26/09/10
「金持ち老後」と「貧乏老後」を分ける5つの決定的な違い

長生きは、おめでたいことです。一方で、人生100年時代といわれる今、老後の期間が長くなれば、「お金は足りるだろうか」「病気や介護にかかったらどうしよう」と不安になる人もいるでしょう。
日本人の平均寿命は、2025年時点で男性81.35歳、女性87.33歳です。老後が長くなるほど、現役時代にどれだけお金を貯めたかだけでなく、限られた資産をどう使い、どう守っていくかも重要になります。
そこで今回は、老後のお金との向き合い方を、「金持ち老後」と「貧乏老後」という視点から考えてみましょう。
「金持ち老後」と「貧乏老後」の決定的な違い1:老後の柱となる年金に詳しい
老後の生活を支える大きな柱となるのが年金です。ただ、加入している制度や働き方によって、受け取れる年金額は人それぞれ違います。
金持ち老後を送る人は、「老後になったらいくらもらえるのか」を早い段階から確認し、その金額に合わせて生活設計を考えます。一方、年金額を確認しないまま老後を迎えると、実際に受け取る金額を見て、慌てることになりかねません。
まず確認したいのが、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」です。
●「ねんきん定期便」で自分の将来もらえる年金を確認
50歳以上の人に届く「ねんきん定期便」では、現在の加入状況などをもとにした老齢年金の見込額を確認できます。
今後の働き方や収入などによって変わる可能性があるため、数字をそのまま信じるのではなく、老後の生活費と照らし合わせて考えることが大切です。
「毎月いくらあれば暮らせるのか」「年金だけで足りるのか」「不足するなら貯蓄をどのくらい取り崩すのか」まで考えておくと、老後のお金の使い方が具体的になります。
はがき形式のねんきん定期便で必ずチェックしておきたい項目は、裏面にある2つの項目です。
<ねんきん定期便のイメージ(50歳以上・裏面)>

日本年金機構のウェブサイトより
(1)「これまでの年金加入期間」で納付月数を確認
「これまでの年金加入期間」で確認できることは、自営業の人であれば国民年金の納付月数、会社員や公務員の人であれば厚生年金の加入月数です。
老齢基礎年金を65歳から受け取るには、保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上あることが必要です。まずは、その要件を満たしているか確認しましょう。
(2)「老齢年金の種類と見込額(年額)」で65歳からもらう年金を確認
50歳以上の人が受け取るねんきん定期便に記載されている「老齢年金の種類と見込額(年額)」は、現時点での年収などが60歳まで継続すると仮定して計算された65歳からの年金受給額です。
50歳代前半の方は役職手当などが付き年収が高いという方は多いものです。しかし、このままの年収が続くと思っていたら注意が必要です。55歳になると管理職から外れて、年収がダウンするという場合もあるからです。
年金の見込み額には、実際に起こる細かな点は反映されません。老後のライフプランを立てるときは、見込み額を鵜呑みにせず、少々シビアに想定しておいた方がよいでしょう。
●年金を増やせる方法を知っておく
老齢基礎年金は、原則として20歳から60歳までの40年間、保険料を納めることで満額となります。未納期間などがある場合は、任意加入制度などを利用できるケースがあります。
また、厚生年金は加入期間や報酬などによって年金額が決まります。働き方によっては、長く厚生年金に加入することで将来の年金額を増やすこともできます。年金を増やす方法を知っているかどうかで、老後の選択肢は変わります。
●iDeCoに加入し私的年金を充実させる
「ねんきん定期便」に記載されている年金見込額が少ない場合、金持ち老後を送る人は私的年金での上乗せを検討します。その際、一番に目を付けるのはiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)です。
iDeCoは、毎月一定の金額を積み立て、あらかじめ用意された積立・保険・投資信託などの金融商品を自らで運用する制度です。iDeCoの運用成果は、原則60歳以降に一時金または年金で受け取ります。
iDeCoでは、毎年拠出した積立金がすべて所得控除の対象になるため、所得税や住民税を安くできます。そのうえ、iDeCoの運用で得た利益は非課税であるため、もらうときは、税金が抑えられます。原則60歳まで引き出せませんが、老後資金を確実に用意するためには好都合です。
iDeCoで掛金を拠出できるのは、最長で65歳未満まで(60歳以降は会社員・公務員、国民年金の任意加入者のみ)です(2026年12月からは70歳未満までに引き上げられる予定)。期限が決まっているため、早く始めることがポイントです。
●年金の繰り下げも選択肢の一つ
老齢基礎年金と老齢厚生年金は、原則65歳から受け取れますが、66歳以降75歳まで繰り下げることができます。75歳まで繰り下げた場合の増額率は最大84%です。また、基礎年金と厚生年金は別々に繰り下げることもできます。
「金持ち老後」と「貧乏老後」の決定的な違い2:収入が減ることを見越して、早めに固定費を見直す
現役時代より収入が減る老後に、現役時代と同じ家計をそのまま続けていれば、貯蓄を取り崩すスピードが速くなります。
金持ち老後を送る人は、老後に収入が減ることを前提に、早めに家計をコンパクトにします。なかでも、通信費、保険料、住宅費、自動車関連費用などの固定費は、一度見直すとその効果が続きやすいため、優先して確認します。とはえい、ただ固定費を減らすことだけが目的ではありません。「何にお金を使いたいのか」を先に決め、そのために不要な支出を減らすことがポイントです。ここでは、具体的な固定費の見直し方法を5つ紹介します。
●居住費・賃貸住宅の見直し
賃貸住宅に住んでいる場合の居住費の見直しは、老後を快適に過ごすための適切な広さや立地の物件に引っ越すことです。これにより家賃を抑えられる可能性があります。
しかし、ただ安い物件を探すのではなく、通院や買い物、交通の便なども含めて考えましょう。家賃が安くなっても、通院や買い物が不便になり車が必要になれば、別の支出が増えてしまうからです。
●住居費・持家のローンの見直し
住宅ローンの返済方法には、「繰上げ返済」と「借り換え」があります。繰上げ返済は、余剰資金を使って早期完済を目指し、総利息を減らす方法です。一方の借り換えは、低金利のローンに変更すること。毎月の返済額を減らすことを目的に行います。
どちらも計画的に行うことで、固定費削減に効果があります。しかし、手数料などがかかるため、よく考えて行う必要があります。住宅ローンを借りている金融機関に相談しましょう。
●通信費の見直し
携帯電話は、毎月のデータ使用量や通話時間を確認し、自分の使い方に合った料金プランに変更しましょう。大手キャリアを利用している場合は、格安SIMなどに乗り換えることで、通信費を大きく抑えられる可能性があります。通信品質やサポートなど、自分に必要なサービスを確認したうえで、プランを選ぶことが家計の節約につながります。
●保険料の見直し
保険は、保障額が大きすぎないか、重複していないか確認して、不要なものは解約を検討しましょう。現役時代は必要だった保障でも、子どもの独立や住宅ローンの返済状況などによって、必要性が変わっていることがあります。老後のライフスタイルに合わせた見直しをすることで、保険料を節約できます。
●光熱費の見直し
電気・ガス料金は、契約プランや使用量を確認し、現在の暮らしに合っているか見直しましょう。家電を買い替える際は、省エネ性能の高いものを選ぶことも、光熱費の削減につながります。
冷蔵庫、エアコン、洗濯機などの必需品は、定期的なメンテナンスが必要で、いずれ買い替えの時期もやってきます。こうしたまとまった出費に備え、毎月少しずつ専用口座に積み立てる、または老後資金の中から別枠で確保しておくと安心です。あらかじめ準備しておけば、家電が故障したときにも、老後の生活費を大きく取り崩さずに済みます。
金持ち老後を送る人は、こうした「いずれ必要になる支出」をあらかじめ見込んで、計画的にお金を準備しています。
「金持ち老後」と「貧乏老後」の決定的な違い3:老後の楽しみ方に自分軸がある
金持ち老後を送る人は、老後のお金を何に使って楽しむのか、自分なりの基準を持っています。
たとえば、普段は「図書館通い」や「自治体のカルチャースクール」など、お金をあまりかけずに楽しみ、年に1回は1泊2日~2泊3日の旅行に出かける人がいます。また、散歩や短時間の仕事を楽しみながら、共通の趣味を持つ友人とシニア割を利用して、美術館や映画館に出かける人もいます。
このように、お金をかけるところとかけないところを自分で決め、楽しみにもメリハリをつけています。「老後を楽しむために、貯めたお金を何に使いたいのか」が明確なので、必要以上に節約することも、思いつきで散財することもありません。
一方、貧乏老後を送る人は、自分が何をしたいのかよりも、周囲の情報に流されてお金を使ってしまいます。「○○が流行っているらしい」「○○のコンサートが楽しいらしい」と聞けば、自分にとって本当に必要なものかを考える前に、なんとなく参加してしまうのです。一つひとつの出費はそれほど大きくなくても、こうした使い方が積み重なれば、貯蓄の減少につながります。
現役時代より収入が減る老後だからこそ、「人が楽しんでいるから」ではなく、「自分は何を楽しみたいのか」を基準にお金を使うことが大切です。「何のために貯めてきたお金なのか」を考え、使うところには使う。使わないところには使わない。このメリハリが、満足度の高い老後につながります。
「金持ち老後」と「貧乏老後」の決定的な違い4:自分らしい働き方ができる
60歳で定年を迎えた後も、働き続ける人は珍しくありません。現在は、企業に対して65歳までの雇用確保措置が義務づけられているほか、70歳までの就業機会を確保するための措置も事業主の努力義務となっています。そのため、ハローワークでも、シニア世代の就職を支援しています。
金持ち老後を送る人は、「いくら稼ぐか」だけで仕事を選びません。仕事にどんなやりがいや目的を求めるのかを考え、老後の生活を楽しむために、どのくらい働けば収支が合うのか、何歳くらいまで働くのかなど、自分なりの働き方の目標を持っています。
たとえば、旅行や趣味に使うお金を確保するために週に数日働く、社会とのつながりを保つために働く、これまでの経験を生かせる仕事を続けるなど、目的は人それぞれです。また、定年後も働くことを見据え、50代のうちから興味のある分野を学んだり、必要な資格を取得したりして、仕事の選択肢を増やしておく人もいます。
一方、貧乏老後を送る人は、「とにかく働いてお金を得ればいい」と考え、仕事の内容や働き方まで考えずに仕事を選んでしまいます。給料の高さだけを優先して体力的に厳しい仕事を選んだり、「今さら新しいことを覚えるのは面倒」と、仕事の選択肢を広げることを避けたりすることもあります。
60歳を過ぎると、現役時代と同じように働き続けることが難しいと感じることがあるかもしれません。それにもかかわらず、身体に無理がかかる仕事や、自分に合わない仕事を選べば、長く続けることはできません。途中で健康を害すれば、収入が減るだけでなく、医療費などの支出が増える可能性があります。
老後に働く目的は、収入を増やすことだけではありません。自分が楽しみたいことに必要なお金を確保しながら、無理なく働き、仕事そのものにもやりがいを感じられることが大切です。そのためにも、50代のうちから「何のために働くのか」「いつまで働くのか」「どのくらい働けば老後の生活が成り立つのか」を考えておきましょう。
「金持ち老後」と「貧乏老後」の決定的な違い5:老後に対して、自分なりの心構えがあるかどうか
老後の心構えとは、老後に起こるさまざまな出来事に対処するための心の準備や覚悟のことです。老後は、身近な家族の介護が必要になったり、大切な人との別れを経験したり、自分自身が病気になったりする可能性もあります。
金持ち老後を送る人は、「何か起こるかもしれない」と考え、老後のさまざまな出来事を想定しています。そして、いざというときに慌てないよう、医療や介護にかかる費用、住まいの修繕費、家電の買い替えなど、まとまった支出についても、あらかじめ準備しておきます。
また、エンディングノートなどを活用して、自分がどのような医療や介護を望んでいるのか、財産をどうしたいのかなど、自分の考えを整理しておくこともあります。大切なことを家族と共有しておけば、いざというときにも話し合いがしやすくなります。
一方、貧乏老後を送る人は、「そのときになれば何とかなる」と考え、将来起こり得ることへの備えを後回しにしがちです。身内に介護が必要になれば、さまざまな手続きや対応に追われ、自分の生活や家計まで圧迫されることがあります。突然の病気や住宅設備の故障などでまとまったお金が必要になれば、予定していなかった貯蓄の取り崩しにもつながります。
そして、もう一つ注意したいのが、大切な老後資金を詐欺から守ることです。
特殊詐欺は依然として深刻で、警視庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」によると、2025年の特殊詐欺の被害額は約1423.1億円に上りました。2026年に入ってから被害はさらに増え続けていて、同じく警視庁「令和8年7月末における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」によると7月末までの特殊詐欺の被害額は2108.1億円に達しています。
金持ち老後を送る人は、「自分はだまされない」と過信せず、知らない人からの電話やメール、SNSで届く投資話などに慎重です。「必ずもうかる」「元本保証」などといった言葉をうのみにせず、すぐにお金を振り込んだり、投資を始めたりすることはありません。
対して、貧乏老後を送る人は、老後の資金を増やしたいという焦りから、うまい話に飛びついてしまうことがあります。長年かけて貯めたお金を一度の詐欺で失ってしまえば、老後の生活に大きな影響が出ます。
老後のお金は、「予期せぬ支出に備える」「だまされて失わない」ことも重要です。何が起きるかをすべて予測することはできません。しかし、起こる可能性のあることを少しずつ想定しておくことが、老後の安心につながります。
金持ち老後を送る準備を始めよう
「金持ち老後」と聞くと、「お金がたくさんあること」をイメージしがちです。しかし、これまで見てきたように、金持ち老後と貧乏老後を分けるのは、資産額だけではありません。
年金や家計を把握し、お金を計画的に使い、自分らしい働き方や楽しみ方を選び、万一の事態にも備える。こうした日々の選択の積み重ねが、老後の安心につながります。
一方、何となくお金を使い、先のことを考えないまま過ごしていると、資産があっても不安はなくなりません。
「いくら貯めるか」だけでなく、「どう使い、どう備えるか」まで考えることが、金持ち老後への第一歩となるでしょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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