26/09/08
年金は「片方繰り下げ」が得!注意すべき5つのポイント

長生きが当たり前になった今、「年金をすぐもらう」というプランは、必ずしも正解とは言えなくなってきました。年金をいつもらうかは、働き方や資産の状況によって自由度が高まっています。 今回は、年金のもらい方を片方だけ繰り下げし、老後の生活を豊かにするポイントを考えていきます。
年金の繰り上げと繰り下げの方法
国の社会保険制度である公的年金は、大きく分けて2種類あります。20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金」と会社員や公務員が加入する「厚生年金保険」です。自営業やフリーランスの方は、受け取る年金は老齢基礎年金(国民年金)のみです。会社員や公務員の方は、国民年金と厚生年金保険の2つに加入しているので、受け取る時期や方法に選択肢が増えます。
老後の年金を受け取るのは原則65歳からですが、希望すれば60歳以上75歳未満の好きなときから受け取ることができます。
年金を65歳になる前から受け取ることを「繰り上げ」といいます。繰り上げでは、年金の受給開始を1か月早めるごとに0.4%ずつ年金受給率が下がります。60歳まで繰り上げると、受給率は76%(24%減額)となります。老齢厚生年金がある人が繰り上げする場合には、老齢基礎年金も同時に繰り上げ請求しなければなりません。
一方、年金を66〜75歳までの間に受け取ることを「繰り下げ」といいます。繰り下げでは、受給開始を1か月遅らせるごとに0.7%ずつ年金受給率が上がります。75歳まで繰り下げると受給率は184%(84%増額)となります。
老齢基礎年金と老齢厚生年金の2つの年金の受給資格がある人が繰り下げをする場合には、働き方や世帯の構成を考えてそれぞれ別々に繰り下げることができます。年金の繰り下げ方法には、以下のようなパターンが考えられます。
・老齢基礎年金だけ繰り下げ
・老齢厚生年金だけ繰り下げ
・66~75歳の間に両方同時に繰り下げ
・両方を別々の年齢で繰り下げ
年金を片方だけ繰り下げることでお得になるポイントには、次のようなものがあります。
(1)繰り下げ期間中の公的年金等控除、基礎控除が使える
年金を受給するようになっても、税金がかからないわけではありません。年金は所得税の雑所得に分類され、一定の控除額を超えた金額には所得税がかかります。年金をもらっている場合には、所得控除として、最低、公的年金等控除と基礎控除が利用できます。片方だけ年金を繰り下げた場合には、両方の年金を繰り下げた場合にくらべ年金額がそれほど多くならないため、税金がかからない場合が多くなります。
受給した年金からは公的年金等控除(65歳以上110万円、65歳未満60万円)が差し引かれます。さらに、令和8年分の所得税の基礎控除は、合計所得金額が489万円以下の場合には、104万円(本則62万円+特例42万円)です。65歳以上の場合には、公的年金等控除110万円と基礎控除の104万円を合わせた214万円が差し引かれるため、大きな節税になります。
もし、繰り下げ期間中に年金の所得控除枠を使わずに過ごすとなると、所得控除枠が無駄になります。片方の年金を繰り下げることにより、税金を減らせることと年金を増やせることが期待できます。
(2)安定収入が得られ生活に余裕ができる
老齢基礎年金と厚生老齢年金の両方を繰り下げると受給できる年金は増えますが、年金受給待機中の収入を確保しなければなりません。現役時代より給料が減ってしまった場合には、どちらか一方を繰り下げて生活費に充てることも可能です。無理をせず働きながら片方の年金をもらう選択をすれば、経済的な不安を軽減でき、安定収入が得られます。
また、繰り下げたもう片方の年金は、将来の年金額が増えます。どちらの年金を増やすかは、健康状態や他の収入に合わせて自由に組み合わせできるのも魅力です。
(3)老齢基礎年金のみ繰り下げれば加給年金がもらえる
年齢の差がある夫婦世帯では、加給年金や振替加算との関係に注意しなければなりません。加給年金は、厚生年金保険の加入期間が20年以上ある人が、65歳になって老齢厚生年金を受け取っているときに、扶養する65歳未満の配偶者がいる場合に受け取れる年金です。配偶者が65歳になるまで受け取れます。また、配偶者の年齢によっては、振替加算にも注意が必要です。振替加算は、加給年金の対象となっていた人の老齢基礎年金に上乗せされるものです。しかし、1966年(昭和41年)4月2日以降に生まれた人からは、振替加算はありません。
加給年金は、老齢厚生年金を受け取っていることが1つの要件なので、老齢厚生年金を繰り下げている場合にはもらえませんが、老齢基礎年金の繰り下げであれば、加給年金には影響しません。令和8年度の加給年金額は24万3800円ですが、1943年4月2日以後生まれの場合には特別加算を含む年間42万3700円がもらえます。夫婦の場合、自分の年金だけの繰り下げだけではなく、世帯単位で考える必要があります。
(4)元気なうちに年金を受け取れる
年金の繰り下げ受給を金額だけで考えると、思わぬ後悔をすることになります。平均寿命が長いため、自身の老後はいつまでも元気でいられると思いがちです。しかし、厚生労働省の2022年の調査によれば、日常生活を健康に問題なく送れる「健康寿命」は男性で72.57歳、女性で75.45歳です。70代の後半には男女とも自立した生活が送れない可能があります。長年、海外旅行に行きたいと考えているのなら、60代の元気なうちに実行に移しておくことも必要でしょう。人生を楽しむためには、年金額を多くすることだけではなく、年金を有効活用する発想も大切です。
(5)遺族厚生年金をもらう可能性を考える
年金は繰り下げ待機中に亡くなった場合はどうなるかも考慮に入れておきましょう。厚生年金保険に加入している、または加入していた人が亡くなったときに、亡くなった人に生活を支えてもらっていた場合、遺族が受け取れる遺族厚生年金があります。
遺族厚生年金は、亡くなった人の65歳時点の年金額が基準になります。繰り下げている分は遺族が多くもらえると勘違いしていると、実際に受け取るときに今後の生活に困ることになるかもしれません。年齢や健康状態にもよりますが、老齢厚生年金は繰り下げずに65歳からもらうという選択肢もあります。遺族年金を受け取る可能性が低い方が繰り下げるより、平均寿命が長い方や年金額が少ない方が繰り下げる方が、年金の増額分を受取りやすくなります。
年金を繰り上げていた人が年金を受給せずに亡くなった場合、遺族は未支給年金を請求できます。支給額は、65歳から亡くなった日が属する月までの年金で、遺族が請求できるのは5年前までの年金です。繰り下げていても、多くもらえることばかりではないことに留意しましょう。
年金は両方ともできるだけ遅くもらう繰り下げをした方が、年金の増加率が増えます。しかし、年金は最大限まで繰り下げればお得というわけではありません。自分にあった働き方と年金のもらい方を検討し、生活設計を組み立てていきましょう。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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