25/12/16
【基準額変更】年金受給者が住民税非課税世帯となる「年金+給与」はいくらまで?

「年金をもらいながら働きたいけれど、税金が増えるのが心配」「せっかくの非課税世帯のメリットを失いたくない」――そんな悩みをお持ちの方に朗報です。働きながら非課税世帯を維持する選択肢があるのです。年金と給与を組み合わせて、思っている以上に多くの収入を得ながら、住民税非課税世帯でいられる可能性があります。今回は、年金受給者が住民税非課税世帯となる年金+給与の金額はいくらまでなのか、紹介します。
住民税非課税世帯になると、受けられるメリットとは?
住民税非課税世帯とは、世帯全員が住民税を課税されていない世帯のことです。住民税非課税世帯に該当すると、以下のようなさまざまな経済的メリットを受けることができます。
(1)国民健康保険料の減額
(2)介護保険料の減額
(3)高額療養費制度の自己負担限度額の軽減
(4)各種給付金の対象
これらのメリットは家計にとって大きな助けになるため、「自分は住民税非課税世帯に該当するのか」を知っておくことは非常に重要です。
住民税非課税世帯の基準とは?
住民税が課税されない基準は、お住まいの地域によって異なりますが、基本的な考え方は共通しています。
●単身者の場合
多くの自治体では、前年の合計所得金額が45万円以下であれば住民税が非課税になります。基準額は自治体によって異なり、35万円や42万円の地域もあります。
●夫婦や扶養家族がいる場合
扶養家族がいる場合の非課税基準は次の計算式で求められます。
35万円×(本人+扶養家族の人数)+21万円+10万円
例えば、夫婦2人世帯(配偶者を扶養している場合)なら
35万円×2人+21万円+10万円=101万円
つまり、合計所得金額が101万円以下なら住民税非課税となります。
年金受給者の「155万円・211万円の壁」とは?
年金受給者の場合、「公的年金等控除」という特別な控除があります。この控除額によって、実際の年金収入と所得金額には大きな差が生まれます。
●65歳以上の単身者の場合
65歳以上の方が年金だけで生活している場合、公的年金等控除は110万円となります。住民税非課税となる合計所得金額が45万円以下なので、逆算すると、
年金収入155万円-公的年金等控除110万円=所得45万円
年金収入が155万円以下なら住民税非課税となります。
●65歳以上の夫婦2人世帯の場合
夫婦2人で配偶者を扶養している場合、非課税となる合計所得金額は101万円以下でした。したがって、
年金収入211万円-公的年金等控除110万円=所得101万円
年金収入が211万円以下なら住民税非課税となります。
年金と給与を両方もらっている場合はどうなる?
ここからが本題です。近年、年金をもらいながら働き続ける方が増えています。では、年金と給与の両方がある場合、給与収入の上限はいくらまでなら住民税非課税世帯でいられるのでしょうか。
●給与所得控除とは
給与収入がある場合、「給与所得控除」という控除が適用されます。令和7年(2025年)以降、給与所得控除額は65万円に引き上げがされました。例えば、給与収入が75万円の場合、給与収入から給与所得控除を差し引いて給与所得を算出すると
給与収入75万円-給与所得控除65万円=給与所得10万円
給与所得は10万円となります。
●所得金額調整控除でさらに最大10万円控除できる
ここで重要なのが、令和2年(2020年)から始まった「所得金額調整控除」という制度です。所得金額調整控除は、給与収入が850万円以下で、かつ年金収入がある65歳以上の方を対象に、給与所得から最大10万円を控除するというものです(控除額は給与所得と年金所得のいずれか少ない方の金額が上限となります)。
以上より、年金受給者が住民税非課税世帯となる年金+給与の金額が計算できます。
●単身者の場合:年金+給与で230万円まで非課税に!
65歳以上の単身者(合計所得金額45万円以下で住民税非課税)の場合、具体例で見てみましょう。
例:
年金155万円+給与75万円=合計230万円の場合
・給与の所得計算
給与収入75万円-給与所得控除65万円=給与所得10万円
ここから所得金額調整控除10万円を引く10万円-10万円=0万円
・年金の所得計算
年金収入155万円-公的年金等控除110万円=年金所得45万円
合計所得0万円+45万円=45万円
合計所得がちょうど45万円になるため、住民税非課税となります。
つまり、年金155万円と給与75万円を組み合わせることで、合計収入230万円でも住民税非課税を維持できるのです。
●夫婦2人世帯の場合:年金+給与で516万円まで非課税に!
夫婦2人世帯の場合も同様に計算できます。ここでは、夫婦それぞれが年金と給与を受け取り、それぞれが独立して住民税非課税の判定を受けるケースを見てみましょう。
例:
夫 年金211万円+給与75万円=合計286万円の場合
・給与の所得計算
給与収入75万円-65万円=給与所得10万円
ここから所得金額調整控除10万円を引く10万円-10万円=0万円
・年金の所得計算
年金収入211万円-公的年金等控除110万円=年金所得101万円
・合計所得0万円+101万円=101万円
夫の合計所得がちょうど101万円になるため、夫は住民税非課税となります(ただし、配偶者を扶養している場合の非課税限度額101万円が適用される前提です)。
妻 年金155万円+給与75万円=合計230万円の場合
・給与の所得計算
給与収入75万円-65万円=給与所得10万円
ここから所得金額調整控除10万円を引く10万円-10万円=0万円
・年金の所得計算
年金収入155万円-公的年金等控除110万円=年金所得45万円
・合計所得0万円+45万円=45万円
妻の合計所得が45万円以下になるため、妻も住民税非課税となります。
このように、夫婦それぞれが年金と給与を受け取る場合、夫の年金211万円と給与75万円、妻の年金155万円と給与75万円を組み合わせて、世帯合計収入516万円でも住民税非課税世帯を維持できる可能性があるのです。
ただし、ここまで説明してきた金額は、あくまで一般的な自治体の基準である住民税が非課税となる合計所得金額45万円を前提にしています。実際には、お住まいの自治体によって基準額が異なるため、具体的な金額を知りたい場合は、お住まいの市区町村の税務課に確認することをお勧めします。
収入だけでなく「無理のない範囲で」働くことも大切
年金を受給しながら働く場合、所得金額調整控除のおかげで、以前よりも多くの収入を得ながら住民税非課税世帯を維持できるようになりました。年金生活に入っても、「少し働きたい」「社会とつながっていたい」という方は多いでしょう。この制度を理解しておくことで、働き方の選択肢が広がります。
ただし、収入だけを基準に働き方を決めるのではなく、ご自身の健康状態や生活スタイルも考慮しながら、無理のない範囲で働くことが何より大切です。気になる方は、お住まいの自治体や税理士、社会保険労務士などの専門家に相談してみることをお勧めします。
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KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。
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