10万円」、夫が亡くなったら妻の年金はいくらになるのか
・ねんきん定期便(年金定期便)「放置」絶対ダメ!届いたらすべきたった1つの行動
・【知らないと大損】年金受給者が確定申告で得する8つのケース
・国民年金保険料「40年間全額免除」だと、年金はいくらもらえるのか
・【知らないと大損】年金生活者の医療費控除「10万円」超えてなくても還付される

神中 智博 ファイナンシャルプランナー(CFP®)
1992年宮崎県生まれ。関西学院大学会計大学院を修了後、NTTビジネスアソシエ西日本で、NTT西日本グループの財務や内部統制等の業務に従事。2022年10月に兵庫県神戸市で独立系FP事務所ライフホーカーを開業し、現在に至る。家計相談に加えて、公的年金や確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)を活用した資産形成に関するテーマを中心に、執筆・講演活動も展開。「老後不安バスター」として、だれもが老後に向けて自信を持てる社会を目指して奮闘している。CFP®(日本FP協会認定)の他、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、1級DCプランナー、企業年金管理士(確定拠出年金)、一種外務員資格等を保有。
X(旧Twitter)→https://twitter.com/lifehawker

この記事が気に入ったら
いいね!しよう