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22/04/07

相続・税金・年金

定年後の健康保険「任意継続」新ルールで保険料が約34万円削れるのは本当か

定年後の健康保険「任意継続」新ルールで保険料が約34万円削れるのは本当か

春は新生活のスタートの季節でもあります。年度末を迎え、今までの仕事を退職する方や、これから働き方が変わるという方も少なくないでしょう。
会社を退職するときにはさまざまな手続きが必要となりますが、退職前にぜひ考えておきたいのが健康保険。転職や再雇用などで次の会社が決まっている場合は、新しい勤務先で切り替え手続きをするため、問題ありませんが、退職して自営業になる、専業主婦(夫)になるなどの場合にはいずれもご自身で切り替え手続きが必要です。

2022年1月、健康保険の任意継続被保険者制度の改正が行われたことで、退職後に収入がなければ、国民健康保険への切り替えで保険料の節約につながるケースがあります。具体的な事例を交えて解説します。

退職後の健康保険、選択肢は3つ

再就職や転職をすると、次の就職先で健康保険に加入することになりますが、退職して自営業になる、専業主婦(夫)になるなどの場合は、次の3つのなかから、ご自身で選んだ健康保険に加入することになります。

①在職中の健康保険を任意継続する
②自治体が運営する国民健康保険に新規加入する
③家族が加入している健康保険の被扶養者になる

③は例えば妻が退職した場合、生計が同じである配偶者(夫)が加入している健康保険の被扶養者になるというイメージです。この場合、被扶養者が増えても夫が支払う保険料の負担は変わりませんので、実質負担はゼロとなります。そのため被扶養者になれる条件に当てはまるのであれば、こちらを選択するのが一番賢明です。

ただし、被扶養者になるには、被扶養者になる人の所得制限があります。
配偶者や子ども、親などの扶養に入る条件は、収入※が130万円未満(60歳以上または障害年金を受け取る人は180万円未満)で、かつ、被保険者の年収の2分の1未満であることなど厳しい基準が設けられています。(※収入は過去の実績ではなく、今後1年間の見込み収入で判定)

また、税金上の扶養判定とは異なり、雇用保険の失業給付や傷病手当金、障害年金なども収入にカウントされるため、失業給付を受けている間は家族の扶養に入ることができないことも多くあります。

選択が難しい退職後の健康保険加入

前述の③の要件を満たさないと分かれば、「①在職中の健康保険を任意継続する」か、「②自治体が運営する国民健康保険に新規加入する」のどちらかを選択することになります。ところが、この2つの制度は、給付内容の充実度や保険料を決定する仕組みが異なり、単純に比較することができないため、「自分はどちらを選ぶべきか」判断に迷ってしまう方も多いと聞きます。

在職中に健康保険組合に加入していたのであれば、①健康保険の任意継続の方が国民健康保険よりも付加給付等があり、より給付内容が充実しています。しかしながら、退職後に再就職をしないのであれば、多くの方が安定的な定期収入を得にくい状況にありますので、両方の保険料額を比較して「より保険料負担が少ない方に加入する」という基準で加入する制度を選ぶ方が現実的には多い印象です。

●2つの制度の給付内容や保険料を決定する仕組みの違い

筆者作成

2つの制度に共通するのは、病院の窓口での自己負担が3割(70歳の誕生月まで。現役並み所得の人を除く)である点と、1カ月の医療費の自己負担が一定額を超えたときには、超えた分が払い戻される高額療養費制度が利用できる点です。

一方で、保険料を決定する仕組みは、それぞれの制度によって異なります。
健康保険の任意継続の場合は、退職時または平均の標準報酬月額に基づいて決定され、原則として年度がかわっても変わらず一定となります(次年度に保険料率や平均の標準報酬月額に変更があると保険料額が変わることもありますが、あっても変更幅はごくわずかです)
また、在職中であれば、決められた保険料のうち、会社が保険料の半分を負担(労使折半)してくれていましたが、任意継続になると、全額が自己負担になります。つまり、退職直前に天引きされていた健康保険料の2倍程度が、毎月支払う保険料額となるイメージです。

これに対して国民健康保険を選択した場合には、保険料のうちの所得割額が、前年所得に応じて決定されます。そのため、年度がかわると保険料賦課の対象となる所得も1年ずれることになり、所得額に大きな変動がある場合には、保険料の所得割額も大きく変更されることになります。

PayPay証券

国民健康保険への切り替えを認めなかったこれまでの任意継続

以上のような仕組みの相違から、退職後に収入がない場合の次年度の保険料額は、健康保険の任意継続ではふつう前年度と変わらないのに対し、国民健康保険の保険料額は前年度よりも大きく低下する傾向にあるのです。

ところが、2021年までは健康保険の任意継続から国民健康保険への切り替えが容易ではありませんでした。健康保険法では、「国民健康保険に加入するために健康保険の任意継続をやめること」を認めていなかったためです。そのため、一旦任意継続を選択すると2年間は同制度をやめられず、年度がわりの保険料軽減のチャンスを逸するケースが少なからず見られました。

もちろん、2年が経過する前にどうしても任意継続をやめたければ、「意図的に保険料を滞納し、資格喪失する」という方法をとれば実質的には可能でした。任意継続の保険料は当月10日が納付期限日であり、その日までに保険料を納めなければ、翌11日付で自動的に資格喪失となるルールがあるためです。

とはいえ、滞納はあまり気分のよいものではありませんし、特に任意継続の保険料を前納(6ヵ月分や1年分の保険料をまとめて早く払うことにより、支払い額を通常よりも安く抑えること)してしまった場合、後になって「国民健康保険に切り替えれば保険料負担が軽減できる」と気付いても、すでに年間の保険料を支払い済みであればその間は保険料の滞納が発生しません。

その結果、任意継続をやめられず、国民健康保険への移行ができないという事態に陥り、「意図的に保険料を滞納して任意継続をやめる」ということは実質的に不可能でした。

新ルールの「任意脱退」を活用して保険料支出の軽減を

2022年1月からは健康保険の任意継続に関する大きな制度改正が行われています。そのうちのひとつが、任意継続の資格喪失の要件に「任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を保険者に申し出た場合」が加えられたことです。

つまり、任意継続を開始してから2年が経過していなくても、保険料負担が軽くなった国民健康保険に加入するために、いつでも任意継続をやめることができるようになりました。

以下の条件で、保険料を試算してみましょう。

【前提条件】
・Aさん(夫)はパート勤めのBさん(妻)との2人暮らし
・Aさんは、60歳で定年退職後、失業保険を受給しつつ、よい再就職先を探そうと思っているがしばらくゆっくりする予定
・Bさんのパート勤務はAさん退職後も継続する予定(年収変わらず)
・在職中:夫が在職中の給与収入は600万円、妻(扶養家族)の収入は100万円
・退職後:夫が退職後の収入は100万円(雇用保険の基本手当※)、妻の収入は100万円
※夫の基本手当「賃金日額7,096円×所定給付日数150日」(約106万円相当)を参考値とし、約100万円で試算。
・賃金日額:2021年8月1日現在の基本手当日額上限

●ケース別 2年間の総支払保険料の比較

(任意継続の保険料は「協会けんぽ」、国保は東京・世田谷区をモデルに試算)

筆者作成

ケース1は国民健康保険、ケース2は任意継続を2年間行った場合の保険料の合計を示しています。ケース1は約68.4万円、ケース2は約82.4万円となっています。それに対し、ケース3のように1年目に任意継続、2年目に国民健康保険に切り替えると、保険料の合計は約48.6万円となります。

この恩恵を特に受けられると思われるのが定年退職者です。
定年退職者は、一般的に収入が高いため、国民健康保険を避けて、任意継続を選ぶ傾向がありました。その場合、法改正前は、一度任意継続を選ぶと2年間はその健康保険に加入し続けなくてはなりませんでした(ケース2)。
法改正後は、健康保険の任意継続を選択した人が退職後に収入が低くなった場合に、年度がかわるタイミングで「退職後1年目は任意継続」で、「2年目は国民健康保険」というように加入制度を切り替えることができるというわけです。今回の例では、約34万円分もの保険料負担を軽減できる結果になりました。

ただし、これはあくまでも参考ですので、自分のケースを試算したい場合は、お住まいの自治体の窓口に相談すると良いでしょう。

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まとめ

今回ご紹介した改正のほか、2022年1月からは、退職時の給与水準が平均よりも高かった任意継続者に対し、健康保険組合が2021年までよりも高額の保険料を徴収できるように制度改正も行われています。

今までは、「定年退職者は収入が高く、国民健康保険より任意継続被保険者が有利」というケースが一般的でしたが、今後はそうとも限りません。制度改正で便利になった半面、退職後の収入の変化による定期的な健康保険の見直しが必要になったといえます。

健康保険の任意継続を選択した人が退職後に収入がない場合は、他にも、「家族が加入する健康保険に被扶養者として加入する」という目的で任意継続を任意脱退することも可能になります。それによって、保険料が削れる可能性もありますので、年度がわりに国民健康保険への切り替えを検討してみることをおすすめします。

KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士

長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。

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