26/04/17
障害年金は「がん」になったときにもらえるのは本当か

日本人が一生のうちに「がん」と診断される確率は男性63.3%、女性50.8%(国立がん研究センターの2021年のデータ)。日本人の2人に1人ががんと診断される時代です。がんやその治療の影響で働けない、お金がかかるとなると心配なものです。その心配を和らげる可能性があるのが、障害年金です。今回は、障害年金の基本を確認したうえで、がん患者が障害年金をもらうための受給条件を紹介します。
障害年金とはどんな年金?
障害年金は、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に受け取れる年金です。自営業・フリーランス・学生・主婦(夫)といった国民年金保険の加入者が受給できる「障害基礎年金」と、会社員・公務員といった厚生年金保険の加入者が受給できる「障害厚生年金」があります。
年金というと、老後にもらうもの(老齢年金)をイメージする方が多いのですが、障害年金は現役世代の方でも受給条件を満たせばもらうことができます。
障害年金の3つの受給条件
がんになったからといって、障害年金がすぐにもらえるというわけではありません。具体的には、次の3つの受給条件をすべて満たして、「障害の状態」にあると認定される必要があります。
●受給条件(1)障害の原因となった病気やけがの初診日に国民年金保険または厚生年金保険に加入していること
「初診日」とは、障害の原因となった病気やけがではじめて医師の診察を受けた日のことです。たとえば、「風邪だと思って病院にかかったもののなかなか回復しないので、精密検査を受けたら咽頭がんだった」という場合、初診日は「風邪だと思ってはじめて病院にかかった日」です。
初診日に国民年金に加入している人は障害基礎年金、厚生年金に加入している人は障害厚生年金の対象になります。会社員や公務員は厚生年金に加入することで国民年金にも加入しているので、条件を満たせば障害基礎年金と障害厚生年金の両方を受け取れます。
ただし、60歳以上の人で、すでに老齢基礎年金を繰り上げ受給している場合は、原則として障害年金をもらうことはできません。
●受給要件(2)初診日の前日において保険料の納付要件を満たしていること
障害年金をもらうには、初診日の前日において初診日がある月の2か月前までの加入期間のうち、3分の2以上の期間で保険料が納付されているか、免除されていることが必要です。
2036年3月末日までの場合、初診日が65歳未満で、初診日がある月の2か月前までの直近1年間に保険料の未納期間がなければ、特例として受給要件を満たします。あくまで「未納期間がないこと」が条件ですので、保険料免除期間がある分には問題ありません。
また、国民年金保険に加入するのは20歳からですので、20歳になる前に初診日がある場合には、この受給要件を満たす必要はありません。
●受給要件(3)障害の状態が、障害認定日に障害等級表の1~2級(障害基礎年金)・1~3級(障害厚生年金)に該当していること
障害年金が支給される障害の状態に応じて、障害の程度(障害等級)が定められています。障害年金は、障害認定日に障害等級が次の1級~3級に該当した場合に支給されます。
1級…他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの障害の状態
2級…必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができない状態
3級…日常生活にはほとんど支障はないが、労働については制限がある状態
これらは全体的な目安ですが、具体的にどのような状態が1級・2級・3級に該当するのかは、障害等級表に細かくまとめられています。
「障害認定日」とは、基本的に初診日から1年6ヶ月を過ぎた日のこと。1年6ヶ月前に病気やケガが治った(病状が固定した)場合はその日を指します。障害認定日に障害の程度が1級~3級に該当する場合に、障害基礎年金・障害厚生年金が受給できます。
なお、身体障害者手帳にも障害等級はありますが、身体障害者手帳の障害等級と障害年金の障害等級は別のものです。障害年金の支給はあくまで障害年金の障害等級で判断します。
障害年金はいくらもらえる?
2026年度の場合、障害年金の金額は次の図のとおりです。
<障害年金の金額>

日本年金機構「障害年金ガイド(令和8年度版)」より
障害基礎年金は障害等級2級まで、障害厚生年金は障害等級3級までが支給の対象です。し障害基礎年金も障害厚生年金も、1級の金額は2級の1.25倍になっています。障害等級3級の場合、報酬比例の年金額として最低保障額63万5500円が受け取れます。さらに、障害厚生年金に該当するよりも軽い障害が残った場合には障害手当金が受け取れます。障害手当金の最低保障額は127万1000円となっています。なお、障害年金は老齢年金と違い、非課税で受け取れます。
1級・2級の障害基礎年金または障害厚生年金を受け取ることができる方が生計を維持している配偶者(65歳未満)・子ども(18歳年度末までの子、20歳未満で障害等級1級・2級の障害の状態にある子)がいる場合には、加給年金が受け取れます。2026年度の金額は、次のとおりです。
<加給年金の金額(2026年度)>

日本年金機構「障害年金ガイド(令和8年度版)」より
がんでも障害年金をもらえる?
障害年金は、がんかどうかに限らず、初診日の要件・保険料の納付の要件・障害状態に該当する要件の3つを満たした場合に支給されます。つまり、がんで所定の障害の状態になり、3つの要件をすべて満たした場合、障害年金がもらえます。
日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」では、がんによる障害の程度を5つに区分しています。
<がんによる障害の程度>

日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」より
そして、障害等級の目安として、
1級…著しい衰弱又は障害のため、上の表のオに該当するもの
2級…衰弱又は障害のため、上の表のエまたはウに該当するもの
3級…著しい全身倦怠のため、上の表のウまたはイに該当するもの
という例が挙げられています。
ただ、がんで障害年金をもらっている人はそれほど多くないようです。日本年金機構「障害年金業務統計(2024年度決定分)」によると、新規裁定(新たに障害基礎年金・障害厚生年金を受給しはじめた件数)14万6225件のうち、がんによる障害年金の受給者が該当する「血液・造血器・その他」は4451件、わずか3.4%となっています。「血液・造血器・その他」には、がんでない病気も含まれているので、がんで障害年金を受給している件数・割合はもっと少ないものと考えられます。
該当しそうなら専門家に相談を
障害年金は、がんかどうかに限らず、初診日の要件・保険料の納付の要件・障害状態に該当する要件の3つを満たした場合に支給されます。ただ、その判定や手続きは難しいので、障害年金が専門の社会保険労務士(社労士)などに相談してみることをおすすめします。
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畠山 憲一 Mocha編集長
1979年東京生まれ、埼玉育ち。大学卒業後、経済のことをまったく知らないままマネー本を扱う編集プロダクション・出版社に勤務。そこでゼロから学びつつ十余年にわたり書籍・ムック・雑誌記事などの作成に携わる。その経験を生かし、マネー初心者がわからないところ・つまずきやすいところをやさしく解説することを得意にしている。2018年より現職。ファイナンシャルプランナー(AFP)。住宅ローンアドバイザー。教員免許も保有。趣味はランニング。
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