23/10/18
退職金「一時金受取」と「働きながら年金受取」、手取りで多いのはどちらなのか
退職金制度は主に4種類!企業年金や共済制度なども知っておこう
退職金とは、社員の退職時に、入社からの長期にわたる勤務期間に対して支払われる報酬のこと。給与や賞与に比べて非常に高額になるため、老後資金の大きな柱となります。
退職給付制度は、退職一時金と企業年金の2つに大別されます。退職金は退職一時金制度が代表的で、退職時に一括で受け取るものです。厚生労働省の2018年「就労条件総合調査」によると、退職金給付制度を導入している約7割がこの制度のみを導入しています。
一方で企業年金制度は、会社が外部の運営機関などと連携して運営している制度を指します。会社や個人の負担により、公的年金に上乗せする形で年金を支給する仕組みとなっています。
主に「確定給付企業年金」「企業型確定拠出年金」「退職金共済制度(中小企業退職金共済など)」の3種類があります。複数導入している企業もありますので、勤務先の導入状況を確認しましょう。
会社の退職金制度をチェック
会社がどのような制度を導入しているか知るには、就業規則をチェックするか、総務・人事部署に尋ねればOKです。退職金制度を設けている場合は就業規則に記載することが義務付けられていますので、従業員なら誰でも閲覧が可能です。
「定年後のお金の不安がなくなる本」(晋遊舎)より
退職金制度が導入されている企業は、「退職金規程(退職規定)」などの項目名で記載されています。そこで、金額や計算方法、対象者などの詳細が確認できます。
退職一時金は全額一括で受け取るのが一般的。企業年金は「一時金」「年金」「一時金と年金の併給」の3種類があります。
「定年後のお金の不安がなくなる本」(晋遊舎)より
退職金は「一時金」と「年金」、手取り面でどっちがお得か考える
退職金には全額一括でもらう「一時金」受け取りと、分割受給する「年金」受け取りがあることを解説してきましたが、どれを選ぶかで退職金の総額やかかる税金は異なりますので、慎重な選択が求められます。
「定年後のお金の不安がなくなる本」(晋遊舎)より
一時金の場合「退職所得控除」を受けられ、課税対象となる退職所得を大幅に減らせます。勤続年数が多い人ほど、控除額が増える仕組みとなっています。控除額が退職金より大きければ、税金がまったくかからない場合も珍しくありません。
年金受け取りは、受け取っている間に会社が1〜2%程度の利息をつけてくれるので、額面上の退職金額が一時金よりも大きくなる傾向があります。
しかし年金受け取りに適用される「公的年金等控除」は、一時金受け取りの「退職所得控除」より控除額があまり大きくないので、課税される可能性が大きく、税負担が高くなってしまう場合が多いので注意したいところです。
社会保険料負担は、一時金受け取りの場合はないですが、年金受け取りにはある点にも留意しましょう。
「一時金で受け取る」「年金で受け取る」「併用する」の3つの受け取り方の手取り合計を試算してみましょう。
前提条件は次の通りです。
・東京都文京区在住、38年間勤続で退職金は2,000万円
・60歳から64歳までは年収300万円で勤務、協会けんぽに加入
・公的年金は年180万円
・退職年金は10年間で受け取る(予定利率1.0%)
・所得控除は基礎控除、社会保険料控除、所得金額調整控除のみ
「定年後のお金の不安がなくなる本」(晋遊舎)より
一時金のみの受け取りの場合、60歳時に退職金の受給をまるまる一括で行い、「退職所得控除」の適用を受けます。本ケースでは控除額が退職金額を上回り、税金がゼロとなっています。
年金のみの受け取りの場合、「公的年金等控除」が適用されます。給与とまとめて税金が計算され、一時金のみの場合とは対照的に、退職金にある程度の税金がかかるので、手取りは少なくなってしまうことがわかります。
併用する場合、「退職所得控除」が一部適用される分だけ、年金受け取りのみの場合よりも手取りが増えています。すべてを一括で受け取るのに資金管理の面で不安を感じているのであれば、部分的に年金受け取りに回すのもアリです。
『定年後のお金の不安がなくなる本』 頼藤太希 監修
『定年後のお金の不安がなくなる本 』(晋遊舎)
定年前後は、会社も役所も教えてくれない、知らないと損するお金に関することがたくさんあります。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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