23/01/12
つみたてNISA、制度開始2018年から5年間でもっとも儲かった商品は?
つみたてNISAは、投資で得られた利益が非課税にできる、堅実にお金を増やすのに適した制度です。つみたてNISAのスタートは2018年1月からですので、2023年1月でスタートから丸5年経過したことになります。
2024年から制度が大きく拡充されることも決まり、今後ますます注目されるNISAですが、実際、つみたてNISAを利用してきた人は、いくらお金を増やせたのでしょうか。今回は、つみたてNISAで購入できる投資信託のなかから、5年間でもっとも儲かった商品を調べてみました。
2018年初から2022年末の5年騰落率の第1位は90%超え
金融商品の価格は、日々上下しています。金融商品が、一定期間のはじめと終わりでいくら値上がり(値下がり)したかを表す割合を騰落率といいます。たとえば、1年間で1万円の商品が1万1000円に値上がりしたら、1年間の騰落率は+10%。逆に9000円に値下がりしたら−10%というわけです。
つみたてNISAの対象商品は、2023年1月10日時点で217本あります。
投資信託協会のウェブサイトを活用して、2018年1月から2022年12月までの5年間運用した場合の「5年騰落率」を調べてみました。なお、つみたてNISAスタート後(2018年1月1日以降)に登場した商品は除外しています。
その結果は、次のとおりです。
●つみたてNISA対象投資信託の5年騰落率ベスト5
第1位:iFree S&P500インデックス 99.24%
第2位:上場インデックスファンド米国株式(S&P500)98.31%
第3位:米国株式インデックスファンド 97.17%
第4位:iシェアーズ米国株式(S&P500)インデックスファンド 96.20%
第5位:楽天・全米株式インデックスファンド 93.27%
つみたてNISA、5年間でもっとも儲かった商品は「iFree S&P500インデックス」でした。
5年騰落率の上位の投資信託は、いずれも90%以上と大きな値上がりを見せています。第1位から第4位までは、すべて米国の株価指数「S&P500」との連動を目指す投資信託。第5位も「CRSP US Total Market Index」という、米国の大中小型株4000銘柄を網羅する株価指数と連動を目指す投資信託です。この5年は、米国株が強かったというわけです。
2022年の株式市場は、2021年までの好調とは一変して下落相場入りした1年でした。それでも、5年間で見ると騰落率は上昇しています。
もっとも、国内株など、他の資産に投資する投資信託でも5年騰落率は総じて上昇しています。もちろん、投資信託は元本保証のない投資商品です。しかし、2018年からつみたてNISAに取り組んできた方の多くは、利益を出せている状態だといえるでしょう。
同様に、3年騰落率・10年騰落率も調べてみました。
つみたてNISA対象商品の3年騰落率のベスト5は次のとおりです(※2020年1月1日以降に登場した商品を除外しています)。
●つみたてNISA対象投資信託の3年騰落率ベスト5
第1位:eMAXIS Slim米国株式(S&P500) 65.49%
第2位:iFree S&P500インデックス 64.87%
第3位:上場インデックスファンド米国株式(S&P500)64.83%
第4位:SBI・V・S&P500インデックス・ファンド 64.74%
第5位;米国株式インデックスファンド 63.73%
つみたてNISA、2020年〜2022年の3年間でもっとも儲かった商品は「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」でした。こちらも、S&P500に投資する投資信託ですが、保有中にかかる手数料(信託報酬)が0.0968%と安いのが特徴です。第4位の「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」も、信託報酬が0.0938%と、0.1%を切る安さです。
ちなみに、10年騰落率のベスト5は次のとおりです(※2013年1月1日以降に登場した商品を除外しています)。
●つみたてNISA対象投資信託の10年騰落率ベスト5
第1位:上場インデックスファンド米国株式(S&P500) 439.84%
第2位:フィデリティ・米国優良株ファンド 359.83%
第3位:年金積立Jグロース 327.36%
第4位:東京海上セレクション・外国株式インデックス 318.75%
第5位:外国株式指数ファンド 314.09%
(以上、データは投資信託協会「投信総合検索ライブラリー」より)
株式の騰落率の場合は、「昨日は下がった」「今日は上がった」などと、1日単位の騰落率が話題になりますが、投資信託では長期間コツコツと投資をすることが多い(つみたてNISAはまさにそうした投資ですね)ので、長期間の騰落率を見ることが大切です。長期間かけて大きな成果を出せているという結果は、ひとつの安心材料かもしれません。
積立投資は値下がりも味方にできる
騰落率は、「はじめと終わり」だけの価格を切り取って割合で示しています。ですから忘れがちですが、運用の期間中、マイナスになる場面もあります。
たとえば、2020年2月ごろから、株価は新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受けて値下がりしました。また、2022年はロシアのウクライナ侵攻、世界的なインフレとそれを抑えるための利上げなどの影響を市場が色濃く受けました。
しかし、それでも持ち直してきたのは、そこで投資をやめずに続けてきたからです。
実は、同様のことが投資する私たちにもいえます。仮にこの5年間、この値下がりを気にせず月1万円ずつ投資をしていたとしたら、どうなっていたでしょうか。
下のグラフの青い線はS&P500という米国株式の指標です。S&P500の値動きに連動する投資信託もたくさんあります。このS&P500に、2018年から2022年までの5年間、月1万円ずつ投資をした場合、資産はいくら増えたかを示したものです。
●毎月1万円ずつS&P500に積み立てると?(2018年1月〜2022年12月)
(株)Money&You作成
積立元本は5年間ですから、合計60万円です。それに対して資産総額は、2020年3月時点で積立元本より少なくなっていることがわかります。また、2022年はS&P500も軟調で、資産総額も上下していることが見てとれます。しかし、それでも2022年12月時点で資産総額は約81万円になっているのです。単純計算ですが、約21万円増えています。
このような結果になる理由は、「ドルコスト平均法」にあります。積立投資をすると、ドルコスト平均法の効果が期待できます。
ドルコスト平均法は、定期的に一定額の金融商品(ここでは、投資信託)を購入しつづける投資法です。こうすることで、投資信託の価格(基準価額)が安いときにはたくさん買い、高いときには少ししか買わないことになるため、平均購入単価を下げることができるのです。
●ドルコスト平均法のイメージ
(株)Money&You作成
たとえば、投資信託の値段(基準価額)が図のように1万円→7000円→9000円と動いたとします。このとき、毎月一定額ずつ積み立てていれば、基準価額が安くなったときにはたくさん購入できます。その結果、1口あたりの平均購入単価が下がり、再び値上がりしたときに利益が出やすくなるのです。
2020年のコロナショックの際にも、同様のことが起こったということです。確かに、一時的に値下がりしましたが、そこでもコツコツと投資していたために、値上がりしたときの利益が大きくなったのです。ここに、つみたてNISAが暴落を乗り越えて含み益を出すことができるワケがあるのです。
つみたてNISAは2023年スタートがおすすめ!
ドルコスト平均法は、投資期間が長いほどその威力を発揮します。市場は、上昇と下落を繰り返し、ときにはコロナのときのように、大きく下落することもあるでしょう。しかし、ドルコスト平均法を生かし、長期間かけてじっくりコツコツと投資しておけば、その下落から立ち直ったころには利益が大きくなっていることが期待できます。
つみたてNISAにすでに取り組んでいる人は、ぜひこのまま続けていくのがいいでしょう。なにせ非課税期間は20年もあります。2018年に投資した商品も、まだまだ長期間運用できます。
また、2022年12月16日に公表された「令和5年度税制改正大綱」に、2024年からNISA制度が大幅に拡充されることが盛り込まれました。
【2024年からの新NISA】
(株)Money&You作成
新NISAの特徴は、次のとおりです。
●現行の一般NISA・つみたてNISAは2023年末で買付終了
現行の一般NISA・つみたてNISAの買付は、2023年末で終了します。ただし、現行の一般NISA・つみたてNISAで保有していた資産は、2024年以降も現行の非課税期間で保有できます。
●制度の恒久化・非課税保有期間の無期限化
運用益の非課税保有期間は一般NISAが5年間、つみたてNISAが20年間でした。新NISAでは、制度が恒久化。非課税保有期間が無期限になるため、より長期間投資ができるようになります。
●年間の投資枠の拡大・生涯投資枠の新設
現行のつみたてNISAは年40万円、一般NISAは年120万円までですが、新NISAでは「つみたて投資枠」で年120万円、「成長投資枠」で年240万円、合計で年間360万円まで投資できるようになります。
また、新たに生涯にわたる非課税限度額(生涯投資枠)が設けられます。生涯投資枠の上限は1800万円(うち成長投資枠は1200万円)です。なお、商品を売却して生涯投資枠に空きが出た場合、その空きを利用して新しく非課税の投資をすることができます。
●投資商品
つみたて投資枠ではつみたてNISA、成長投資枠では一般NISAと同様の商品を購入できます。ただし、安定的な資産形成のため、成長投資枠では「高レバレッジ投資信託」などの商品は投資対象から除外されます。また、回転売買(金融機関が手数料を取るために何度も売買を繰り返させること)の規制が行われます。
新NISAが2024年からだからといって、2024年まで待つ必要はありません。2023年からつみたてNISAをスタートさせ、投資に長く取り組むのがおすすめです。2023年に投資した商品は、2042年まで新NISAとは別枠で、非課税で持ち続けることができるからです。
つみたてNISAをさっそくスタートして、長期でしっかりお金を貯めていきましょう。
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畠山 憲一 Mocha編集長
1979年東京生まれ、埼玉育ち。大学卒業後、経済のことをまったく知らないままマネー本を扱う編集プロダクション・出版社に勤務。そこでゼロから学びつつ十余年にわたり書籍・ムック・雑誌記事などの作成に携わる。その経験を生かし、マネー初心者がわからないところ・つまずきやすいところをやさしく解説することを得意にしている。2018年より現職。ファイナンシャル・プランニング技能士2級。教員免許も保有。趣味はランニング。
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