23/07/22
定年後の収入に占める年金の割合は?
公的年金は生きている限り受け取れる保障。老後の生活の基盤となるお金ですが、豊かな老後生活を送りたいならば、年金以外の収入で上乗せできる何かで準備したいものです。というのも、年金だけで生活する高齢世帯は、「生活が苦しい」と感じている人が少なくないからです。今回は、厚生労働省のデータを確認し、老後生活を少しでも豊かにするための方法を紹介します。
定年後の収入に占める年金の割合は?
厚生労働省の「国民生活基礎調査」は、国民全体の所得や年金、健康、介護などの実態を調査したものです。
2022年(令和4年)の国民生活基礎調査によると、高齢者世帯の平均所得は318.3万円です。
高齢者世帯というのは、65歳以上の夫婦だけで生活している世帯、または、65歳以上の夫婦と18歳未満の未婚の子どもが一緒にくらしている世帯をいいます。高齢者世帯の所得の318.3万円は、高齢者世帯以外の世帯(65歳未満の世帯)の平均所得665.0万円と比較すると、所得自体が47.8%と大きく減少します。年金受給者のうち、約半数を占める44.0%が年金だけで生活しています。
●収入が年金のみの世帯は44.0%
厚生労働省「国民生活基礎調査の概況」(2022年)より
また、高齢者世帯の平均所得318.3万円のうち、62.8%にあたる199.9万円が年金での収入。残りの収入は稼働所得80.3万円、仕送りや企業年金・個人年金などが19.0万円、財産所得が17.2万円などとなっていますので、パートやアルバイトなどで得ている人が多いようです。
若いうちは、老後になれば年金で生活するのが当たり前と思っていますが、実際に年金だけでは、豊かな生活を送るには十分とはいえません。年金だけでどの程度の生活を確保できるのかしっかり理解しておくことが大切です。
この調査では、「各種世帯の生活意識」も調査しています。生活意識とは、生活にゆとりがあるか苦しいかを調べるものです。高齢者世帯の場合「大変苦しい」「やや苦しい」は48.3%に上りました。全世帯が51.3%ですので、
年金100%では家計はまかなえない?
総務省が2022年(令和4年)に実施した「家計調査」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の健康保険や税金などを含めた毎月の支出の平均は26万8508円。一方、年金給付(社会保障給付)の平均は22万418円ですので、4万8090円が不足します。この不足分は、若いうちから準備しておくか、働いて得るかでまかなわなくてはなりません。
●夫婦高齢者無職世帯の家計収支
総務省「家計調査報告(家計収支編)」2022年(令和4年)平均結果の概要より
なお、上図の消費支出の内訳を見てみると「住居費:6.6%」は金額にすると約1万5000円ですので、少ないと思われるかもしれません。この理由としては、高齢者の持ち家割合が高いからだと考えられます。したがって、賃貸物件に住んでいる方であれば、さらに住居費がかかってくるといえるでしょう。
近年、インフレの影響で食料品・日用品・電気代などの生活するための費用が値上がりしています。しかし、年金額はそれに伴い、上がるといえない状況です。確かに、公的年金は生きている限り受け取れるため、老後の生活を支えるものとしては、頼りになる制度といえます。しかし、今後も年金だけで家計を賄おうとするのは難しいのではないでしょうか…。
老後生活を少しでも豊かなものにしたいと思うのであれば、年金を少しでも増やすように努めたり、老後に向けた資産形成をしたりするようにしましょう。そのためには次のような準備が大切です。
老後を豊かなものにするための準備①:年金を未納のまま放置しない
老後の年金の基礎部分となる国民年金の年額は、満額79万5000円です(2023年度)。国民年金を満額受け取るには、原則20歳~60歳までの40年間(480ヶ月)、保険料を全額納める必要があります。
現状が会社員や公務員であれば、国民年金が含まれた厚生年金に加入しているため、20歳~60歳まで勤務すれば満額受け取れます。しかし、転職などでブランクができたり、会社員から自営業へと働き方を変えたりして、年金の手続きが遅れることで、年金保険料を未納のままになってしまうことがあります。万が一、放置したままであれば、保険料納付期間が少なくなり、国民年金を満額受け取ることはできなくなります。
もし、転職、働き方の変更などがあるようなら、年金保険の支払い忘れがないか注意をしましょう。また、資金の余裕がなく、年金保険料の支払いができないなど困ったことがあれば、保険料が軽減されたり、免除、猶予されたりする免除制度を活用することもできます。種類によっては、保険料を支払わなくても全額~半分を支払ったものとして反映されるものもあります。お住いの市区町村役所の国民年金窓口や最寄りの年金事務所などへ相談してみましょう。くれぐれも、年金保険を未納のまま放置しないよう気をつけましょう。
老後豊かなものにするための準備②:じぶん年金で上乗せを準備する
年金をしっかり納め、満額の年金を確保した後は、じぶん年金で以下のような上乗せを準備しましょう。
●iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)
iDeCoは自分で出した掛金を運用して老後の年金を作る制度です。60歳以降国民年金に加入する場合(会社員・公務員・国民年金の任意加入者)は65歳未満まで掛金を出すことができます(その他の方は60歳まで)。
iDeCoでは、毎月一定の金額を積み立て、あらかじめ用意された預金・保険・投資信託などの金融商品を自ら運用します。月額5000円からはじめることができ、上限は、加入者の職業等で違いがあります。
iDeCoのメリットは、拠出、運用、受取のタイミングで税金の節約ができること。より効率よく自分年金を準備できます。ただし、iDeCoは老後資金を準備するのが目的となっているため、原則60歳まで引き出すことはできない点は注意が必要です。
●国民年金基金
国民年金基金は、フリーランスや自営業者などの方々が、年金を上乗せするための制度です。公的年金と同じく、終身にわたり年金を受け取れます。
国民年金基金の掛金は、iDeCoのように全額所得から控除できるため、所得税や住民税を安くできます。月額掛金の上限は6万8000円までとなっています(iDeCoと併用する場合は、iDeCoと国民年金基金の合計で6万8000円まで)。
このように、税制メリットがあり効率的に老後資金を準備できる制度を活用することで、老後のお金の不安を解消できます。
老後豊かなものにするための準備③:少なくとも70歳までは働いてお金を増やす
年金が65歳からもらえるといって、リタイアを考える人もいます。その時点までに老後資金が貯まっているのであればいいですが、そうでないのであれば、働いて収入を確保した方がよいでしょう。幸い雇用側も、働く意欲があれば、年齢に関係なくという企業が増えています。
ただし、週5日稼働は体力的にキツいかもしれません。もちろん、働けるならばそれでもいいのですが、難しければ週3~4日などと減らすのもいいでしょう。今までの経験をムダにせず、自分のために活かしましょう。
厚生年金保険は、70歳まで加入できます。その間の年金額は、厚生年金を掛けた期間(前年9月から当年8月まで)を反映して、毎年10月分(12月受取分)から改定されます。
老後豊かなものにするための準備④:年金を繰り下げる
厚生年金や国民年金は原則65歳からもらうことができます。しかし、もらう時期を繰り下げることで、1か月あたり0.7%年金額を増やすことができます。仮に、70歳まで繰り下げた場合は42%、最長75歳まで繰り下げれば84%も多くの年金がもらえます。
たとえば、65歳から月額14万円の年金をもらえる人が繰り下げ受給をした場合、
・70歳まで繰り下げ:14万円×1.42=19万8800円
・75歳まで繰り下げ:14万円×1.84=25万7600円
という具合に、年金額を増やせます。
ただし、年金を繰り下げしている間は、年金がもらえません。厚生年金と国民年金の両方を繰り下げるのはムリという場合もあるでしょう。その場合は、両方ではなくどちらか一方だけを繰り下げることも可能です。年金の繰り下げは、出来る範囲で検討するとよいでしょう。
まとめ
公的年金は、しっかり掛けておけば終身にわたり受け取ることができます。しかし、老後を豊かに生活したいと思えば、公的年金のみでは心もとないでしょう。きちんと年金保険料を払ったうえで、早いうちからiDeCoや国民年金基金などを利用して効率的に老後資金を準備しましょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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