24/11/21
【新NISA】投資信託の積立日は何日がベストなのか 過去データの検証で驚きの結果に
新NISAで投資信託に積立投資をしている人の中で、「毎月積立」をしている人がおそらくほとんどでしょう。毎月一定の積立日に自動的に投資信託を買い付けるようにしておけば、手間なく長期・積立・分散投資ができ、お金を堅実に増やすことができます。
ところで、この毎月、積み立てをする日、「積立日」はいったい何日がベストなのでしょうか。積立日の違いによって運用成績に違いがあるのでしょうか。気になったので過去データを元に詳しく検証してみました。
毎月積立のタイミングの意見はいろいろあるが…
毎月積立のタイミングをめぐっては、いろいろな意見があります。たとえば、
・月初がいい
・月初や月末よりも10日・15日といった中旬がいい
・五十日(ごとうび・5と10のつく日)ではなく中途半端な日がいい
という具合です。
また、
・積立日はいつでも大差ない
・長期間だとパフォーマンスの差はなくなるから気にしなくていい
という意見もたびたび目にします。
かつて「月初の株高」が話題になりました。2016年7月から2018年2月まで、月の初めの日経平均株価やTOPIXが20か月連続で前日より上昇したことを指す言葉です。
月初にたくさんの買いが集まったら、その買いによって投資信託の基準価額が上昇してしまうでしょう。そこで、高値づかみを防ぐために中途半端な日を積立日に設定すれば、パフォーマンスがよくなる…と考えるのは、一見自然なように思えます。
しかし、本当にそうなのでしょうか。そもそも、これらはきちんと検証して確認したのでしょうか。この後ご紹介する結果を見れば、いかにテキトーな情報なのかがわかります。
筆者は、過去データを使って、投資信託の積立日はいつがベストなのか検証してみました。
検証にあたってのデータを確認
今回の検証では、新NISAで毎月1万円、後述する投資信託に積立投資を行なったときの資産総額を比較します。具体的には、次のような条件を設定して検証しました。
●毎月の積立日
・5日
・10日
・15日
・20日
・25日
毎月の積立日は「5日」「10日」「15日」「20日」「25日」とします。これは、日数の少ない2月や年末年始を考慮してのものです。1日や30日はもちろん、中途半端な日でも検証はしていますが、そこまで大きな差がなかったため、この5日分の結果をお見せします。
●検証期間
・直近5年(2019年10月1日〜2024年9月30日)
・直近10年(2014年10月1日〜2024年9月30日)
・直近20年(2004年10月1日〜2024年9月30日)
2004年10月1日〜2024年9月30日のデータを用い、直近5年、直近10年、直近20年投資をした場合の資産総額を計算します。
●投資ファンド
今回の検証では、以下のファンドに積み立てたとして計算・検証しています。
・S&P500:iシェアーズ米国株式(S&P500)インデックスファンド(指数:S&P 500)
・国内株式:DC日本株式インデックスファンドL(指数:TOPIX)
・外国株式:野村外国株式インデックスファンド(確定拠出年金)(指数:MSCIコクサイ)
S&P500は米国株、TOPIXは日本株、MSCIコクサイは日本を除く先進国の株式の動向を表す株価指数です。ただ、株価指数に直接投資することはできません。S&P500の株価指数の推移で検証している動画も見かけましたが、為替レートの変動が考慮されていませんでした。鵜呑みにするのは危険です。
実際に投資をする際にはファンドを利用するので、各指数と連動を目指すインデックスファンドに投資をした場合で検証を行いました。
なお、S&P500に連動を目指すインデックスファンドで20年以上運用実績があるファンドはありません。投信総合検索ライブラリーによれば、2010年10月22日設定の「上場インデックスファンド米国株式(S&P500)」が最も古いのですが、ETFなので、設定日が2013年9月3日の「iシェアーズ米国株式(S&P500)インデックスファンド」を採用しました。
ただ直近10年間の検証はできるのですが、やはり直近20年間の検証もしたいところです。そこで、MSCIコクサイを追加しました。 MSCIコクサイは、S&P500や「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(オルカン)が連動を目指す全世界株価指数「MSCI ACWI」と似たような値動きをします。同指数に連動する「野村外国株式インデックスファンド(確定拠出年金)」は20年以上運用実績があるファンドです。
また、外国株だけでなく、日本株でも積立日による違いがあるのか検証すべく、20年以上運用実績があるファンド「DC日本株式インデックスファンドL」を採用しました。
積立日による資産総額の違いは?
以上の条件で、新NISAで毎月1万円、毎月5日・10日・15日・20日・25日に積立投資を行なったときの資産総額を比較します。積立元本総額は5年で60万円、10年で120万円、20年で240万円です。投資の結果、資産総額がいくらになったのかを積立日別・指数別・積立期間別にまとめたのが、次の表です。
<積立日による資産総額の違いの計算結果>
(株)Money&You作成
表内、黄色にしたところが資産総額の一番多い日で、灰色にしたところが資産総額の一番少ない日です。
表を見ると、積立日を25日に設定した場合に一番資産総額が多くなっていることがわかります。
S&P500の場合、資産総額が一番多くなったのは5年・10年とも25日。反対に一番少なくなったのは10日です。興味深いのはその差額で
・5年:4万2819円
・10年:12万6109円
になっています。
数千円〜1万円程度の差であれば「気にしなくていい」といってもいいかもしれませんが、積立日ひとつで12万円も違うとなれば、気になってしまうでしょう。
TOPIXもほぼ同様で、資産総額が一番多くなったのは、5年の場合は20日で、10年・20年の場合は25日です。一番少なくなったのは15日です。差額も、
・5年:2万2740円
・10年:5万5651円
・20年:17万5932円
となっています。
TOPIXは15日の資産総額が一番少ないと紹介しましたが、10日も同様にいまいちです。また、5年では20日と25日を見比べると、150円くらいしか差がありませんので、概ね25日が一番多いと言って問題ないでしょう。
MSCIコクサイでも、資産総額が一番多いのが25日、少ないのは10日です。そして、最大値と最小値の差額は、
・5年:3万9925円
・10年:11万355円
・20年: 43万9759円
になっています。
20年で約44万円も違うのですから、「積立日はいつでも大差ない」「長期間だとパフォーマンスの差はなくなる」という情報は、全く信用しない方がいいでしょう。
積立投資で大事なのは、よく「タイミング」よりも「タイム」、つまり継続することだといわれますが、これだけ資産総額に差が出るならば、積立日の重要性も増します。
25日に設定するのがベターです。
なんとなくの「直感」と「事実」が異なることがよくあります。世界で300万部の大ベストセラー「ファクトフルネス」(ハンス・ロスリング著)でも、そういった直感や思い込みを乗り越えて、データを基に世界を正しく見る習慣が紹介されています。
本稿は筆者がデータに基づいて事実を正しく検証していますので、お役立ていただければ幸いです。
クレカ投資は毎月の積立日が決まっている
新NISAで積立投資するにあたって、クレジットカードで投資ができる「クレカ投資」を利用している方も多いでしょう。ひとたび設定すれば注文や入金の手間も省けるうえ、各社のポイントももらえるのでとてもお得です。
しかし、クレカ積立は積立日がほぼ決まっています。
<クレカ積立のできる主な証券会社の積立日>
●SBI証券
毎月3日から9日の中から選択可能
●楽天証券
投信積立をはじめて設定した日に応じて決定
・2021年6月19日以前:毎月1日
・2021年6月20日~2024年8月24日:毎月8日
・2024年8月25日以降:毎月12日
●マネックス証券
毎月20日の3営業日前(15日〜17日頃)
●auカブコム証券
第1営業日
●PayPay証券
毎月28日
SBI証券は積立日を選択することができるものの上旬、楽天証券も以前に設定された方は上旬で、2024年8月25日以降に設定する方は12日です。マネックス証券は20日の3営業日前ですから中旬です。auカブコム証券は第1営業日ですので上旬です。
PayPay証券は毎月28日ですから「25日」に一番近い日です。
今回の検証結果をクレカ投資で生かしたいと考えるのであれば、PayPay証券でクレカ投資をするのがよいかもしれません。
とはいえ、すでに他の証券会社でクレカ投資をしている方もいるでしょう。その場合は、お使いの金融機関に「積立日を変更できるようにしてほしい」と要望を出してみるのもよいでしょう。皆さんの声が多くなれば、対応してくれるかもしれません。
口座引き落としの積立日は自由に設定可能
クレカ積立ではなく、口座引き落としで毎月積立を行う場合は、各証券会社ともクレカ積立よりも自由に積立日を設定できるようになっています。
<口座引き落としの毎月積立の積立日>
●SBI証券
毎月1日~30日、または「月末」から選択可能
●楽天証券
毎月1日〜28日から選択可能
●マネックス証券
毎月1日~31日から選択可能
●auカブコム証券
毎月1日~31日から選択可能
●PayPay証券
毎月1日~31日から選択可能
楽天証券以外は、毎月1日〜31日の中から積立日を選択できます。とはいえ、楽天証券も1日〜28日までの間で設定できるので、特に不自由はありません。上記証券会社であればどこでも25日を選ぶことができます。
ちなみに、29日〜31日に設定した場合、2月は積立日がなくなってしまいますが、SBI証券・マネックス証券・PayPay証券の場合は「末日」、auカブコム証券は「翌月の第1営業日」に買付が行われます。
口座引き落としで購入する場合は、クレカ積立のようにポイントをもらうことができません。しかし、20年で数十万円の差がつくとなれば、ポイントをもらうよりお得になることも出てくるでしょう。あえてクレカ投資を使わずに、積立日を25日に設定するのも一案です。
どうしてもポイントが捨てがたいというのであれば、楽天証券の「楽天キャッシュ」で投資信託の積立を行う方法はあります。
楽天キャッシュは楽天銀行の口座や楽天カードなどからチャージできる電子マネー。毎月5万円まで投資信託の積立ができ、積立額の0.5%の楽天ポイントがもらえます。楽天キャッシュの積立日も毎月1日〜28日の間から選べますので、毎月25日に投資することも可能。5万円ずつ投資することで、毎月250ポイントずつ貯めることができます。
投資信託の積立日は「25日」がベスト 「10日」「15日」がワースト
筆者もはじめ、世の中の情報を見て「上旬がいいのか」「キリの悪い数字がいいのか」などと思っていたのですが、実際に検証してみると、結論は違いました。
2004年10月1日〜2024年9月30日のデータを検証すると、新NISAのお得な積立日は「25日」。投資期間が長期間になるほど「10日」「15日」との差は開く結果になりました。
なお、あくまでも過去のデータに基づく結果であり、将来の投資成果を予想・保証するものではありません。その点を踏まえ、投資行動に生かしていただければ幸いです。
今回の記事の内容は動画でも紹介しています。ぜひご覧ください。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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