22/09/03
年金が月20万円もらえる場合に天引きされる金額はいくら?税金、社会保険料、手取り金額を計算してみた
いよいよ始まった年金生活。しかし実際に銀行に振り込まれた年金を見て「なんだか少ない?」と思う方も多いようです。そのわけは、年金からも税金・社会保険料が天引きされることを知らないからかもしれません。
今回は、年金から天引きされる税金・社会保険料の計算と、年金を月20万円もらえる場合の手取りの年金額を紹介します。
年金からも税金や社会保険料が天引きされる
会社員は、会社から支給される額面の給与から税金や社会保険料が天引きされ、残ったお金を手取りとして受け取っています。年金も、会社員と同じで、支給される額面の年金から税金や社会保険料が天引きし、残ったお金を手取りとして受け取ります。
●年金の「額面」と「手取り」のイメージ
(株)Money&You作成
年金から天引きされる税金・社会保険料には、
・所得税
・住民税
・国民健康保険料または後期高齢者医療保険料
・介護保険料
があります。
年金の額面から、これらの税金・社会保険料が天引きされた金額が、2か月に1度、2か月分まとめて銀行口座に振り込まれます。
75歳未満は国民健康保険料が天引きされ、75歳以上になると後期高齢者医療保険料が天引きされます。
こうしてみると、年金からも結構いろいろなお金が引かれるものですね。
では、年金が月20万円(年間240万円)もらえる人の場合、年金から天引きされる税金・社会保険料はいくらか、そして手取りはいくらになるのかをみてみましょう。
国民健康保険料はいくら? どう計算する?
国民健康保険料を計算するにあたっての条件は、次のとおりです。
【条件】
・東京都文京区在住、65歳〜74歳、扶養親族無し
・年金は年間240万円、公的年金等の雑所得は130万円
・基礎控除額は43万円
・算定基礎額は130万円−43万円=87万円
年金収入は雑所得です。公的年金等を受け取った場合、収入金額から公的年金等控除を差し引いて雑所得を計算します。65歳以上で、年金等の収入の合計が240万円の場合、公的年金等控除は110万円です。つまり、年金240万円−公的年金等控除110万円=公的年金等の雑所得130万円となります。
国民年金保険料を算出する際には、雑所得130万円から基礎控除額43万円を引いた87万円を算定基礎額として使用します。
●国民健康保険料はいくら?
(株)Money&You作成
国民健康保険料には、基礎分保険料と支援金分保険料があります。それぞれ、所得に応じて負担する「所得割」と、加入者全員が一律で負担する「均等割」があります。
東京都文京区在住、扶養親族なしの場合で上図の式に当てはめて計算すると、国民健康保険料は13万7428円となります。なお、所得割にかける料率(所得割率)は、お住まいの自治体により異なります。
介護保険料はいくら? どう計算する?
介護保険料を計算するにあたっての条件は、次のとおりです。
【条件】
・東京都文京区在住、65歳以上、扶養親族無し
・年金は年間240万円、公的年金等の雑所得は130万円
介護保険料を算出する際には、所得を使用します。介護保険料は本人・世帯の住民税の課税状況や所得金額に応じて段階的に変わります。東京都文京区の場合、介護保険料は15段階に分けられています(自治体により、段階の区分は異なります)。
●介護保険料はいくら?
(株)Money&You作成
今回の例では、介護保険料は第7段階、9万300円とわかります。
所得税・住民税はいくら? どう計算する?
所得税・住民税を計算するにあたっての条件は、次のとおりです。
【条件】
・東京都文京区在住、65歳〜74歳、扶養親族無し
・年金は年間240万円、公的年金等の雑所得は130万円
・所得控除は基礎控除、社会保険料控除のみ
・社会保険料=国民健康保険料+介護保険料=22万7728円
今回は、所得控除は基礎控除と社会保険料控除のみとして計算しています。また、社会保険料は上で計算した国民健康保険料(13万7428円)と介護保険料(9万300円)の合計、22万7728円とします。
●所得税・住民税はいくら?
(株)Money&You作成
所得税は課税所得の5%で2万9600円、住民税は課税所得の10%(所得割)と5000円(均等割)を合計して6万9200円。合計で9万8800円です。
以上から、年金の手取りを計算すると、
手取り=額面−所得税・住民税・社会保険料
=240万円−32万6528円
=207万3472円(年金の手取り年額)
となります。月換算すると年金の手取り金額は17万2789円、年金額面に占める手取りの割合はおよそ86.4%です。年金の額面からおおよそ15%程度引かれてしまう、というわけです。
後期高齢者医療保険料はいくら? どう計算する?
75歳になると、国民健康保険から脱退して後期高齢者医療制度に加入します。後期高齢者医療保険料も確認しておきましょう。
後期高齢者医療保険料を計算するにあたっての条件は、次のとおりです。
【条件】
・東京都文京区在住、75歳以上、扶養親族無し
・年金は年間240万円、公的年金等の雑所得は130万円
・基礎控除額は43万円
・算定基礎額は130万円−43万円=87万円
●後期高齢者医療保険料はいくら?
(株)Money&You作成
国民健康保険料とは数式の数字が多少異なります。とはいえそれほど大きな違いではありません。試算の結果、後期高齢者医療保険料は12万8963円。国民健康保険料より少し安くなります。
以上から、75歳以上の年金の手取りを計算すると、
手取り=額面−所得税・住民税・社会保険料
=240万円−31万9263円
=208万737円(年金の手取り年額)
となります。月換算すると年金の手取り金額は17万3394円、年金額面に占める手取りの割合はおよそ86.7%です。後期高齢者医療制度に加入した分だけ社会保険料の負担が減っています。
まとめ
今回の条件で、年金を月20万円もらえる場合の手取りの年金額を計算すると
・65〜74歳:年207万3472円(月17万2789円)
・75歳以上:年208万737円(月17万3394円)
となることがわかりました。
今回のケースでは、年金の額面から税金や社会保険料が約15%引かれている計算です。
なお、税金・社会保険料は他の所得・年齢・家族構成・お住まいによって変わります。ご自身の正確な情報は年金事務所・年金相談センターなどでご確認くださいね。
今回の内容は動画でも紹介しています。ぜひご覧ください。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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