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22/10/02

資産運用・経済

【絶対手を出すな】退職金投資でやってはいけない7つの地雷商品

【絶対手を出すな】退職金投資でやってはいけない7つの地雷商品

虎の子の退職金を投資でさらに増やして、老後の生活の不安を減らしたい。そう考えて、投資をスタートさせる方は少なくありません。でも中には、退職金ではやってはいけない投資や、お金が確実に減ってしまう投資もあるのです。今回はそんな、退職金で取り組むべきではない「やってはいけない投資」として、7つの地雷商品を紹介します。

退職金投資でやってはいけない地雷商品1:不動産投資

退職金のように、まとまったお金を手にすると、不動産を購入して「大家さん」になろうとする方が多くいます。確かに、大家さんになって、部屋を人に貸せば毎月安定した家賃(賃貸収入)を得られますし、不動産が値上がりすれば売ることで売却益も得られます。

不動産投資は、住宅ローンを組んで不動産を購入し、賃貸収入からローンを支払った残りが黒字になるのが理想です。ローンの返済中は家賃収入とローン返済額が相殺されほぼキャッシュフローはありませんが、ローンの返済が終われば、その後は賃貸収入がそのまま受け取れるようになります。

定年後は、住宅ローンをなかなか借りられません。そのため、不動産を退職金で一括購入することになりがちです。この場合、仮に2500万円の物件を購入して家賃10万円で貸し出したとしても、元を取るまでに単純計算で20年以上かかってしまいます。しかも、入居者がもしいなければ、その間家賃収入は得られないため、元を取るまでの期間はさらに長くなってしまいます。

不動産を現金化したいとしても、どんな優良物件でも1か月程度の時間はかかります。そもそも売りたい時に売れないこともありますし、希望価格で売ることができないということもあります。こういったリスクを「流動性リスク」と言います。

不動産投資自体は、悪い投資ではありません。しかし、定年後に行う投資としては不向きで、退職金を減らす可能性の高い投資だといえるでしょう。不動産投資をする場合は、現役時代にローンを組むことがポイント。人のお金を借りて不動産を買い、人のお金で返すのが理想の投資なのです。

退職金投資でやってはいけない地雷商品2:毎月分配型の投資信託

毎月分配型の投資信託とは、文字どおり分配金を毎月支払ってくれるタイプの投資信託です。毎月分配金がもらえたら、嬉しいですよね。でも、毎月分配型の投資信託は、投資・地雷商品なのです。そのわけは、分配金をもらう仕組みにあります。

●毎月分配型の分配金は元本から出ている場合がある

(株)Money&You作成

毎月分配型の投資信託は、運用で利益が出ているときにはその利益から分配金を支払いますが、運用で利益が出なかったときは元本を取り崩して分配金を支払います。その結果、分配金を支払った分だけ投資信託の元本が減ってしまうのです。毎月分配型の投資信託のほぼすべてが、このように元本を取り崩しています。

厚生労働省「簡易生命表」によれば、退職金をもらう60歳の平均余命は男性約24年、女性約29年となっています。60歳は、まだまだお金を増やしていく時期なのです。資産を取り崩す時期は、70歳・75歳になってからでも遅くないでしょう。

また、複利効果の面から考えると、分配金は受け取るよりも再び投資に回した方が効率よく資産を増やせるでしょう。毎月分配金として受け取ってしまうと、複利効果を生かすことができなくなってしまいます。

さらに、毎月分配型の投資信託は信託報酬などの手数料が高く設定されているのも問題です。自分のお金を預けて、高額の手数料を支払いながら、預けたお金の一部から取り崩した分配金を受け取るというのでは、とても割に合わないでしょう。

もし、金融機関が毎月分配型の投資信託を勧めてきたら、それは手数料目当ての可能性が高いでしょう。毎月分配型の信託報酬は年1%以上の商品が多く、中には2%以上の商品もあるのです。高い手数料を払いながら、自分の資産の一部を受け取り続けるのは、おかしいですよね。

退職金投資でやってはいけない地雷商品3:オプション付き投資信託・仕組債

オプション付き投資信託には、株式やREITに投資をしつつ、オプション取引を行い利益の上乗せをする「カバードコール型」や「通貨選択型」などがあります。

たとえば通貨選択型は、値上がり益や配当・利子といった運用益に加えて、選択した通貨の為替差益や為替取引によるヘッジプレミアム(通貨の金利差)も得られます。

●通貨選択型の利益のイメージ

(株)Money&You作成

といっても、仕組みがわかりにくいでしょう。収益の源泉が多いのは一見いいことのようですが、その分リスクも高いということになります。そして何より、手数料が高いのがネックです。同じ日経225(日経平均株価)に投資する投資信託でも、信託報酬に差があることがわかります。

また、仕組債は債券にオプションなどを組み込んだ商品。元本や利息の支払いに、株価指数や為替などの金融指標の変化による条件が付与されて、条件のない債券よりも高い利回りが提示されています。

●仕組債のオプション取引のイメージ

(株)Money&You作成

しかし、株価がいくら上昇したとしても、仕組債の購入者が得られる利益はあらかじめ決まったオプション料だけです。それに対して、株価が下落した場合は、下落するほど大きな損失を被ります。投資のリスクとリターンにはトレードオフ(比例の関係)があるといわれますが、仕組債の場合は、損失のリスクに見合ったリターンが得られません。

金融機関はプロの投資家とオプション取引を行うことで、株価がどうなろうと儲かるようにしています。そのうえ、プロの投資家から受け取るオプション料から、個人投資家に支払うオプション料を大きく「サヤ抜き」しているのです。たとえば、プロの投資家から6%を得て、購入者には1%を支払う、といった具合です。このサヤ抜きが悪質で、儲からない理由になっています。
実際、証券・金融商品あっせん相談センターでの紛争解決手続き終了事例のうち、仕組債は38%でトップ(2021年9月まで1年間)となっています。21年7~9月期の手続き終結事例で多いのは70~80代の高齢者の申し立てです。「定期預金を中途解約して仕組債の購入を勧められ、多額の損失が発生した」などの主張が多くあります。

PayPay証券

退職金投資でやってはいけない地雷商品4:ファンドラップ

ファンドラップとは、投資家が金融機関と「投資一任契約」を結び、売買の判断・実際の売買・資産の管理までをすべてプロに「お任せ」するサービスです。ファンドラップは、かつては富裕層向けのサービスで、最低でも数千万円の運用資金を預ける必要がありました。しかし最近は300万円程度でスタートできるファンドラップもあります。

しかし、ファンドラップでは手数料が二重にかかります。
固定報酬型の場合は、購入する投資信託の信託報酬(年1%前後)に加えて、ファンドラップを利用する際の「管理手数料」や「投資顧問報酬」といった手数料が年間1%程度かかります。変動報酬型の場合は、管理手数料や投資顧問報酬が低くなるかわりに運用益から5~10%の「成功報酬」を徴収するところもあるのです。

ファンドラップも、金融機関が勧めてきたら手数料目当ての可能性が高いでしょう。

退職金投資でやってはいけない地雷商品5:退職金運用プラン

退職金運用プランは、定期預金と投資信託やファンドラップなどの商品をセットにした商品。多くの場合、資産の半分を定期預金に預け、もう半分を投資信託で運用します。

定期預金の部分では、3ヶ月間や6ヶ月間など期間は短いですが、年利3〜4%と高い金利が提示されているため、お得に感じるでしょう。しかし、投資信託の部分では購入時手数料や信託報酬が高く設定されているものがほとんど。トータルで見ると損になるようにできています。

●退職金運用プランの販売手数料と金利

(株)Money&You作成

この例では、一見定期預金の金利で7万5000円もらえていてお得ですが、投資信託の販売手数料を30万円支払うことになります。つまり、この商品を買った瞬間に22万5000円を損しているのです。絶対に手を出してはいけない商品なのです。

退職金投資でやってはいけない地雷商品6:外貨建て保険

外貨建て保険は、保険料の支払いや保険金の受け取りが外貨で行われる保険です。米ドルや豪ドルといった外貨で保険料を支払い、保険金などを受け取るときも外貨で受け取ります。「外貨は金利が高いので、円建ての保険よりも高い利回りが期待できる」「元本が保証されている」などというと一見よさそうなのですが、これも注意すべき商品です。

外貨建て保険の「元本保証」は、あくまで外貨ベースです。したがって、多少金利が得られたとしても、外貨を円に戻したときに、為替レートの値動き次第で金利以上に損をする可能性があります。本稿執筆時点(2022年9月30日)では、為替レートは1ドル=144円〜145円と、歴史的に見て超円安水準です。行動経済学の「平均への回帰」(平均から大きくかけ離れた状態はやがて平均に戻るという考え方)から考えると、今後円高になる可能性が高いでしょう。円安時に購入してしまえば、為替差損で損する可能性が高いでしょう。

それでなくても、外貨建て保険は販売手数料の高い商品です。公表されていないケースも多いのですが、円建ての保険は2〜3%なのに対し、外貨建て保険は6〜8%と、他の投資に比べてはるかに高い販売手数料がかかっています。それだけに金融機関の「勧誘」も熱心で、近年国民生活センターへの相談件数が増加しているほどです。これならば、手数料分も含めて他の投資を利用したり、貯蓄したりしたほうがいいでしょう。

退職金投資でやってはいけない地雷商品7:元本保証・ローリスクで高リターンの商品

投資には、リスクとリターンがつきものです。リスクとリターンはトレードオフの関係にあるため、「元本保証で高リターン」とか「ローリスク・ハイリターン」はありえません。しかし、なかには「元本保証で多額の配当金が手に入る」「絶対儲かる投資」といった投資の勧誘があるのも事実です。

もしも、こうした勧誘があったら、ポンジスキームを疑いましょう。
ポンジスキームは、投資詐欺の9割を占める、詐欺の常套手段です。具体的には、

①元本保証・無リスクをうたい、年10%や20%など高利回りの投資案件で出資者からお金を集める
②運用する(といってはいるが、実際には運用しない)
③後から参加する別の出資者から集めたお金の一部を着服する
④残ったお金を以前の出資者に配当金と偽って横流しする

という手順で行われます。
つまり、ポンジスキームでは、集めたお金を配当金として横流ししているのです。この方法では、出資者が増えているうちはまだいいものの、出資者が少なくなると破綻します。破綻すれば、出資者のお金は戻ってきません。

特に以下のような投資の勧誘があったら、要注意です。

●投資詐欺の可能性が高い勧誘商品

・カジノコインリース
・暗号資産関連
・NFT関連
・不動産投資(土地売買)
・海外資産関連
・私募ファンド
・私募REIT
・プライベートバンク
・非上場株
・未公開株 など

投資詐欺に合わないようにするために、次の6か条を忘れないようにしましょう。

・「元本保証・ローリスクで年10%を超える」商品は絶対にないことを忘れない
・知らない人からの誘いを受けない
・秘密のグループやコミュニティには入らない
・投資商品の販売会社・運営会社を調べる
・未公開株、非上場株、私募ファンドは買わない
・「紹介プログラム・スキーム」がある商品は買わない

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まとめ

退職金は、老後の生活を支える大切なお金です。しかし、今回紹介した「やってはいけない資産運用」に手を出してしまうと、大きく損して取り返しがつかなくなる可能性も。一見簡単に儲かりそうな話には、裏があります。そのことを踏まえて、退職金をどうするのか検討してください。

今回の内容は動画でも紹介しています。ぜひご覧ください。

頼藤 太希 マネーコンサルタント

(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki

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