21/05/15
つみたてNISAではどんな商品を買えばいい?プロの銘柄選びの視点
つみたてNISA(ニーサ・少額投資非課税制度)では、金融庁の基準を満たした投資信託の中から選んで投資をします。とはいえ、特にこれまで投資をしてこなかった方の場合、どれを選べばいいのか悩んでしまうことも…。そこで今回は、つみたてNISAではどんな商品を買えばいいのか、商品の特徴とおすすめの選び方を紹介します。
投資の利益にかかる税金がゼロにできるつみたてNISA
つみたてNISAは、年間40万円までの投資で得られた利益を20年間にわたって非課税にできる制度です。
通常、投資で得られた利益には20.315%の税金がかかります。たとえば投資で10万円の利益が出ても、税金で2万円ほど引かれてしまうため、手元のお金は8万円足らずになってしまいます。しかし、つみたてNISAを利用して投資していれば、税金はゼロ。10万円を丸ごと受け取れるのです。
つみたてNISAでは、投資信託を利用して、投資の王道とされる「長期・積立・分散投資」を行います。そうして非課税の恩恵を受けながら、お金を堅実に増やすことを目指します。
つみたてNISAの投資信託の特徴を押さえよう
つみたてNISAで購入できる投資信託は、金融庁の基準を満たしたもののみ。いずれも、購入時の手数料が無料、保有中にかかる信託報酬が一定基準以下、分配金を毎月出さない(=元本を効率よく増やせる)、などの条件を満たした商品に絞られています。
とはいえ、つみたてNISAで購入できる投資信託は193本(2021年5月10日時点)もあります。私たちが通常購入できる投資信託は約6000本あるといわれていますから、それよりはだいぶ絞り込まれていますが、それでも193本。特に投資初心者の方の場合、商品の違いがわからなかったり、商品選びに悩んだりしてしまうのではないでしょうか。
そこで、まずはつみたてNISAで投資する投資信託の特徴を3つに絞ってご紹介します。
●つみたてNISAの投資信託の特徴1:どの国の資産に投資しているかが違う
投資信託は、どの国の資産に投資しているかで分類されます。たとえば、
・日本国内の資産のみに投資する「国内型」
・北米や欧州など、先進国の資産に投資する「先進国型」
・アジアや中南米など、新興国の資産に投資する「新興国型」
などと分類されます。このほか、国内・海外問わず、世界中の資産に投資する全世界型の投資信託もあります。
●つみたてNISAの投資信託の特徴2:投資先は「株式型」か「バランス型」
投資信託が投資する資産はさまざま。商品ごとに、どんな資産に、どんな割合で投資するかといった方針が決まっています。投資先の国と同様、
・株式に投資する「株式型」
・債券に投資する「債券型」
・不動産に投資する「REIT」(リート・不動産投資信託)
・複数の資産に投資する「バランス型」
という具合に分類されます。
このうち、つみたてNISAで選べる投資信託は「株式型」と「バランス型」の2種類のみです。株式型ならば100%株式のみに投資します。バランス型ならば株式に加え、債券や不動産などにも投資します。
●つみたてNISAの投資信託の特徴3:運用方法は「インデックス型」と「アクティブ型」の2種類
投資信託には、インデックス型(パッシブ型)とアクティブ型の2種類があります。
インデックス型は、市場全体の大まかな値動きを示す指数と同じ値動きをするように運用される投資信託です。たとえば、国内株式型のインデックス型の場合、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などの指数と連動するように運用されます。指数が上昇すれば、その指数に連動するインデックス型の投資信託も値上がりします。)
一方のアクティブ型は、インデックス型を上回る成果を狙って運用される投資信託です。指標を上回る値動きを目指す商品や、目標とする指数を設けずにリターンを狙う商品など、さまざまなタイプがあります。値上がりするときには指数以上の利益を目指し、値下がりするときには指数ほどは値下がりしないように努めます。
つみたてNISAで買うべき商品を選ぶ3つのポイント
つみたてNISAで運用する投資信託はどう選べばいいのでしょうか。3つのポイントを紹介します。
●つみたてNISAの商品選びのポイント1:信託報酬の安い商品を選ぶ
投資信託には、大きくわけて3つのコストがかかります。
・販売手数料:投資信託を買うときにかかる手数料
・信託報酬:投資信託の保有中にかかる手数料
・信託財産留保額:投資信託を売るときにかかる手数料
とはいえ、つみたてNISAでは販売手数料は無料。信託財産留保額もそれほど高くありません(無料の場合もあります)。ですから、チェックすべきは信託報酬です。
信託報酬は、投資信託を保有している間、ずっと差し引かれていきます。ですから、投資期間が20年などと長くなると、わずか年0.2〜0.3%程度の違いでも、大きな差となります。しかも、コストは利益があっても損失があっても、常に一定額を支払い続けます。利益が出ているのであればともかく、損失が出ているときにも手数料を払い続けるのは大変です。ですから、同じような国・投資先に投資しているのであれば、少しでも信託報酬が安い投資信託を選ぶようにしましょう。
なお信託報酬は、アクティブ型よりインデックス型のほうが安く設定されています。アクティブ型は、運用を担当するプロ(ファンドマネージャー)の投資先選びに手間がかかるため、コストもかかるのです。しかし、そのコストを支払ったところで、必ずインデックス型の成果を上回るのかといえば、そんなことはありません。インデックス型に勝てないアクティブ型の商品も多数存在します。ですから、はじめてであればまずはインデックス型でスタートするのがいいでしょう。
●つみたてNISAの商品選びのポイント2:純資産残高が少なすぎないかチェック
投資信託の純資産残高とは、それぞれの投資信託が投資している株式や債券など、すべての資産の合計金額です。純資産残高が多いということは、お金が集まっているということ。投資家からの人気があることを指しています。もっとも、純資産残高が多いからといって、運用成績がいいとは限りません。
むしろチェックしたいのは、純資産残高が少なすぎないかです。純資産総額が少なくなると、「繰上償還」といって、途中で運用が終了してしまう恐れが強まります。仮に損失を抱えているときに繰上償還が行われると、その時点で強制的に損失が確定してしまいます。
純資産残高が50億円以上あれば、繰上償還の可能性は少ないでしょう。商品選びの際の目安にしてください。
●つみたてNISAの商品選びのポイント3:広く市場全体に投資できる指数かを確認
資産を広く分散しておくと、仮にそのなかのどれかが値下がりしても、他のどれかの値上がりでカバーしながら、全体として堅実にお金を増やす期待ができます。
インデックス型の指数は、なるべく広く投資できるものを選びましょう。
たとえば、米国株式型の商品の指数には、ダウ平均株価・S&P500・CRSP USトータルマーケットインデックスなどがあります。これらの指数を算出するために用いられる株式の数(構成銘柄数)は、
・ダウ平均株価:米国経済を代表する30銘柄
・S&P500:米国の大型株500銘柄
・CRSP USトータルマーケットインデックス:米国の大型株から小型株まで約4000銘柄(米国ほぼ全ての銘柄)
となっています。
市場全体に投資できる指数のほうが、市場の値動きを正しく反映しているでしょう。また小型株を含めることで新興市場の成長力を得られますので、運用成績アップが望めます。
つみたてNISAでは、全世界株式型インデックスファンド1本を買うのがおすすめ
つみたてNISAがスタートしたのは2018年からでした。本稿執筆時点(2021年5月)までの3年を見ると、米国市場が好調だったため、たとえばS&P500などに投資する商品の成績は好調でした。しかし、この好調がこれからも続くとは限りませんし、米国よりも成長する国や地域が出てくる可能性もあります。
そこでおすすめなのが、世界全体に幅広く投資できる全世界株式型の投資信託です。
たとえば「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」は、3本のETF(上場投資信託)への投資を通じて、「FTSEグローバルオール・キャップ」という指数に連動することを目指します。この指数は、世界の大中小型株式、約9000銘柄の値動きをもとにしていますので、米国株の「CRSP USトータルマーケットインデックス」よりもさらに細かな分散投資ができる、というわけです。しかも信託報酬も0.1102%ととても安価です。
今後どの国や地域が成長するのかを予想するのは困難ですが、世界全体に幅広く投資しておけば、日本経済や世界経済の成長とともに資産を増やす期待ができます。
まとめ
つみたてNISAの商品の特徴と選び方について紹介してきました。
つみたてNISAを2021年からスタートすれば、2042年までの22年間、毎年最大40万円ずつ、合計880万円まで非課税で投資できます。しかも、非課税で投資できる金額は翌年に持ち越せないため、スタートが遅くなるほど、非課税で投資できる金額も減ってしまうことになります。ですから、なるべく早くスタートして、長く続けて、非課税の恩恵を最大限に生かすようにしましょう。
つみたてNISA(積立NISA)おすすめ金融機関4選
つみたてNISA(積立NISA)スタートにぴったりの金融機関をご紹介します。
● SBI証券
・ほとんどの投資信託を網羅。有力商品を選びやすい
・毎日・毎週・毎月・複数日・隔月の5つの購入タイミングを選べる
・SBIハイブリッド預金を使うと入金・出金がスムーズ
● マネックス証券
・取扱商品が100本以上。100円から購入可能
・チャットによる質問対応、パソコン出張サービスなどサポートが充実
・アプリ・パソコンツールが豊富で使いやすさに定評
● イオン銀行
・イオン内に店舗があるため、買い物ついでに立ち寄れる
・年中無休で夜21時まで営業(一部例外あり)のため、相談しやすい
・「イオン銀行Myステージ」のポイントが貯まり、普通預金金利がアップ
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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