19/07/01
知らないと損!? 退職・転職時の税金・保険・年金、注意すべき点まとめ
退職が決まると、気持ちが次の新しい生活に向いてしまう方もいるかもしれません。でも、ちょっと待ってください。退職のときには、税金・保険・年金といったお金に関わる変更の手続きがいろいろあります。中には知らないと損してしまう注意点も……。
「こんなはずではなかった」と後悔しないためにも、今の会社に迷惑をかけないためにも、ぜひ押さえておきましょう。
すぐ転職するかしないかで手続きが変わる
退職の意思を会社に伝えたあとは、退職日を決め、退職届を提出し、必要な引き継ぎや有休消化をしたあとに退職、という流れが一般的です。法的には退職の意思を伝えた2週間後には退職できるルールですが、こうした会社での手続きがあるので、退職まではおおよそ1〜3ヶ月程度かかるものだと思っておくのがいいでしょう。
税金・保険・年金の手続きは、これに合わせて行います。一部の手続きは退職後に行う場合もあります。
注意したいのが、すぐ転職するかしないかによって手続きが異なることです。手続きは厳密で、退職日の翌日に次の会社に入社する場合と1日でもブランクができる場合とで違ってきます。
以下税金・保険・年金の手続きを、「すぐに転職する場合」と「すぐには転職しない場合」に分けて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
退職時の「税金」:所得税や住民税の手続きが必要
●すぐに転職する場合
①退職する会社から「源泉徴収票」をもらい、転職する会社に提出する
②市町村から住民税の明細と納付書が送られてくるため、転職する会社に提出して給与天引きの手続きを行う
●すぐには転職しない場合
① 退職する会社から「源泉徴収票」をもらい、翌年に確定申告をする
(退職と同年内に再就職した場合は不要)
②住民税は退職する月によって手続き方法が異なるので、確認して対応する
・1~5月に退職:最後の給与や退職金などから残った税金を一括して支払
・6~12月に退職:一括または分割して自分で納付
所得税は、退職する会社では概算で収めていますので、正しい税額を計算する必要があります。同年内に再就職した場合は、転職先に源泉徴収票を提出すると、会社が年末調整という手続きで計算してくれます。しかし、すぐに転職しない場合、転職が翌年以降になった場合は、自分で確定申告を行い、税額を計算しなければなりません。
住民税は、退職日より1ヶ月以内に転職するならば、転職先で給与から天引きしてもらうことができます。そうでない場合、5月までに退職するときは最後の給与の手取り額が少なくなりがちなので要注意。6月以降に退職するときは一括か分割か自分で選んで納付します。
退職時の「保険」:社会保険の手続きを忘れずに
●すぐに転職する場合
①退職する会社から「雇用保険被保険者証」をもらい、転職先に提出する
②退職する会社に「健康保険証」を被扶養者分も含めて返却する
●すぐには転職しない場合
①退職する会社から「雇用保険被保険者証」と「離職票」をもらう
②退職する会社に「健康保険証」を被扶養者分も含めて返却する
③ハローワークに「雇用保険被保険者証」と「離職票」を提出。休職の申し込みをし、基本手当の受給資格を得る。
④退職後の健康保険は「国民健康保険」または「任意継続被保険者制度」のどちらかを利用するかを決める(任意継続被保険者制度を利用する場合は、退職後20日以内に手続きをする必要がある)。
すぐに転職する場合は、雇用保険被保険者証を転職先に提出すれば、あとは転職先で社会保険の手続きをしてくれます。
働く意思はあってもすぐには転職しない場合、失業保険を受け取ることができるので、ハローワークで手続きを行います。手続きの期限は退職日から1年以内。自己都合退職の場合、3ヶ月と7日経過後から最大で150日分の給付が受けられます。ただし、1年たつと給付日数が残っていても給付が受けられなくなるので、必要な書類が揃ったら速やかに手続きしましょう。
また、健康保険の切り替えも必要です。原則、退職日の翌日から国民健康保険に加入することになるのですが、退職後2年間は退職した会社の社会保険を続ける任意継続被保険者制度も使えます。ただし、退職後20日以内に手続きすること、保険料がほぼ倍増すること(これまでは会社が半分負担してくれていた)には注意が必要です。なお、家族の扶養に入ることで、保険料を抑えられる場合もあります。
退職時の「年金」:企業年金や確定拠出年金の手続きも
●すぐに転職する場合
①退職する会社から「年金手帳」を返却してもらい、転職先に提出する
②転職前に加入していた年金制度があれば、転職先の「企業年金」「確定拠出年金」について確認した後に移管手続きを自分で行う
●すぐには転職しない場合
①退職する会社から「年金手帳」を返却してもらう
②市町村役場または年金事務所へ行き、国民年金の変更手続きをする
すぐに転職する場合は、年金手帳を転職先に提出すれば、あとの手続きは会社がしてくれますので簡単です。退職した会社で企業年金や確定拠出年金などに加入していた場合は、転職先の会社の制度を確認して移管手続きを行う必要がありますので、確認しておきましょう。
すぐには転職しない場合は、年金の切り替えが必要です。国民年金に加入することになりますが、こちらも家族の扶養に入ることで、保険料を抑えられる場合があります。
まとめ
退職時の手続きは正直手間がかかるため、面倒くさいと思われる方もいるかもしれません。しかし、「立つ鳥あとを濁さず」です。手続きをおざなりにしていると、これまでお世話になった会社にも手間をかけることになりかねません。なにより、あなた自身が損をする可能性もあるのですから、ここはしっかりと手続きをするようにしましょう。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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