22/09/09
投資信託は買うときに「いくらで買えるのかわからない」のはなぜか
リスクをおさえた投資を考える投資家に人気の投資信託ですが、実は購入の申込みをした時点では、いくらで買えるのかわかりません。
それは、投資信託が国内外の株式、債券など複数の投資先を組み合わせた金融商品であることが関係しています。株式や債券は常に値動きをしているので、注文をした時点では投資信託の売買価格が決まっていないからです。詳しくみていきましょう。
投資信託の基準価額は1日1回しか動かない
たとえば株式投資の場合、株の値段を表す株価は取引状況などにより常に変わります。そして、売買の注文をしたタイミングの株価で、取引が行われます。1日の間で売買をして利益を上げるデイトレーディングも可能です。株式投資は、投資家がリアルタイムの値動きに合わせて売買ができる投資方法なのです。
一方、投資信託は1本でさまざまな資産に投資しています。国内外の株式や債券のほか、不動産や金などへの投資を組み合わせている商品もあります。どの資産にどのくらい投資しているかは、商品によって異なります。投資先それぞれの資産は常に値動きをしているので、値上がりしたものもあれば、値下がりしたものもあります。
それらの終値が出てから、投資信託の値段を計算します。投資信託の値段のことを基準価額といいます。投資信託の基準価額は1日に1回しか動きません。
投資信託の基準価額は、翌日以降に公表されます。
つまり、証券会社のホームページなどでチェックした投資信託の基準価額は、今日のものではないということです。さらに、今日申込みをしても、価格が決まるのは申込みのあと、その日の取引を締めきって終値が出てからの計算ですから、申込みの時点ではいくらで買えるのかがわからないのです。
投資信託の3つの大切な日
投資信託の取引をするにあたっては、「申込日」「約定日」「受渡日」の3つの日が関わります。違いを知っておきましょう。
●投資信託の「申込日」
申込日とは、投資信託の売買注文を出した日のことです。
投資信託の注文申込受付は一般的に、営業日の15時までとなっています。15時を過ぎると申込日は翌営業日になるので、当日の注文にしたい場合には注意が必要です。
なお営業日とは、証券取引所が開いている日のこと。土日はお休みですから、金曜日の15時以降の投資信託の注文は翌営業日の月曜日が申込日になります。
●投資信託の「約定日」
約定日とは、申し込んだ取引が成立した日のことです。
国内の金融商品(株・債券など)を投資対象としているものであれば、申込日と約定日は同じ日になることがほとんどです。
投資信託の売買価格は約定日の基準価額になります。当日までの基準価額の値動きをみて、15時までに注文を出せば、予測に近い基準価額で約定される可能性が高いでしょう。
ただし、約定日は投資信託によって異なりますので注意が必要です。
海外の資産を対象としている投資信託の場合には、申込の翌営業日が約定日になり、市場が日本時間の夜間に動くこともあります。約定する基準価額が予測とかなり異なる可能性がありますので、余裕を持った申込みを心掛けましょう。
●投資信託の「受渡日」
受渡日とは、投資信託の売買が決済される日、つまり実際に現金が動く日のことです。
とはいえ、投資信託の申込みの時点で口座に資金がないと注文は出せない仕組みです。受渡日までに資金を準備できればいいわけではありません。
投資信託の受渡日は、一般的に約定日の2~5営業日後ですが、投資信託によって異なります。
売却の場合は、実際に現金が入ってくる日を確認しておくと安心です。いそぎ現金が必要であったとしても、約定日から受渡日までに土日や祝日が挟まれると現金化は遅くなります。ゴールデンウィークや年末年始、海外資産に投資しているものであればクリスマス時期など、約定日から1〜2週間後になる場合もあり得ます。
年末の投資信託の取引には要注意
投資信託を年末に売買するときに、気を付けたいことがあります。
投資信託を年末に購入する場合に気を付けたいのは、NISA口座を利用しているケースです。
NISA口座は非課税で投資できる投資金額の上限(非課税投資枠)が1年間に120万円まで(一般NISAの場合)となっています。しかし、NISA口座の非課税投資枠は、受渡日を基準にして利用されるしくみです。「NISA口座の非課税投資枠が余っているから年内に使い切ろう」と思って年内に注文をしても、受渡日が年明けになると、年内の非課税投資枠ではなく、翌年の非課税投資枠が消費されてしまいます。結果、年内の非課税投資枠は使いきれなくなってしまうのです。上でも紹介したとおり、受渡日は一般的に約定日の2〜5営業日後ですから、余裕を持って注文するようにしましょう。
投資信託を年末に売却する場合には、所得税に要注意。所得税は、その年の1月1日から12月31日までの収入がもとになって計算されます。投資信託を売却して得た利益にかかる所得税も、受渡日が年明けになると翌年分として計算されます。NISA口座の場合は税金がかかりませんし、特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合は利益から税金が源泉徴収されるので、大きな影響はありません。しかし、その他の場合は納める所得税も変わり、課税所得金額によっては税率もかわります。
申込日、約定日が年内だから収入も年内、とは限らないので気をつけてください。
まとめ
投資信託の基準価額は1日1回しか動かず、約定日の基準価額で取引されます。そのため、投資信託を申し込んだ日にはいくらで買えるかわからないことを紹介しました。投資信託の申込日から受渡日までには、通常数日のタイムラグがあります。余裕を持って売買するようにしましょう。
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タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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