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24/06/23

相続・税金・年金

年収500万円、600万円、700万円がiDeCo満額やると、ふるさと納税の限度額はいくら減るのか

年収500万円、600万円、700万円がiDeCo満額やると、ふるさと納税の限度額はいくら減るのか

ふるさと納税もiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)も、多くの人が利用しているお得な制度です。しかし、ふるさと納税をしている人がiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)を利用すると、ふるさと納税の控除限度額が減ってしまいます。一見、損しているように見えるかもしれませんが、実際のところはどうなのでしょうか?

また、2024年12月にはiDeCoの拠出限度額が一部改正になります。そこで、ふるさと納税とiDeCoの基礎知識をおさらいし、2つを併用するとふるさと納税の控除限度額がどのくらい減るのかを見ていきます。そのうえで、ふるさと納税とiDeCoの併用が本当に損をしているのか検証します。

手取りが増える公的制度「ふるさと納税」「iDeCo」

ふるさと納税とiDeCoを利用すると、所得税と住民税が減額になって手取りが増えます。ではここで、ふるさと納税とiDeCoの概要をおさらいしておきましょう。

●ふるさと納税

ふるさと納税とは、応援したい自治体へ寄附することで「寄附金控除」が受けられる公的制度です。寄附金のうち2000円は自己負担額となり、それを超える分に対して、所得税は所得控除が、住民税は税額控除が受けられます。また、寄附金の使い道は自分で指定することができ、寄附をした地域の特産品を返礼品として受け取ることもできます。自分の好きな自治体や災害を受けた地域を応援するのに活用できるでしょう。

※所得控除とは:課税対象となる合計所得額から一定金額を差し引く制度のこと
※税額控除とは:算出した税額から一定金額を差し引く制度のこと

ただ、寄附をする人の収入や家族構成などによる「控除限度額」があり、その限度額までなら自己負担額の2000円を除いた全額が控除されますが、限度額を超えた分は寄附金控除が受けられません。とはいえ、控除限度額までの寄附なら所得税の還付や住民税の控除を受けられるので、手取りを増やすことができお得です。

●iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)

iDeCoは老後資金を準備するのに活用できる私的年金制度です。自分で運用する商品を選んで申し込み、毎月掛金を拠出して(積み立てて)いきます。
iDeCoには国民年金の種別や企業年金などの加入状況による「拠出限度額」がありますが、次の3つの税制優遇措置が受けられます。

①掛金全額は所得控除となる(小規模企業共済等掛金控除)
②運用益は非課税になる
③年金で受け取ると公的年金等控除、一時金で受け取ると退職所得控除を受けられる

iDeCoは65歳未満(※)であればほとんどの人が加入できます。また、原則60歳までは老齢給付金を引き出すことはできませんが、60歳~75歳までの間に自分のライフプランにあわせて自由に受給時期を決めることができます。さらに、現役時代も掛金が所得控除の対象になるので、手取りを増やせるメリットがあります。

(※)60歳以上65歳未満でiDeCoを始めるには、厚生年金に加入していること、または、国民年金に任意加入していることなどの要件があります。

iDeCoと併用するとふるさと納税の控除限度額はどのくらい減る?

実質、自己負担が2000円で済むふるさと納税の控除限度額は、課税所得を基準に計算されています。そのため、さまざまな控除を受けて課税所得が減ると、ふるさと納税の控除限度額も減ってしまうのです。iDeCoは掛金全額が所得控除になるので、ふるさと納税をしている人がiDeCoを併用したら、結果として課税所得が減ることになります。

では、iDeCoとふるさと納税を併用したら、ふるさと納税の控除限度額はどのくらい減ることになるのでしょうか?そこで、年収500万円、600万円、700万円の場合を例に、
自己負担額が2000円で済むふるさと納税の控除限度額を試算してみました。

<各年収で共通する条件>

・独身
・扶養家族はなし
・社会保険料は年収の15%
・考慮する所得控除は基礎控除、社会保険料控除のみ
・iDeCoには満額加入
①企業年金のない会社に勤める会社員の場合:年間の掛金総額27万6000円
②確定給付企業年金(DB)に加入する会社員の場合:年間の掛金総額14万4000円

・ふるさと納税の控除限度額は、下記の計算式を使用
◎控除限度額=個人住民税所得割額×20%÷{100%-住民税の税率10%-(所得税の税率×1.021)}+2000円

(参考)
・総務省「ふるさと納税ポータルサイト」控除額の計算
・埼玉県日高市 ふるさと納税の上限額の計算方法
・埼玉県志木市 ふるさと納税の上限額について

●年収500万円の会社員

○iDeCoには未加入の場合
ふるさと納税の控除限度額:6万1657円
○iDeCoに加入した場合
ふるさと納税の控除限度額:
① (掛金27万6000円)5万4739円 
②(掛金14万4000円)5万8048円

iDeCoに加入することによって、ふるさと納税の控除限度額が、
① の場合は6918円、②の場合は3609円減額となります。

●年収600万円の会社員

○iDeCoには未加入の場合
ふるさと納税の控除限度額:7万7950円
○iDeCoに加入した場合
ふるさと納税の控除限度額:
①(掛金27万6000円)7万1032円 
②(掛金14万4000円)7万4340円

iDeCoに加入することによって、ふるさと納税の控除限度額が、
① の場合は6918円、②の場合は3610円減額となります。

●年収700万円の会社員

○iDeCoには未加入の場合
・ふるさと納税の控除限度額:10万8928円
○iDeCoに加入した場合
・ふるさと納税の控除限度額:
①(掛金27万6000円)10万994円 
②(掛金14万4000円)10万4789円

iDeCoに加入することによって、ふるさと納税の控除限度額が、
①の場合は7934円、②の場合は4139円減額となります。

どの年収でも、設定した条件下でiDeCoを併用した場合は、ふるさと納税の控除限度額が減ってしまうことがわかりました。

控除限度額が減ると、所得税の還付金や住民税の控除額が減ることになります。そうなると、iDeCoの加入でふるさと納税による節税効果が小さくなってしまい、逆に損をするのではないかと思う人もいるかもしれません。

しかし、ふるさと納税とiDeCoの併用をしても、決して損をするわけではありません。

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結局、課税所得を下げたほうがお得

設定した条件のもと年収500万円、600万円、700万円のいずれの場合も、ふるさと納税とiDeCoを併用したら、ふるさと納税の控除限度額が減額になることがわかりました。
しかし、ここで注目すべきなのは、受けられる所得控除の額なのです。

iDeCoを利用すると「掛金全額は所得控除となる」ことをお伝えしました。今回の試算では、「①企業年金のない会社に勤める会社員がiDeCoに満額加入した場合(年間の掛金総額27万6000円)」「②確定給付企業年金(DB)に加入する会社員がiDeCoに満額加入した場合(年間の掛金総額14万4000円)」という2つの条件を設定していましたね。ここで注目したいのは、iDeCoへの掛金(27万6000円または14万4000円)です。

iDeCoでは掛金全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象となります。そのため、今回の試算では掛金の27万6000円、もしくは14万4000円は全額所得控除となるのです。つまり、iDeCoを利用することでふるさと納税による控除額にプラスして、iDeCoの掛金全額が所得控除に加わるため、税金がさらに減額されることになるのです。

では、ふるさと納税とiDeCoを併用することで、どれくらい税金が安くなるのか、年収500万円の場合で見てみましょう。

●年収500万円の税額を試算

①企業年金のない会社に勤める会社員の場合:iDeCoの掛金総額は27万6000円

○iDeCoには未加入の場合
ふるさと納税の控除限度額:6万1657円

ふるさと納税では、自己負担額の2000円を除いた全額が控除されるので(所得税は所得控除、住民税は税額控除)、寄附額が6万1657円の場合、控除されるのは、以下の金額です。

ふるさと納税による控除額 6万1657円-2000円=5万9657円 …(A)

○iDeCoに加入した場合
ふるさと納税の控除限度額:5万4739円
ふるさと納税による控除額:5万4739円-2000円=5万2739円
iDeCoによる所得控除:27万6000円
控除額の合計 32万8739円 …(B)

(A)と(B)の差額 26万9082円⇒(課税所得は1000円未満切り捨て)26万9000円

ふるさと納税とiDeCo(掛金総額27万6000円の場合)を併用すると、課税所得を26万9000円減らすことができ、これに対する税金が軽減されます。

<軽減される税額>
・所得税(10%):2万6900円
・住民税(所得割10%+均等割5000円):3万1900円
  合計 5万8800円

②確定給付企業年金(DB)に加入する会社員の場合:年間の掛金総額14万4000円

○iDeCoには未加入の場合
ふるさと納税の控除限度額:6万1657円
ふるさと納税による控除額 6万1657円-2000円=5万9657円 …(A)

○iDeCoに加入した場合
ふるさと納税の控除限度額:5万8048円
ふるさと納税による所得控除:5万8048円-2000円=5万6048円
iDeCoによる所得控除:14万4000円
  合計 20万48円 …(B)

(A)と(B)の差額 14万391円⇒(課税所得は1000円未満切り捨て)14万円

ふるさと納税とiDeCo(掛金総額14万4000円の場合)を併用すると、課税所得を14万円減らすことができ、これに対する税金が軽減されます。

<軽減される税額>

・所得税(10%)1万4000円
・住民税(所得割10%+均等割5000円)1万9000円
  合計 3万3000円

つまり、ふるさと納税とiDeCoを併用することで、ふるさと納税のみの場合に比べて、iDeCoの掛金が、
 ①27万6000円の場合:5万8800円
 ②14万4000円の場合:3万3000円
税金が安くなるのです。

なお、年収600万円、700万円の場合も試算してみたところ、税金の軽減額は次のような結果になりました。

・年収600万円の場合:①5万8800円 ②3万3000円 税金が安くなる
・年収700万円の場合:①8万5400円 ②4万6700円 税金が安くなる

いずれの場合もiDeCoを併用すると、ふるさと納税のみの場合に比べて税金が安くなる結果となりました。単にふるさと納税の控除限度額が減ることだけに目を向けるのではなく、結果として税金がどれくらい軽減されるかという点に注目するとよいでしょう。

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2024年12月に実施されるiDeCo改正

毎月掛金を積み立てて老後資金を準備するiDeCoですが、掛金には拠出限度額があることはご存じだと思います。その中で、確定給付企業年金(DB)に加入している人、企業型DCと確定給付企業年金(DB)を併用している人、退職等年金給付制度(共済)に加入する公務員の場合、iDeCoの拠出限度額は1万2000円です。

2024年12月から、これらの確定給付型制度に加入している人の拠出限度額の改正が実施されます。公務員を含むこれらの確定給付型制度に加入する場合の拠出限度額は、1万2000円から2万円に引き上げられます。

ただし、企業型DCの事業主拠出額と、iDeCoや確定給付型の他制度の掛金相当額を合算した額は月額5.5万円を超えることができません。たとえば、企業型DCの事業主掛金と確定給付企業年金(DB)の掛金が合計4万円の場合、iDeCoの掛金限度額は1.5万円(5.5万円-4万円=1.5万円)となります。あるいは、確定給付企業年金(DB)に月額2万円だけ加入している場合、iDeCoの拠出限度額は2万円(5.5万円-2万円=3.5万円ですが、改正後iDeCoは拠出限度額が2万円になるため)となります。

iDeCoの拠出限度額は2万円に改正されますが、企業型DCの事業主掛金額や確定給付型制度の掛金相当額によってはiDeCoの掛金が2万円を下回る場合もあるのでよく確認しておきましょう。

iDeCoの掛金が2万円になった場合、ふるさと納税への影響は?

ではここで、現在、確定給付企業年金(DB)などに加入してiDeCoの拠出限度額が1.2万円の人が、2024年12月の改正に合わせてiDeCoの掛金を2万円に引き上げた場合、2025年からふるさと納税の控除上限額にどのような影響が出るのでしょうか?年収別(年収500万円・600万円・700万円)に確認してみましょう。

※試算条件
・独身・扶養家族なし
・社会保険料は年収の15%
・基礎控除・社会保険料控除のみ適用
・住民税は所得割のみ
・試算結果が該当するのは2025年からになります

まずは、年収500万円の場合を見てみましょう。iDeCoに満額2万円加入すると、税額とふるさと納税の控除限度額は以下のようになります。

・iDeCoの年間掛金総額は24万円(掛金月額2万円)
・所得税:11万1500円
・住民税:21万4000円
・ふるさと納税控除上限額:5万5641円

次に、年収500万円で「iDeCoに未加入の場合」と「iDeCo満額が月額1.2万円の場合」を比較してみましょう。

<年収500万円の場合>

筆者作成

上記の比較した結果によると、iDeCoに加入するとふるさと納税の控除上限額が減ります。また、iDeCoの満額が大きくなるほど控除上限額が下がることがわかります。しかし、iDeCoに加入した方が税額は減り、iDeCoの掛金が多くなるほど税額は少なくなることがわかります。

続いて、年収600万円と700万円の場合でも比較してみましょう。

<年収600万円の場合>

筆者作成

<年収700万円の場合>

筆者作成

年収600万円、700万円の場合でも、iDeCoに加入するとふるさと納税の控除上限額は減りますが、税額はiDeCoに加入した方が少なくなるので、iDeCoは節税効果が期待できることがわかります。

税金の負担を軽減させるためにも、iDeCoを活用することをおすすめします。その際、掛金を拠出限度額の上限に設定すれば、節税効果を最大限に活かすことができるでしょう。

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ふるさと納税とiDeCoは併用してOK

年収500万円、600万円、700万円の場合を例に試算した結果、ふるさと納税とiDeCoを併用したほうが、より課税所得を減らすことができるので、所得税と住民税が安くなることがわかりました。公的制度の所得控除や税額控除を利用して課税所得を下げることができれば、手元に残るお金が増えるのです。

また、iDeCoは拠出限度額の上限までの範囲内で、掛金を多く設定した方が節税効果は大きくなります。確定給付型の制度に加入する場合、2024年12月には拠出限度額が1.2万円から2万円に引き上げられます。この場合、企業型DCの事業主掛金額と確定給付型の他制度の拠出額の合計が5.5万円を超えないようにする必要があるため、iDeCoの拠出限度額が2万円に満たない場合があるかもしれません。それでもiDeCoに加入した方が節税効果が期待できます。

毎月の手取りを増やせて、老後資金の準備ができるという2つの目的を叶えてくれる、ふるさと納税とiDeCoの併用を検討してみてはいかがでしょうか。

前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士

2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。

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