19/10/21
医療費控除とセルフメディケーション税制はどう違う? セルフメディケーション税制が有利な人は
2017年よりスタートしたセルフメディケーション税制。年間1万2000円を超える市販薬の購入で税金を安くできるため、従来の医療費控除よりハードルが低いものになっています。
今回は、セルフメディケーション税制は医療費控除とどう違うのか、どちらがお得なのかを考えてみます。
医療費をたくさん払うと税金が安くなる!医療費控除とは?
医療費控除は所得控除の一種。所得控除とは税金の計算上所得から差し引きできるものなので、所得控除の金額が大きいほど、所得税や住民税は安くなります。
医療費控除では、1年の間に自分や家族のために負担した医療費が10万円を超えた場合に、超えた金額分、最大で200万円の控除が受けられます。ただし、保険金(例えば入院給付金、手術給付金など)、損害賠償金などにより医療費の補填を受けた場合には、その分は負担した医療費に含まれません。
厳密には、医療費10万円超で医療費控除の対象になるのは、総所得金額200万円以上の人です。総所得金額200万円未満の人は、医療費が総所得金額の5%を超えれば医療費控除が受けられます。
市販薬の購入なら少額でOK!セルフメディケーション税制とは?
セルフメディケーション税制は医療費控除の特例です。自分や家族のために薬局やドラッグストアで対象となる一般用医薬品(※いわゆる市販薬、OTC医薬品ともいう)を購入した場合、その金額が年間合計で1万2000円を超えると、セルフメディケーション税制の適用が受けられます。
セルフメディケーション税制による控除額は、市販薬購入額の合計から1万2000円を差し引きした金額で、上限額は8万8000円です。医療費控除と同様、保険金等により補填を受けた金額も差し引きします。
なお、セルフメディケーション税制は自らで積極的に健康保持・増進を行っている人を優遇するものなので、健康診断の受診などの要件もあります。
セルフメディケーション税制が有利なのはこんな人
セルフメディケーション税制と医療費控除は併用ができません。以下、セルフメディケーション税制の要件をみたしているものと仮定し、医療費控除とセルフメディケーション税制のどちらの適用を受けるべきかを考えてみます。
①年間の医療費の合計が10万円以下の人
年間の医療費が10万円以下なら、通常の医療費控除は受けられません。セルフメディケーション税制の適用を受けましょう。
②年間の医療費の合計が10万円超18万8000円以下の人
この場合には、セルフメディケーション税制と医療費控除のそれぞれの控除額を比較して、どちらが得かを考えます。
例1)市販薬の購入額が5万円、年間医療費合計が15万円のケース
セルフメディケーション税制の控除額
5万円-1万2000円=3万8000円
医療費控除の控除額
15万円-10万円=5万円
以上より、医療費控除の方がお得です。
例2)市販薬の購入額が6万円、年間医療費合計が14万円のケース
セルフメディケーション税制の控除額
6万円-1万2000円=4万8000円
医療費控除の控除額
14万円-10万円=4万円
以上より、セルフメディケーション税制の方がお得です。
例3)市販薬の購入額が11万円、年間医療費合計が16万円のケース
セルフメディケーション税制の控除額
11万円-1万2000円=9万8000円→※控除上限額8万8000円
医療費控除の控除額
16万円-10万円=6万円
以上より、セルフメディケーション税制の方がお得です。
③年間の医療費が18万8000円を超えている人
セルフメディケーション税制の控除額上限は8万8000円です。市販薬をたくさん購入しても、セルフメディケーション税制では8万8000円までしか控除は受けられません。
一方、医療費控除の上限額は200万円です。年間の医療費が18万8000円を超えていれば、医療費控除の控除額は8万8000円を超えることになり、医療費控除を受けた方が得になります。
確定申告の前に確認を!
セルフメディケーション税制も医療費控除も、年末調整では適用が受けられないので、自分で確定申告する必要があります。両方の要件をみたす場合には、どちらが得かを確認してから確定申告しましょう。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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